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どす黒く
ゆり返しながら
波よ
おまえの大きな いざない
貞操のない女の
ほんのちょっぴりした悔いの
ほろ苦さ
海は いつでも生暖かい
妙にがっちりして
....
目が覚めて
空は明かるく剥け、
やすらかな寝息と疲労のあいだにあるわたしの身体
こまごました呪いとひきかえに
潤みつづける女という生活をして
すこしだけ自由で
底抜けに淋しい
....
ガラスを溶かし流し込んだら色付けして。散りばめられた色を際立たせるように空に返した。空が呼吸するたびにきらめくのは、夜明かりだからかもしれない。太陽と呼ばれる、一閃はまだまだ訪れない。際立たせる鏡であ ....
微睡みの
覚醒に
底割れ
沸き出すモノ
輝く尖塔を壊し
疾駆する力線
煌めく城壁を巡り
垂直に堕ちる力線
開いた瞳から触手伸び
掴み取る、受動から能動へ
掴み取り現れる無数の形 ....
水浸しの草原に黒い鳥たちがいる
どこまでも濡れた大地に星が映っていた
シマウマに乗って宇宙へ行く
果てしなく遠い、天地の境を行けば
そこに揺らめく虚空の入口がある
朝が来れば揺らめきは消えて ....
新しい病院へ向かう車の後部座席で寝転がっ
て、窓の向こうを見ていた。お泊りはもうい
やなんだけど、もう、指を銜えるほどちっち
ゃい子供でもない。やがてドアが開き、傘を
さしながら「ゴメン」と言 ....
神輿に乗って振う腕が
風を起こすみたいな動き
どなり声が盛り立てとなって
かがり火の弾けた火の粉が飛ぶし
煽る煽る子供が離した風船はとんでいく
どんどん太鼓がなんの為か鳴ってて
人の踏み荒 ....
ふくふくとした その胸に
暖かな平和が宿っているのだ
一九四九年に制作されたリトグラフ
パブロ・ピカソの『鳩』
その はとは
羽ばたこうともせず
目を優しく閉じ ....
犬が吠えている
熱する陽射し
隊列を組む蟻たち
汗がしたたる
動かない空気
ぼうと
天を仰ぎ見る
眩めく視界に
時の凝縮する
瞬間に、
明るみ開ける意識
鮮やか青空広がり ....
思い切り
夏をイメージしながら
独り手持ち花火
不意に花火がしたい
そう思い立ち買いに行った
十一月の花火
寒さは当然だけど
とても綺麗に見えた
悩みなどは遠ざけて
手持 ....
野の花の 優しさが
あなた
一ふりかえり見る
広漠とした 高原の葉ずれの音に
それは
しみこみ 又はねかえり
幻影の様だった 稚い愛
北方に 連なる山はだが ....
蝉の殻いましたたる
日付変更点がここだとしたら
日曜日というやつは
木の幹に刻まれるより
撤去された砂場に埋もれたままどこへ行った
真ん中のあなぼこ
その、まわりばかりを見ている
掘 ....
ひとつ物音が消えてなくなれば、かき消され
ていた音が聞こえてきます。テレビを消して
みましょうか。ちょうど今頃は庭先から、み
なさんがよく知ってるものや、そうではない
虫の音も聞こえてきます。 ....
雪が舞っている
街の電飾に輝き
通りの向こうから
駆けて来る、
子供 肉身を躍らせ
向かいのコンビニ前で手を振る
老婆のシワ萎びた顔が切なくて
手のひらに収めた
雪を投げ ....
白い、
そして少し青みがかった雪に身を投ずれば、
はるか昔の少年がいる
そういえば私は昔、少年だった。
と言葉を発する
誰にでもない、
おびただしく佇んだ雪達に向かって
私は ....
草が草の記憶を語りだすと
風の結晶はふと風に溶けていく
掌で温めていた卵が消えてしまった時
わたしは初めて言葉を知った
その日の夕方
新しいベッドを買ってもらった
感謝の気持ちを伝 ....
昼間は 陽射しにためらって
雑木林の奥に潜んでいる
秋が
しのび足で
次第に満ちて来る夜
軒ばの低い 村の細道
懐中電灯をてらして歩くと
いやに星がきれい
....
宇宙のどこかで超新星が爆発している頃
ぼくは縁側で爪を切っている
我々という混沌を気にもせず
おはようございますと近所を装う
猫が欲しい 人も欲しい お金も欲しい
そろそろ寝ますか
それと ....
ちいさくて固い 心臓が
そっと弛まるように
白い雲は
もう 空の高さを競わなくなった
風が足跡をうずめるように
虫達も その聲を次第に顰ませて
次つぎと落ちて プリズムの ....
返還された軍用施設跡を覗きに
まだ子供だった僕らはフェンスを越えた
建物はまだ残されていて
バーらしき場所には
ボトルが転がっていた
中途半端に積まれたパレットに腰掛 ....
ダイヤモンドの針をそっと置く
行っておいで
想い出は遠くなるばかりで
美化されたがっているのはなぜだろうか
この溝は
なぞられれば現れる道だ
ふたたび
さみしさの琴線に音を咲かせ ....
指先を太陽に翳して
陽の光の中を着物の着崩れを直しながら歩く
隣町まで足を棒にして歩いてみたら
少しはこの気持ちが楽になるだろうか
茶色い茅葺き屋根の家を過ぎて
長屋を横目に見て
空き ....
蛍の明滅だけが知っている
かすかなぬくもり
かすかなのこりもの
まるで映写機のように
今だけはおもいださせてそっと瞳をとじて
舌の肥えた過去が焼け落ちた瞬きを拾い上げ
同じ口を借りるまで、垢を吹き混ませて
足を酌み交わしてつないだ中心から
私は死にゆくのかと思いながら
(飢 ....
私という孤独が
厳しく露わになる
この瞬間、
青銅の窪みに穴穿たれ
濃密に暗まる空の青み
昼の意識に広がり
抉るように流れ落ちる
ぽっかり深淵が口を開く、
ぽっかり深淵 ....
澄んだ山の彼方に
何がある と
希望して良かったのは
遠い年代だけの事だったのか
暗い中をぬけていくと
ふいに光の中に出て
あたりは竹、の林
散りしいた藁に埋もれて
....
ふらふっと
溢れ流れ出て
浮遊から跳躍へ
飛び立つクラゲ
穏やかな飛翔にて
濃密に暗まる
空の青みに
明るむ灯を点し
羽ばたく花と為り
咲き開き咲き誇る
*
....
見回せば片付けられた木立ちにまた
影がぼやけている遊戯は弾力を持ってあると
足も
遠のく
意識が
視線に
絡まる
幻想運動
市街地に押し寄せる コスモスを裏返して
慌てふ ....
女が 路地裏に居るのを見た
雨が 降るのを見た
ライトがいくつか点いて
薄暗さの充ちてくる
音の ころがる時
夜の始まるのを見た
おかもち提げた女子 ....
十九
土間のかおりが濃い風の中で
今もまだ鏡を磨くその人は
母方の大叔父だった
茶摘みが好きな
ハモニカの上手が
無口な夏の
終わらぬ波の狭間へ
時の流 ....
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