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汚れた指で、
鳥を折って飛ばしていました。

虚ろな指輪を覗き込むと、
切り口は鮮やか、琺瑯質の真っ白な雲が
撓みたわみながら流れてゆきました。

飛ばした鳥を拾っては棄て、拾っては棄て ....
夕べサマルカンドといえば聞こえもよく浮かんでくるのは撥弦に響く白い砂と一面の青さだろう

つい眼を奪われてしまいたくて昨日閉じたカーテンを少しだけ開けて眺めてしまう癖に

薄い夜の帳には光 ....
ハイビスカスの花開き
水の面掠め飛ぶ原色の鳥、
燃える太陽の瞬間に凍結され
大地を包み込む天空の濃密な青。


私の内にすべては込められ
私は想い出すことを意志する、


太古から ....
にゅうどうぐも、
せいいっぱいの、
わかさ、
おおきく、
りょううでをひろげて、
しろいけむりのように崩れながらも、
なお、
秋にぶりかえした、
みずいろの夏空を占拠する、
牧草地の ....
空のかなたで消し忘れたファンのように独楽がまわっている

地上から見れば小さな欠片のチカチカする煌めきでしかない

花嫁の消えたぬけがらの白い衣装が独楽の近くをたゆたって

さまよえるその ....
 アオギリの葉を鳴らして
 秋がゆく
 時雨ている空にさえ
 時折 輝いている空しい灰色の雲

 風、強かったショーウインドウの前に
 私を待っていた人
 月並みな愛の言葉
 優しげに ....
いないいない ばあ

いない いない
そこにはいないよ

いない いない
ここにもいません

私がいるのは太陽
いつもさんさんかがやいている

私がいるのは月
ひとりぼっちの ....
情報に味や匂いを感じさせる
わたしはわたしという一つの牢獄を手にとった
わがままな肢体を結んだり解いたり
憂鬱な楽園では狩るものもなく
自他の見分けのつかない愛の残滓が
ネズミの群れとなり這 ....
丸い朝が
四角いビルにやってきて
直角三角形の僕は
平行四辺形に駅で出会って
無数の三角錐をごみ箱に捨てた
朝からブラックホールだ
  *
なんだかんだと言って
あれやこれやと言い返さ ....
laughing moon


soft moon


crazy moon


candy moon


windy moon


talking moon


 ....
暗闇の中で働く
囁く
声と指は一定の距離が保たれている
そのために肉体がある
肉体のために空港がある
滑走路に置かれたピアノは
調律が三時の方向にずれたまま
夜明けの離陸を待っている ....
いなくなった人へは
何も書けないから

妻へ

前略

草々

としたため
渡した手紙は
洗濯されて
入道雲の下に干してあった
立ち上がる
背伸びをした
その、もっと上に ....
 角の本屋さんの奥で万年筆を売っている
 仕事帰りの女がそっとのぞきこんだ
 くもりひとつない飾り棚は
 そんな町が好きだった

 ゆっくりと溶け始めるアスファルトが
 蟻や落ち葉を運んで ....
あやとりのはじめ。そらへとんでいくともしび。たいようのまわりに。さいているわが。まじわるときは、いっしゅんのまたたき。 ひとすじのつむじかぜが
ひとりの短距離走ランナーとなる


そのように秋が
いちまいの枯れかけの葉となって
もうコーナーを曲がってゆく


いつのまにか 私が秋である秋、
みうしなう凋落された子 戻り鮭見ゆと
漲(みなぎ)り撓(しな)う 我ならなくに


遠き昔の記憶たち 過ぎ去りし光の中
心の中に佇む 言葉なき思いを        Inkweaver
   こえは たましい

  漂っ ている

      こえは

     森の

   乾けない

   空

 ひきずられる 影


    あ 

      ....
(曙)

 薄暗い部屋の中、光のはしごがすうっとか
けられ、それは、雨戸の隙間から漏れてい
て。僕はふとんから起き出て手を翳した。掴
むことはできない。ああ、それでも、光に触
れることがで ....
絶望をカバンに詰めて
眠れない夜を過ごした

前の日も雨
天気は荒れ模様
回復見込みはしばらくない

午前9時
空港の掲示板に
遅延情報が流れる

ネパールに行ったら
寺院を観 ....
向こうがわによく似合う
それは
眠るまで明日を意識させ
沈んでゆく

畦道
そこここからする鳴き声について話そうと
すっぽりと抜けた数日前の言い訳に
突き動かされ明日を生きる

今 ....
急流に傾く一途に揺れる岩 頷き
少年は片足を乗せ真っ直ぐな視線に耐えていた。
重層な雲に覆われた街の歴史的建造物
白蕗の羽織で啜る軒先茶屋の框
  まるで、ピラミッドから眺めているような視 ....
あらいぐまは
ひとりぼっちで北をめざしていました

背中のリュックサックには
リンゴがふたつと
はんぶん食べかけのバナナ
角砂糖が三個

角砂糖は四個ありましたが
波打ち際で洗ったら ....
成就したこの純白、
因果思考の平面航路
切り裂く垂直の力動

響きの思考の感触、

色彩のグラデーション
非論理的にして立体、
平面の静止状態打ち破り

ゆっくりうねり泡立ち
無 ....
烙印が穿たれたあとの血肉は消炭のように砕けた
枯れた谷底の川底を舐めながら、ひととき
黄色く発光する月を見上げて
撃ち落としたいと望んだ
薄い靴底は尖った岩を踏む度にそのかたちを伝え
いちい ....
わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである。
(ルカによる福音書五・三二)



目がさめると、アトリエの前に立っていた。

──子よ。    ....
月の工場で生産された蝸牛が
地表に降り積もっている

渡り鳥の真似が得意なのに
飛ぶことができないわたしを
鳥たちは連れて行ってはくれない

夜明けとともに
蝸牛は溶けてしまう ....
私はもう、何も要らない。
ウォークマンに、遠い、遠い空を入れて、
病院の屋上でギターを弾いていたい。
空の白い魚を釣るように、
電線に永遠を見るように、
ただ嘘に塗れたこの世界で、
与えら ....
 日陰にもならない
 落陽高木の側、
 石のベンチに腰掛けて居ると

 その 百日紅のピンクは
 枝先に密生して咲き
 暑さに負けることなく僅かの風も 
 逃さない

 少し離れた所 ....
               ―ハーバート・ウエストに―

いまでは はっきりと 聞こえる 書物の なかの 足音を
それは まさしく 死の 忍び足 
音なく しかし だからこそ 歴然と
ペー ....
 触れたくなるのは ゆき
 話したくなるのは・・・

 どちらもとても
 きみには届かない

 そんな風に伝えるとあなたはいつもの唇で
 湿らせた車輪をくるり転がして
 そっと忍びよる ....
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