一息ついた
まだ飯はこないので
目の前に置かれたメニューを見やり
何するわけでもなく
ぼんやり
時折、熱いお茶をすする
厨房の奥より
カラン
と音が響く
それもまた良し
....
夜、雨の音がする。窓の外を見ると街灯に照らされた雨粒が猫の毛を散らしたように落ちていく。黒い水たまりの上を鼠が走る。雨は止みそうもない。
文机に向かっていつものように創作に行き詰まっていると ....
何を指して倫ならずと呼ぶのやら 今はあなたの乳吸うばかり
ラブホ出て逆方向に去るふたり 振り向く男 振り向かぬ女
男などいらぬと笑うプリマドンナ 今日も酒場でディーヴァをくどく
飲み ....
気がつくと足元にりんごが転がっていた
ゆっくりと地面に沈みこむ自分を見ていた
自由にならない体で
涙だけが自分の肉体を離れていった
遠くからやってくる
7人の働き者の同居人たち
胸 ....
大車輪してもいいかな恋してる
季節の変わり目に
心だけ置いてきぼりにされた
そんな私のおなかは
春の夜風にさらされて
きりきりと痛む
手を当てると
こんなにも冷たい
夢の柱がぐらついて
今現実に引き戻された
....
曼荼羅が曼荼羅がとねだる小坊主にお仕置きをくれている電化ミシンの針先に、
舌を縫われた狸が一匹ちょこんと座っておりました。
狸は鮎を片手に得意げにかさぶたをかきむしっていたので、
ついに園丁に見 ....
炭鉱に潜り込んだハンチング帽がフライパンを平らげた夜
カタツムリが春を迎えて太陽とセックスを繰り返す
傘を持つ女は破魔矢だろう
そう見立てたソメイヨシノが牛のよだれに塗れている
悲しい夜だ
....
ナメクジにキラキラの道誘われて
雨の日は憂鬱。って言っていいよ
骨一つ拾われもせぬかくれんぼ
落とし穴せっかく掘ってまた君か
よそ行きの顔のチャックが開いてます ....
カチコチの雪見だいふくに寝そべれば月が星がと夜が袖引く
工場長 小さな頃に書いた夢「はあとのピノをいっぱいつくる」
「北極に帰りたいの?」と「しろくま」のフルーツに ....
いっそ窓を開けて、
ほったらかしにした方がいいのだ
窓の外には
トラックが作った轍が何本もあって
昼間、そこで
鳥が水浴びをしているのを
ぼくは見ている
ストーブにのせた
タライの熱気 ....
白い大きなシャツを着た
無邪気な少女が
駅前のロータリーに
集う鳩の中心で
詩の朗読をはじめた
僕も鳩に交じって
道路にダンボールを敷いて
排気ガスを吸いながら
彼女の言葉を聞いた ....
窓の外から
パトカーのサイレンの音が
聞こえる
僕は少し硬い
メロンパンを
かじりながら
洗面所の蛇口をひねると
先端からサイレンが
溢れだして来た
1秒と1秒の隙間に
入 ....
穴の夜に可憐な花を引きちぎる 心の底から憎まれたくて
『やさしさ』という字はとても丸いのでやわらかなものと誤解していた
ワンピースに西のワインがふりかかる とれない染みに焦がれど、 ....
呼び声が
何処からか聞こえるような
そんな日に立ち止まると いつも
湿った空気を感じるのは
何故だろう
どうでもいいことさえ
何かの力を帯びていて
私は今日も
精 ....
夜の街を自転車で疾走する。
有り余った体力と
塞き余った気持を抱えて
私はひたすら疾走する。
消えかかった住宅街の街頭も、
パチンコ店のケバいネオンも、
コンビニの普遍的な明かりも ....
批評祭から遠くはなれてみる。
アフリカじゃ紛争が終わりそうもないし、パレスチナなんて終わりもまったくみえてこない。
一方で、キャンパスでメシ食ってのうのうとしてる奴だっているし…たぶん私だってそう ....
あの樹の陰に隠れているのはだれ
さびしそうに
じっとうずくまって
耳をふさぎ 目をふせて
なにを怖れているの だれが恐いの
だれひとりいない森のなか
こんなに静かで
鳥のねひとつ聴こ ....
ふわ ふわ ふわ
雪が舞う
雲をはなれた
雪の結晶は
空を巡り
思いきり手を伸ばして
触れた指と指をからませ
おおきなふわふわになる
牡丹の花のように
ふわ ふわ ふ ....
自転車のタイヤがパンクしたので
中からチューブを取り出したら
古い友人が出てきた
すっかり雰囲気が違って
歳をとったのか
顔にはたくさんのしわがあった
飴をくれる癖があったので
すぐ ....
{引用=
*註 久々の新作ですが、難解な漢字表現にこだわってみました。
よみは以下のようです。自鳴琴(オルゴール) 玻璃(はり)
坩堝(るつぼ) 変化(へ ....
プラットホーム
薄青く透けた空白へ
真っ直ぐに冴え立つ
色の無い脊椎の林の
プラットホーム
始まる
冬の朝の微細な輪郭線は
薄荷のことなど忘れた振りをしよ ....
{引用=
冷たく冴えた月光に
白く抑えつけられて
家並みは動かない
家並みの間を
老いた野良犬が
痩せた影を落とし
トコトコと 走る
( この ....
きたない手
にぎっていたよ
17歳
情緒に問題あり、と
言われた、三者面談で
帰り道、お母さんが
泣いていた、自転車の
荷台で、情緒の意味を
分かりかねていた
テンイヤーズオールド
西日のまぶしさだけ
息が詰まっ ....
気がついた時には箱の中にいた
体を小さく折りたたまれ身動きがとれない
ひざが箱にあたり
息苦しさは、箱のところどころにある小さな穴で和らいでいる
細い光がまだ生きていることを教えてくれる
お ....
不眠不休の、ガソリンスタンド。
給油口にホースを突っ込んだまま、
メーターの数字を眺めているなんて
痛々しいから止めろと、冬の、寒気の
吐く息の、明滅する飛行機の明かりはともかく、
自動販売 ....
砂漠の真ん中
君の顔だ
顔だ
君の
顔の君だ
雨雲の隅を
君はかじる
かじる
君は
かじる君は
花が咲いた
砂漠の真ん中
鼻に咲いた
君の顔が
死にそうなぐらい ....
君が僕の詩を待っている頃
僕は君の声を待っている
賑わう街では肩を擦らせながら
人々が振り返らずに先を急ぎ
増殖した三角ポールは
国道の硬いアスファルトを齧っている
橋を渡れば ....
1、私
道路のわきに沿っている
白いはしごがひどくゆがんで見える
テールライトが砕け散ってしまっていて
私はここにいない
頭の中でゲシュタルトが崩壊していくように、
二足歩行の ....
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