眠り
葉leaf




眠りはいずれ海に至る山奥の渓流
眠りが海に至る直前に人は目を覚ます
人は覚醒の光の中におぼれ
眠りは海の中に混じる
眠りは海の中で最も深い眠り
死の眠りとなる
人が眠りとともに海に混じり
死の眠りに到達できるのは生涯に一度だけ

夜になると眠っている人の数だけ
眠りの柱が空に向かって伸びあがる
人は横臥しても眠りは直立するのだ
眠りは木よりも高く伸び
希薄で冷たい風を浴び
人の眠りの内容を受信する
眠りの柱は避けたり倒れたり
そのたびに人は悪夢を見る

眠っているとき
人は眠りを飲み食いしている
透明な手と透明な歯茎で
透明な眠りを食べては飲み込んでいる
眠りは消化されて摂取されて
人間の成熟や退廃を促進する酵素になる
豪華な眠りは成熟の酵素で
貧相な眠りは退廃の酵素


自由詩 眠り Copyright 葉leaf 2016-02-22 06:40:05
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