すべてのおすすめ
もしも私に星の欠片をくれるなら
ピチピチ パチパチ
美味しいソーダ水を差し上げましょう
もしも私に紅い花束をくれるなら
シャラリ サンサン
揺れる{ルビ簪=かんざし}を差し上げましょう ....
私という存在は
銀河の端に灯る刹那の光なのです
それ以上でもなく
それ以下でもない
巡る季節に酔いながら
下手な歌をうたいます
誰かに届くように
誰かに問い続けるように
私 ....
風に吹かれて
彷徨う路は
振り返ると既に消えている
星々を眺めていても
狂った軌道を示しているだけで
お似合いの月と鏡はひそかに話し
ぼくを騙そうとしていた
時計の針は止まり
星の降る ....
暗い夜の森の中
オレンジ色の光が窓から漏れている
そこはカフェだった
老女が注文を取りにくると
ぼくは珈琲とザッハトルテを頼んだ
しばらくすると老女はウイスキーのロックを持って来た
....
樹齢300年を超える美しい欅の一枚板を手に入れた
奥行70cm 幅120cm 暑さ3cmの文机にしようと決めた
木工職人に仕立てて貰い
砥の粉を塗り込め1000番のサンドペーパーで磨き
....
今朝はメジロの歌声で起こされた
そのソプラノが心地良かった
たぶん桜の蜜を啜っているのだろう
ぼくは苦い珈琲が好きだから
きみとは仲良くできないかもしれないけれど
明日の朝も
その歌声 ....
きみがいない間
ぼくは代わりに
盆栽の水遣りをした
欅の古木に
きみは延寿という名を付け
大切に育てていた
細かな若葉を季節通りに芽吹かせ
今年も元気だよと
ぼくに告げた
....
きみの純潔は
透明な水晶のようで
とても傷つきやすかった
ぼくという毒薬を飲み込んでは
嘔吐を繰り返し
それでもぼくに優しさをくれた
十五年という歳月は白色矮星よりも重い
風 ....
季節変わりの花が
ぼくたちを祝福してくれた
ふたり手をつなぎ
ふたたびこの路を
歩きたい
子供のように石を蹴り
風に吹かれて
夢を話していたい
花びらは散っても
怖い ....
醤油の{ルビ醪=もろみ}が香る港街
岸壁の夜に出没する屋台の中華そば
秘密のスープを覗き込むと
豚骨、丸鶏、ソウダ節、かつお節、
煮干し、長ねぎ、玉ねぎ、昆布、干しシイタケ
出汁 ....
今年彼女は桜をみることはない
大学病院のICUに閉じ込められ
チューブや配線にグルグルと巻かれ
モニターの画面に規則正しい波形が映る
何が悪かったのか誰にもわからない
本当のことは
....
彼女は桜の咲く夜に死を選んだ
とっておきのワンピースを着て
美しくあの世に逝こうと願った
200錠の薬を琥珀色とともに
サイレンが鳴り{ルビ生命=いのち}は留まった
空が紅く暗かった
ヤマタノオロチが来るというので
みんな防空壕の中で息をひそめた
ぼくは写真を撮りたいと思ったので
カメラをぶら下げて
街に出かけた
ヤマタノオロチはキングギドラだった
....
磯野波平に良く似た教授は
ステテコにラクダの腹巻姿
団扇をパタパタと仰いで
トリスタンの加速器に行ってみるかい?
はい 是非とも!
では
このカウンターを胸に付けて放射能を測定 ....
わかりたくて
わからなくて
ふたりうつむいた
残像は静止したまま
スイッチを手探る
さくら咲く公園で
泣いたきみ
だきしめ
だきしめられた
黒曜の夜
ひたすらに
....
師匠が言ったことを思い出す
若いということはバカなこと だと…
何故ぼくはこの歳になってもバカなのか
大切な珠玉をアスファルトに叩きつけ
深い傷を負わせた
それは自分を傷 ....
ずぶ濡れの子猫が鳴いていた
寒さで震えている
ニャァ… とか細く鳴いたので
ぼくは自宅へ連れて帰った
タオルで拭いても鳴いている
ミルクを与えても口にせず
ぼくはどうしたら良いのか
解ら ....
ぼくは道化師
老いたピエロ
観客を笑わせては
ご機嫌をとっている
化粧に隠した顔は誰にも見せない
眼尻に描いた紅い涙は乾いている
手品を見せてはため息を吐かせ
夜毎繰り返す芸 ....
死ぬまできみのこと
離さないと言ったのに
深く眠るきみに置手紙もせず
部屋の扉を開けてしまった
あれからどれくらい経ったのだろう
きみだけの夢を見るようになった
もう帰るに 帰 ....
黒曜の夜は
月灯りに照らされて
舞い落ちる 舞い落ちる
桜の花を待っていた
きみと手をつなぎ
花びらに埋まろう
物語りを聞かせてあげるから
花の{ルビ褥=しとね}に抱かれながら
....
ぼくはインドの山を登っていた
岩に座る行者がいたので聞いてみた
この岩にどれほど座っているのですか
久遠と言えば久遠から
刹那と言えば刹那から此処に座しておる
久遠と刹那は同じこ ....
月の鏡は夜空を隠し
星々が眠りに就くから
夜の散歩もゆるしてくれる
湖に映る光は月と仲良しだから
微かな風が春の{ルビ詩=うた}を歌い
ささやかな祝福を奏でてくれる
きみとの約束は ....
澄み渡る群青と
オレンジ色のグラデーションが美しい
今日は何か良いことがありそうで
酔い覚めに香り立つ珈琲を飲みながら
バッハのゴールドベルクを聴いている
グールドの技巧が心地良 ....
青すぎた空に
愛と憎悪の螺旋が渦を巻いていた
透明な視力には
それが耐えられなくて
ウオッカをあおっては
炎が喉を通り過ぎていく
遠い記憶の底をたどるけれど
深海に潜ることも ....
言葉が届かない
グラスを傾け
紫煙に漂いながら
伝わらない伝言を待つ
その裏側は解っている
昔言えなかったことが
今は言えるよ
あの頃のぼくは
たくさん求め過ぎて
きみの優しさがわからなかった
世間の噂では
きみは独りで鍵盤を弾いているらしい
あの日は雷雨が激しくて ....
狂った時計を森の奥深く
猫の眼時計店に持って行った
ギィーと扉を開けた
こんにちは… 時計を直して欲しいのですが
店主は黙って文字盤を確かめた
これは狂ってはいないよ
ほら 見 ....
暗い朝に
経を読み
香を焚き
粥を啜り
写経する
日々の修行を守り
仏に祈る姿が美しい
自ら幽閉した世界が心地よかった
ある日の雑踏に赴き
托鉢に出かけた昼下がり
涼し ....
花よ咲け
満月の夜に
いさぎよく
花びらを降らせよ
旅ゆく人の{ルビ褥=しとね}になれ
初出 日本WEB詩人会 2024/0 ....
冴えわたる月の光をうけて
抱かれた夜の夢をさぐる
朝日に照らされたベッドに
あなたの影はすでになく
夢はいにしえの物語となってしまった
あなたはまた何時か来ると信じても
私の胸は不 ....
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