布団がすきです
畳の上のひとがたになると
うすっぺらくなる
わたしがすきです
となりの布団が
ひとのかたちに寝息をたてるのを
みるのがすきです
畳の上の布団の上の
わたしはいつ ....
明日
仕事に行きたくない
仕事に行かないで一日中
布団の中にいて
呪いをかけていたい
呪いをめいっぱいかけていたい
体がやせ細って動けなくなっても
呪いを一日中かけていたい
お ....
夜 狂いのむごたらしい清潔さ
不眠はわたしの明晰を鍛える
すべての致命傷がやがて
朝焼けに染まるように
消毒する どうせ助からないのだから
深夜 信号の変わった道路を
ふたりで歩いて ....
1
外が言う聖域なき改革に
少し笑ってから
だれにも教えるつもりのない
ひとつのメールアドレスを
登録して機能させる
(そこはサイバーエリア)
(そこは賃貸住宅) ....
白旗を立てたのは
はじめてじゃあなかった
すべてを 無かったことにしたことは
はじめて じゃあ無い
終らせるつもりで立てたフラッグ
あの日 あの場所で憎い辛い人の傍に立てた
悔恨の ....
蛇口が
みずうみにつながっているように
蜜柑は
五月の空へつながっている
かぐわしい白い花
まぶしい光に
雨だれに
ゆっくりと過ぎてゆく雲に
蜜柑をむくと
その皮は
しっとりと ....
道路はよこたわっているのではない
限りなく渦を巻いては
自動車たちを加速させている
建築は直立しているのではない
限りなく燃え上がっては
過ぎる風を減速させている
世界の心臓は血液 ....
お誕生日はよく晴れた。いつものように洗濯機をまわして床をみがいたあと、夫がベビー・カーを押してくれたので公園まで娘と手をつないでいることができた。
午後は眼鏡を新調したあとでお鮨をたべにいった。安い ....
海の背中にゆらゆらと
揺られた事も
ありました
砂浜で
長い睫毛の瞬きに
よく似た波の
崩れ落ち
退き波を眺めて私
遠ざかる
....
たくさんのてのひらが、
胸のうちをなでてくる。
私はその愛撫のあたたかさに、
目がくらみ、
行くべき路を忘れてしまう。
たくさんのてが、
雨を耳にあびせた。
たくさんのてが、
子どもた ....
眠りはいずれ海に至る山奥の渓流
眠りが海に至る直前に人は目を覚ます
人は覚醒の光の中におぼれ
眠りは海の中に混じる
眠りは海の中で最も深い眠り
死の眠りとなる
人が眠りとともに ....
2月が終れば3月がくるということを、無論ずっと知ってはいたけれども、たいていこのくらいの時期になるときゅうに理解してしまう。毎年、性懲りもなくだ。2月と3月のあいだには、いくつもの恋が横たわってい ....
詩を書き始めたのは高校生の頃。
現代詩集という投稿サイトに狂ったように詩を書き続けた。
ドコモのimodeのせいで人生も狂った。
不満だけは人よりあった。未来はそれほどじゃなかった。
一攫 ....
春を探しに行けと命じて
一羽の文鳥を窓から離した
窓の外で冬は
ただ美しいというだけで凍えていた
季節に巡り会うことに馴れた土地では
ただ美しいというだけで
文鳥は春を見つけた ....
朝早起きして市場へ行きました
新鮮なお魚が食べたいと思ったので
貯金をくずして行きました
市場には死んだ顔した人でいっぱいでした
みんな死んだ顔で商品を漁っていました
仕入れの人は怒鳴っ ....
週末に作った
不味いカレーを食べる 私
トワイニングの 紅茶を 何杯も飲み
その香りの中で物思いをする
五反田に住んでいた頃からだった
何か作っていた レシピを検索しては
歯医者の検診 ....
気持ちのいいことぐらいしか
楽しくなれないさみしー夜
二人の誰かを見て楽しむ
なんか なんか
さみしくてしにそーだ
なんか なんか
さみしさに乗っ取られそーだ
誰かがやってき ....
生きながらにして
死んだようなおじいちゃんに
だけはなりたくない
ウルトラマンだって
帰ってくる必要があるってことは
そんだけ地球には
まだ、ややこしい問題が
沢山あるってことだから ....
やがて降る雨は
僕らを同じ軒下に
やがて吹く風は
僕らを同じ吹きだまりに
やがてくる夜は
僕らを同じ街灯の下に
誰もがなにごとか為そうと
足掻き今日も過ぎてゆく
とうに同じ空の下に
....
硬質な
紙片ではない
タクシー
そして
という語の
尻だけを追って
山猫
観葉植物としての
わたしは
遣られている水の ....
さて 生きようと思うのだ
遠く山並みは雪雲でかすみ
いま街は晴れている
人通りの少ない週末の朝
わたしは浅瀬の魚のよう
ぼんやりと光を纏い静止する
異国の歌が暫し寄り添い また
去 ....
俺の母ちゃん清原のファンやってん
それならショックやったんちゃうか
うん、でも離婚して20年ぐらい会ってへんからな
だいじなことが
くだらないことのように思えてくる
....
淵
ああ、遠いあの日のように烈しい夏がほしい。少くともあの日だけは夏だったのだ。雑草の生い茂っている崖っぷちの小道を、私は駈けていた。谷側の斜面には血のように赤い彼岸花が咲き、山側には雨のように ....
背に花の生えた猫が
午後の雨を待っている
二つに分かれた坂道の
曇に近い方を歩いてゆく
休み休み進むのは
花が重いからかもしれない
午後に夜にひとつ咲き
朝に昼に ....
さくさくと踏み抜く足跡が
ほとほと燃える命の 居場所を教えている
小さな命が 耐えているのは
山道のけわしさより 母の病
雪原に 山影から
眩しい日差しが 差し込んで
今日半日の ....
真っ赤な嘘っぱちを
誰も見抜いてくれなかった
橙色の夕日にとろけそうな
もはや追う者もいなくなった
逃亡者の長過ぎる影
気味の悪い戯言を並べた
ノートの頁は哀しく黄ばんで
....
今日は週一回の休日。家でまったりしながらこれを書いている。
今の職場には、Kさんという先輩がいる。
僕より二歳年上で、とても仕事ができる女性だ。
物流の現場では、日々クライアントからの ....
あなたの居ずらい世界
あなたの群れない世界
あなたの取れない世界
あなたの見れない世界
あなたの成れない世界
あなたの意味ない世界
あなたの要らない世界
あなたの言えない世界
あな ....
『少女』
今日でハタチになるのよ
少女は花を散らして
その1秒を不器用に演じた
『宇宙』
置き石をみっつさせて
盤に星を置いてゆく
計算は怠らず
擦り合わせてジゴに ....
ベジタリアンの夫は機械が刻んだ野菜を好まないのでわたしは毎日大量の野菜を刻む、薄切り、千切り、いちょう切り、短冊、ささがき、タワーマンションの最上階に住んでいながら、窓の外なんかほとんど見 ....
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