今日読み始めた日記は、
昨日あなたが書き残したもの。
今日書き残す日記は、
明日あなたが読み始めるもの。
明日、あなたがいなくなるとすれば
明後日、私がいなくなるっていうこと
そし ....
通り過ぎた列車の
なごりの風が、引き連れる
潮のにおい
線路沿いにこの道をまっすぐ行けば
ほら、海が近づいてくる
そう言ってふたり、短い影を
踏み合いながら走った日
無人 ....
わたしはまだ
運ばれてゆける
むずかしい物事を
ほかの名前で呼ぶよりも
ここが峠の途中なら、
そらにまぎれず
澄み渡りたい
あなたのそばには無い数を
おだやかに
....
てのひらに乗った 雪が
溶け出して、僕の
一部になってゆく
降り始めに気がついたのが
どちらだったか
もう忘れてしまった
雪は
これで最後かもしれない、と
最初に言ったのは君の ....
つないだ手を
そっ、と離して
春までの距離を
歩数で測っていた君は
三十一歩でくるり、と振り返って
僕に何かを伝えてきた
如月駅を走り出した始発列車が
僕を追い越して
君を ....
あなたはためすように
月を詠むのです
椿の花が落ちる夜に
闇から色を分かてるのか
ためすように
あなたは月を詠むのです
くれなゐは
いつぞの契り
くれなゐは
今わにみ ....
あなたとわたしは
たまに日常を共有する関係
そして言葉の世界で
たまに交わる関係
わたしのこころを
あなたが描くとき
あなたの横顔に
わたしを見つける
ただ ....
冬の陽ざしがうれしくて
君は僕に笑いかける
あたたかな冬の光がまぶしくて
君は泣き顔をして横を向く
風が山茶花の花をゆらして
通り過ぎていった
その花に触れるのはおよし
君はそこ ....
銀を光らせて
少年は輪をなげいれた
輪は的中した
{ルビ傍=かたわ}らに立つ年上の少年は
おだやかな黒い{ルビ眸=め}は
輪をとびこえて
はるかな向こうをみていた
そして
今初めて遇っ ....
高級なニシキヘビ を
自由自在に操る
あの男 は
決してあの人に
興味なんか持たない だろう
桜のベンチ
誰かを待っているの?
いいえ 彼は来ない
長い髪 を
花びらが飾る
青葉のベンチ
悲しい事があったの?
彼の為だけに泣くの
薬指 の
石に雫が落ちる
枯 ....
消毒液の匂い
一つ足りないブラウスの釦
秘密に出来るから と
泣いてみたのに
3時間目のチャイム
チョークで汚れたスーツの袖
何も無かったよう に
微笑まないで
....
ライターの炎
午後拾時の駐車場
アナタの腕
安定剤の匂いに似てる
ラヂオから流れるピアノ
薄暗いライト
午前零時のベッドルーム
『キミの乳房
睡眠薬の温度に似てる』
有線 ....
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