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思い出は
あの貝殻の中に
封じておきました


想い出は
あの海の下に
沈めておきました


車窓から覗いた景色は
にじむようにゆれていた
溶けて無くなるんだ
バターみたいだ
僕の理性なんて
所詮ただのコルク

そんなのもう
哀れでしかないね
少し揺さ振りかけられただけで
もう圧力に負けてしまう
吹っ飛んでさよなら

 ....
洗面台に両手をついて
鏡面にうつる
わたし自身の姿に
すまし顔のわたしを脱ぎ捨て
背後から
すべてを包んでくれる
あなたの胸元にすがりついてしまう
ひとは誰もそうするように
突きつけら ....
白いドレスが綺麗でしょう
淡い世界に霞まない様に
紫陽花色の傘を咲かせて
君が笑うものですから

僕は蝸牛の様に煮え切らない速さで
ゆっくりと世界の湿度の中に溶け込んで
綺麗だなぁなどと ....
出会わなかったのか
出会えなかったのか
出会わない君と
出会えない僕が
すれ違っていく世界

僕等は見知らぬ他人で

僕等の出会わない話で

僕等の出会えない世界で

僕等は恋 ....
一日は二十四時間だと思いこんでいて

一年は三百六十五日だと思い込んでいて

一時間は六十分だとばかり思い込んでいた


ほんとうは

一日は一日で

一年は一年で

 ....
今年も古い母屋の軒先に
つがいの燕が巣作りしました
生まれたての可愛い雛たちは
親鳥の帰りをひたすら待っていて
精一杯の幼い首を伸ばして
甘えたような鳴き声あげている
(なんだか可愛いな
 ....
少しずつ世界はずれていたんだ
  今まで気が付かなかったよ。

今日の明け方に外にでて初めて気が付いた
  世界は少し右に傾いていた。

みんな普通に歩いてるけど知ってるのかな
  世界 ....
寝息をたてる合間にも
世界に溢れるレッドサイレン
今日も誰かが死んでいく

通勤ルートの途中でさえも
交番の死亡事故数は死を感じさせている

日常に溢れる死の気配
瞬く間に命を奪われる ....
酸化鉄の黒で
綺麗に染まっている部屋の片隅
赤黒い肉塊を抱いて
愛していると一人呟いた

僕の人差し指をそっと
温もりの失われた君の唇に触れて
君の人差し指をそっと
僕の唇にあててサイ ....
あなたの

うた



好きです

少しだけ

悲しくて

でも

どこか

強くて

消えてしまった

あなたの

こえ

機械からしか

聞こ ....
夜は綻び
朝が死角からやって来る


陽射しが強くなれば
それだけ濃い影は出来て
ありふれた若さのなかに取り残したわたしと
残り時間を失ってゆくわたしが
背中合わせする毎日に
日 ....
わたしとしては早く終わって欲しいのに
あなたはまるで厳粛な儀式に望む
いんちきくさい司祭のような面持ちで
わたしのかたちを確めてみたり
わたしの知らないかたちで動こうとする
ふだんと違う表情 ....
都会の川で子供の変死体が発見された

それと同時刻に、屠殺場で豚が悲鳴をあげた
恐怖は肉に染み渡っていった
鶏舎で一列に並べられ管理されている鶏たちは
産み落とす卵の中に自分達の気持ちを込め ....
読み違えた時刻表と
溶けるような蒼さ

誰にも触れられないまま
街を逃げる
此処は誰にとっても何処でもない



気が付けば
喋らない受話器を静かに置いていた
ミシンで縫い付けた ....
逃げる羊を追いかける。
嫌がる羊を追い詰める。
怖がる羊をあざ笑う。

とても とても 弱い羊は逃げ出した。
抑圧されて逃げ出した。

逃げて 逃げて 逃げて
思い切り逃げたのだけど
 ....
悲惨なニュース
雨が止まぬ
今夜もきっと
分かりあえない

夜雨の中で
殺された手の
ぬくもりだけが
街にヤサシイ

欲しくない靴、どれも汚い
笑えてるけど、なぜ不満足
十字路 ....
1、

ある朝起きたら母さんが
顔を剥がしていた。

止めようとしたけど怖かったから、柱の陰に隠れて見てた。

あちこち痒かったから(かいたら芽が出るわけだけれども)「痒い」に集中してお ....
心に空いた穴を埋める様な長い雨
哀しみの様に地に響く{ルビ鎮魂歌=レクイエム}

出勤に向かう車達の排気ガスの匂い
錆びの匂いに似て懐かしさを思い出させる

子供の頃に秘密基地として遊んだ ....
君は甘いお酒が好きで甘いタバコが好きでやっぱり僕のキスが一番好きで

意味のない行為 一人きりの部屋で膝抱えて座る

君の小指の爪を噛む癖 続いて噛み切ってから少し顔をしかめる癖

ロ ....
誰かを思う、優しい手つき。
頭を撫ぜる。
互いを繋ぐ。
頬に添う。
滲むいとしさに胸を打たれ、
降り注ぐ想いのシャワーを仰ぎながら
昼しずりのそんな日に、
「ああ、あたたかい」
そ ....
にわか雨は窓ガラスを叩く激しさで
海辺の汐臭さをわたしの部屋まで連れて来た
波音のひたひた寄せるテーブルで
いつか拾った貝殻の擦れる音色がする
ハンガーにかけたわたしの白いブラウス
温もりの ....
すきってきもちだけでねむれたらどんなにいいことだろう 君が たゆたう衝動の 可燃性の衝動ならば
私がマッチを投げ入れてやろう
私の くすぶる衝動に 燃え尽きかねる衝動に
ロシアのウォッカを注いでくれよ
   
{引用=  あのひとの記憶がしずむ海は、いつしか防砂林で見えなくなった
  越えられない高さに、すこし安心した}   





砂が、降って
深く深く沈んで 底まで
皮膚 ....
深き森に眠る姫は

子どもの頃の夢を見る

夢に堕ちたアリスは

眠る姫にほんのりと頬を寄せ

狼を犯した赤ずきんが

ゆっくり、ゆっくりと

月を仰ぐ


満月が見た夢 ....
窓辺に鳥籠
君に届け
手を伸ばす
モノクロの空

いつか
僕は
事故で
死ぬだろう
そう
遺言
しておこう
いつか
君が
流すであろう
涙を
今のうちに
見ておきたか ....
「この花きれいだね」


あなたは美しさの形を指先でなぞると
風の誘うままに微笑み


未だ慣れぬ白い感触を確かめながら
おぼつかない足取りで
わたしの半歩先をゆっくりと歩む

 ....
生きてさえあれば
悲しむことだってできる
君の涙をそっと弾いて
星にだってしてあげられる

生きてさえあれば
将来だって泣けるんだ
それがどんなに悲しむべきことでも
消えてなくなること ....
私は今日始めて子供を生みました
長い長い道のりで初めてでした
想像以上に重く
想像以上に暖かいものでした

私は今日二回目の子供を生みました
とてもとても短い道のりでした
想像以上に軽く ....
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