しじみに砂を吐かせた。
僕もそろそろ白状しないといけない。
心の湖に硝子瓶が一つ沈んでる。
もし本当にそうなら、なぜだか僕は幸せだ。
夜はクジラのお腹の中だ。
静かな夜ほど、多分そうなのだ。
 季節はたそがれ、満ちてゆく。
 幸福と不幸の狭間に立って漏らすため息。
 願い事を信じる力はあるか。
 心は風に舞い、静かに溶けてゆく。

 古時計のぜんまいを巻いてみるが、過去に戻る ....
寄せては返す波に
少しずつ後ずさりする

わたしたちは些細な願望や欲望を叶えて
どうにか生きながらえているね、平成

何か言い訳をしたくて仕方ないだけなら、
たとえば、あの鐘を撞いてみれ ....
内にある暴力的なものに屈して
もう自分の味方ではいられなくなって
人生を投げようと
ただ思っただけであった
自分には甘い
気休めの漢方薬とインターネット
腑抜けた鏡像
怒りの拳を振り上げ ....
「黄色い傘」

きいろい傘が咲いていて
わたしのうえに 屋根になっている

かさついた
この指は
皿を洗い刺繍をし文字を打ち

自由になりたくて
書いていたはずの文字に
とらわれ ....
人と話すことを覚えた

寄り道を覚えた

変わることを覚えた
曇った空を見上げてはなんと代わり映えがない毎日だと
タメ息吐いて愚痴吐いて

通勤のバスではまるで束の間の夢を見るように下向いて
会社に着き隣に座る同僚に掛ける言葉は挨拶のみ
その後も一言も ....
話す言葉は尽きて
自棄になって木曜日
雨戸を開けて
電気ケトルで温めた ぼくは
インスタントコーヒーを淹れて
砂糖と牛乳を足して飲む
少しずつ不安が焦燥になって
ぼくの中の胃を揺する
 ....
蒲公英の繊毛には色がある
白色は視覚化されるが
赤、青、紫、橙は花の妖精しか見ることができない
その色によって着地点は既に決められている

人間の心も同様である
人間の妖精は太古に滅んだ
 ....
数をかぞえて川まで来たよ
回転木馬は考える
きみはガリガリ苦しくて
きっと神さま軽蔑だ


かんざし付けた観光ガール
カード片手にガイドする
こちらにござるは金華山
来る日も来る日も ....
*エロス

熱い唇が夜に溶ける
重ねた皮膚は
殻のないぬめやかな二枚貝

弄ばれた魂が
半周遅れの月影に
しろい波濤を刻んでいる

脱ぎ捨てられた衣に
まだ残る体温が
生温い喘 ....
すべて諦めかけたときに
コンビニに行って弁当買うてあたためた
何も変わらないいつもの弁当
俺の一所懸命にあたためつづけたもの
それと弁当
くれるレシートと夕陽
そして弁当
 ....
【人間になれなかった】
人間になれなかった
野原をひたすらつんのめり
海原を懸命に切り裂いた
だが
人間になれなかった
人間はずっと向こうにある
どこを走ったのか
どこを泳いだのか
 ....
‪人たちを厭うばかりの昼頃に‬
‪俺の詩嚢に顔濯ぐほどの水もなく‬
‪愛に生きようと思ったが‬
‪邪魔するものが多すぎる‬
‪さらば死ぬかと訊かれれば‬
‪死ぬほどひどいこともなく‬
‪し ....
行き先のないお前の虚像
とどまることを知らない水
不器用に溢れるのを忘れて
拒絶された命の河に埋もれる

沈んだ肌を撫で
冷たい手を取り出す
無数のお前が揺らめき
苦しみと愛しさを唱う ....
そして春が来て
今年も川辺の並木に
ホタルイカの花が咲いた
日中は褐色に湿り
夜になると仄かに光った

数日でホタルイカは散ってしまう
川に落ちたものは
海にたどり着き
地面 ....
氷の針が心臓に突き刺さって苦しいと思うとき 海から全ての海水が巻き上げられてぼくの口へ吸入器のように入れられるとき きっときみはひとつの歌を口ずさむ ひとつの祈りを口ずさむ、ひとつの海の駅名を口ずさむ .... 父の背中
53年の背中
もう隙間がないくらい

父の背中
背番号53の背中
数字がぎっしり埋まっている

その背中を擦ると
数字がぎしぎし唸り出す

私が石鹸で流せる ....
空が3つあればね
1つくらい駄目でも構わないけど

音楽室は雨のコーラス
トライアングルを鳴らすと
乳頭があまく痺れた

先生はしょうのうの臭いがした
深くおじぎをするとポケット越しの ....
最終連は
とうに終わっていても
締められた言葉は
いっこうに完結するようすもなくて
視線は
空を漂う余韻の行き先を
見つめている

その時
一羽の冬燕が目の前を横切るも
地面に落ち ....
水になってひそむ
死んだ者たちの{ルビ通=とお}ったこのほそい水系に
官能の色彩はすでにない
光りの粒子のように時は流れ
序章のように生誕の時は流れ
星が囲んだ戦場につめたい炎の舌がみえ ....
ここに一つのコップがある
いつからそこに在るのか、誰も知らない

最初は空っぽだったそれに
少しずつ、ほんとうに少しずつ
永い時間をかけて
結露した水が溜まり始める
そこへ
空間に漂う ....
君は笑っているのです
この世に何の跡形も無い
存在の事実さえ消え去ろうとしています

その君がここにいてくれる
きっと素晴らしいことに違いありません

君は笑っているのです
決して交わ ....
夜も更けて、マンションの落ち着いた寝室に、今日も暗闇が訪れた。
いつものように出窓のカーテンを閉めると、ベッドに安楽を求めていく。
私の意識は奥深く沈み込み、静寂が体を大きく包み込んだ。
何も感 ....
   
 生きたまま花の化石になりたい
 という少女がいて
 街は、霞のようにかすかに
 かそけく 輝いているのだった

 ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち
 少女は母似の瞼をとじた ....
燦 とひかりが降り
彼の中の森がめざめる
その肢体が
若枝であり
清流であり
薫風である彼の中の森が
その数多の瞳を
つぎつぎとひらいてゆく

きらめきをこぼしながら
鳥たちが飛び ....
早すぎた朝の向こうに夜があるように
遅すぎる夜の向こうに朝があるように
光に狂った雪街の景色を
僕たちはビルの屋上から見下ろしている
それは何の不幸でもなかったのに
苦い思い出としていつの間 ....
あたたかさもつめたさも失って星空が瞳を閉じる


流星になった君という言葉からはらはらと鱗粉が落ちる


太陽が瞬いて人知れず右手が夜を掴む


手紙が飛び交う、空みたいなイ ....
葉月 祐さんのおすすめリスト(175)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
しじみ- クーヘン自由詩9*19-8-15
硝子瓶- クーヘン自由詩8*19-8-13
- クーヘン自由詩3*19-8-5
- メープル ...自由詩10*18-12-29
はじまりの鐘- 青の群れ自由詩718-12-28
白い封筒にこれを書くのである- 奥畑 梨 ...自由詩718-12-12
ちいさなちいさなことばたち_二- 田中修子自由詩1518-11-12
新しい一日の始まりと終わりに- 千幸自由詩6*18-9-30
一日の始まりと一日の終わりに- 千幸自由詩418-3-21
誰もいない場所に投げられた人生を- 奥畑 梨 ...自由詩518-1-18
ふわりの旅路- 白島真自由詩17*17-11-11
きっとカジュアル- 白島真自由詩14*17-10-2
エロスと憧憬- 白島真自由詩10+*17-5-13
すべて諦めかけたときに弁当を- 奥畑 梨 ...自由詩6*17-5-10
青春の記憶(小詩集)- 宣井龍人自由詩14*17-5-4
チョコ食らい- 奥畑 梨 ...自由詩217-5-1
命の河- 宣井龍人自由詩6*17-4-15
そして春が来て- たもつ自由詩1117-4-14
塩の柱- 白島真自由詩31*17-3-20
父の背中(挨拶付)- 宣井龍人自由詩9*17-3-19
18回目の春- 印あかり自由詩21+*17-3-9
最終連から始まる詩片のような残音- 長崎哲也自由詩20*17-2-28
くにの記憶- 白島真自由詩27*17-2-26
コップ一杯の宇宙- 長崎哲也自由詩4*17-2-22
君は笑っているのです- 宣井龍人自由詩15*17-2-17
私の中に住む女- 宣井龍人自由詩7*17-2-12
花の化石- 白島真自由詩28*17-1-10
森のロンド- 塔野夏子自由詩7*17-1-7
楽園の春が萎れていく- 這 いず ...自由詩10*17-1-6
月には言葉がない- 水宮うみ短歌3*17-1-5

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