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「世界中が雨だね」って
きみが言うから
手相占いみたいに
てのひらを差し出して
白いサンダルを気にして
ひとつの傘でふたりで濡れながら
「世界中が雨だね」って
きみが言うから
....
傘をさす手を奪われるほど
僕は何かを持ちすぎてはいない
縦書きの雨
カーテンの雨
通話中を知らせる音の雨
改行の雨
鉄柵の雨
液晶に、雨
こんなにも雨にまみれた世界 ....
がんばり方がわからない君へ
もういいやって思っている君へ
こころがひび割れそうな君へ
エールを送ろう
空のグラデーションを眺めてみなって
木々の声に同調してみなって
とうめ ....
夏、それは
裏とおもてのある季節
裏道はどこへも
繋がってはいない
向日葵、それは
追いかけていた肩甲骨の高さで咲いて
自転車で踏んでしまった蝉の音で枯れた
波、それは
壊れた ....
私しか「アトリエ」と呼ばない場所で
あのひとは輪郭のまま西を向いている
むせ返るような夕陽の匂いのなか
パレットで乾いた水彩は、それきり
藍が好きだったと思う
雨が好きだった ....
遠浅の日々はいつの間にか息継ぎの仕方を忘れさせる。
駅まで、の最後の交差点に立つと
呼吸が止まるほどに夕焼けの匂いがした。
*
「雲は、本当は流れていないのです ....
■秋
すべての色を飲み込んで
ただ透明である、秋
■チャイム
夕陽が窓ガラスに映ったとき
風がいつも置き去りにするもの
■図書館
古びた新築の匂いがする
■デジャヴ
....
アスファルトの照り返しは穏やかではない
24号線沿いのひび割れた歩道を蹴って
いつまでも変わらない信号を見上げる
太陽がもうひとつ増えた気がした
雨と晴れの境目を見つけた少年時代の君を
....
夕月は君が
先に見つけた
でも
明日雪が降ることは
きっと教えてあげない
*
君のいちばんのねがいを
たぶん私は知っている
でも
君のいちばんの ....
あたしの
この強い想い
言葉にして君に投げても
言葉は君の
心をすりぬけるから
あたしの想いはいつまでたっても届かない
ああ、どうして
うわごとは君の心に染み ....
君のことを描くたびに
ひとつずつ言葉を失っていった
すっかり軽くなった水彩箱には
たったひとつの「ありがとう」が
隅にこびりついて震えている
―――ありがとう。
それだけで ....
ビルは氷柱(つらら)のようであって
交差点に、滴る微笑の鋭角が
夜はひときわ映える
空は無限の海にはあらず
月のマンホールに、僕らは吐き捨てる
ばらけた感情語
それを生 ....
ゆきすぎた夏のよこがおを
どうしても思い出せない
急行に揺られて
日よけを半分だけ降ろす
だれもいない改札で
追いかける風は
やさしいだれかと
海のにおいがして
すれ違う夏のよ ....
夏の夜の裂け目から
蝉の抜け殻は現れる
その内部には
恐ろしい秘密が詰まっている
それがこのもろい構造を支えているのだ
眼には真っ赤な悲しみを湛えて
どこまでも透明な孤独が
今夜天の川と ....
見えない子供の夢ばかり見る
うたと声を指さしている
かすかな鉄の飛び去る音
鐘に落ちる音 水に落ちる音
岩を擦る木
火ははじまりを燃し
ほどきほどかれ 姿むすぶ ....
もうだいぶ短くなった青鉛筆を
今日も必死に削っている
先を細く細く尖らせなければ
気がすまないんだ
そのくせ
極度の尖端恐怖症なものだから
どれほど尖っているのか
目で見て確かめることも ....
冷蔵庫の中に
一本だけしまってある、
完璧な缶ビール。
街に流し込まれた
ゼラチン状の夏が、
扉をくぐり抜け、
僕の型を取る……
....
草刈の
虫のざわめく農道に
白いシャツをはためかせる
たちこぎの少年
雷雨にぬれる
つかわれない傘を握り
たぶんすこしにやけていた
長い髪の少女
生ビールをゆっくり
味わうよ ....
いつも、つねに
私の体を流れる
“冷たい風”
どこから
吹いているかは、分かる
北 でもなく
ましてや 南でも ない
私の心の暗闇から、だった
二度と還りたくな ....
(1)
明日と言う日の訪れを恐れるときがある
気を紛らわすことさえままならず
早々に床についたとしても
考えるのは埒のあかないことばかりで
苦し紛れの寝返りを打てば
人の気も知らず目覚 ....
細長い一日の側面には
たくさんの出窓が一列に並んでいた
窓枠には下手な絵が嵌め込まれていたから
僕は脇目もふらず
いったりきたりするしかなかった
細長い一日の両端には
それぞれにひ ....
おれの妻には
感心する
女の共通なんだけど
純粋なんだね
演技なんて
全然ない
嫌いと好きが
はっきりして
俺のこともぼろくそに
言うが
時にはめっぽう
褒めてくれる
計算もな ....
生きるために
命をいただく とは
こういうことか
無心で
はらぼての小魚に食らいつく
わが子の風景を眺めながら
しみじみ 思った
ああ 悲しくも
プラスドライバーで マイナスネジは回らない
どんなに冷たくされたとしても
きっと何時かは回ってくれる
どんなに首をかしげていても
きっと笑って回ってくれる
....
尖ったように見える
そのてっぺんに登ってみよう
と思います
くだらない場所と言われてる
そこへ自分の目で確かめたくて
登ってみようと思います
....
切り刻んで袋に入れた新聞記事は
目を離したすきにもぞもぞ動きだしていた
記憶と考古学
預言者と未来
それぞれ近づいたところを
手のひらで思いきりたたきつぶして
遅ればせながら
宣 ....
すこしだけ怖いことを考えたくて
夢の中で君を消した
白い朝がやってきた
さよならが乾きたてのころ
・
・
・
机の上に散乱する単語帳
角が折れてめくれてゆく
覚えることと忘れないこ ....
例えば今
あなたが紐解いてゆくことによって
ここで、見えている言葉が
変わってゆく/色を増してゆく/難関になってゆく
不自然な衝動に
掻き消されてしまいそうになっているそれを
きっと守 ....
行き先も知らない船から
紙テープを投げて
わたしは今日、生まれよう
別れを告げるために投げるのではなく
離れるために切れるのでもない
風に大きなループを描き
旅立つために
....
* 1
愛無しには生きられない
わたしは本気でそう思っていた
* 2
あの水着もそうなんだけど
これもなんだよね
目新しさは常に外側からやってくる
そんな時代になった ....
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