レントゲンに映る骨格の美しさ
CTスキャンの的確さ
MRIに描かれたデッサン
内視鏡のリアルな映画
どれもこれも
何とも言えず美しいのだ
ぼくが外見的に美しいとは言えないけれど
素粒 ....
ぽろり
ぽろぽろ
涙が流れます
お母さん
ぼくは動脈と静脈を断ち切ってしまったはずなのに
涙がぽろりと流れてしまうのです
100%など誰に出来るのでしょうか
それを押し付ける人がい ....
最近 どうしたわけか
卒寿となった おひとりさまに
わけもなく
にじみでてくる泪がある
それは・・・・・
....
ひとつの花びらが切る空を
どこまでも耳で追いかけて
胸の痛みに振りまわす腕
機械のように歩みゆく径
ひとさし指
夜を作る粒
夜を真似る窓
そこに無い窓
....
届かぬ手紙を携えたまま僕たちは彷徨する
どこかの洞窟の壁に刻み付けられた
忘れ去られた古代語の詩と
生きるということの目印をもとめて
新宿東口の地下街は果てしなく荒寥に染められて
彼方此 ....
月曜日
連なるうろこ雲
蟻から見れば雲突く大男が
注がれたばかりの朝を濁す
休日に書き残したカタコト
浴び続けた音の粉末を
明け方の夢の切れ切れと一緒くた
焼却炉みたいに燻らせながら
....
穏やかな風と光が
丘のひだにあふれて
卒寿の猫背を包みこむとき
おひとりさまのスライドには
しみじみとよみがぇってくる
はるかに過ぎ去った
白い季節の ....
隣近所の思いを気にしながら育てる桃
摘花はほどほどにして花を愛でてもらい
消毒は風のない朝ひっそりと行い
花が過ぎて
ようやく形のできてきた実を摘果する
このときワタシは
親から切り離 ....
炎が眠っている
その熱と光を休めながら
かつて燃えたことを証明する
灰が柔らかな布団になって
炎は夢を見ている
かつて照らし出した
闇の中に浮き立つ人の顔が
ばらばらになって融合 ....
夜空に咲く花は美しい音楽を奏でる。
恥ずかしがり屋の月が雲に隠れぬよう。
眠りを知らぬ私らは窓辺に佇み
チェンバロの響きに耳を澄ます。
慈悲深い月がいよいよその姿を雲にくらま ....
てのひらの紅い花
恋とともに散りました
頬をかすめた桜花
友とともに散りました
胸に抱いた白い花
母が亡くなり散りました
空を仰いで流れる
涙を
そっと指でなぞり
想 ....
そこは、どこへいっても、
同じ通りだった。
人の声や気配はするが、
誰もいない街だった。
けれどどことなく誰かの眼差しを感じた
誰かが見ている。
街が私を見ている。
この街全体が誰かのよ ....
斬り込みが淡すぎる声おなじ手が奏でるリフを傷つけて抱く
再会ではなく初めて会う気持ち いまの笑いといまの涙と
瓶詰めの思い器用にシェイクして差し出さなくていいグラスに注ぐ
....
まつ毛の長い君の
潤んだ瞳の先に小指をあてて
銀盤の満月に照らされたのは
何時の事だっただろう
しなやかなブロンドの髪に指を絡ませ
水晶のような
口づけを交わした
あの夜
夢の欠片 ....
孤独はいまも継続中だ
それが常態となってしまえば
たいした痛みも感じないものだ
ときおり非日常にきみがやってくる
それは僅かな恩寵でもあり
かすかな煩悶でもある
きみは花をアレンジ ....
温めないでください
ぼろが出てしまうんです
ぼろぼろになってしまうんです
不必要に熱くなって
不必要に口の中でちくちくと刺しまくるんです
冷たいままにしておいてください
それが
決し ....
黒い大蛇が棲むという石橋を渡れば
桜咲く岸辺に
そこには大衆食堂が在った
憶えているお品書は
カツ丼
カレーライス
精進揚げ定食に
銀だらの照焼くらいのものだ
砂利道を挟んで
タ ....
定期便さえない南の離島で
ひっそり平和に暮らす家族も
獣道のような細い山道の奥に
密かに暮らす人々も
二十一世紀は容赦なく襲いかかり
その存在を世界に知らせてしまう
ここに珍しい十八 ....
灰色の吐息がテーブルに満ちて
苦い珈琲が過去の想い出をたちのぼらせる
壊れた砂時計は絶えることなく
細かな砂を落とし
窓辺に佇んでいた
なかなか来ないオムライスを待ちながら
煙草を吸い ....
見慣れない鳥を見た
あとからそれがカササギだと知った
あたまの良い鳥だという
どうりであたまが大きかった
白と黒 翼の青
尾羽はすーっと長い
見栄えのする鳥だ
カササギは落ち着いていて
....
ターコイズブルーの湖、三つ
ねっとりと動かず
こんもり黒々とした山々の頂きに
ぽっかり ひっそり
横たわり広がり在る
(空は妙に白く透き通り
皮膜の裏光り)
湖は波 ....
昨日 私たちは
ぶ厚い夏の憂いの底で
椅子に座り 黙って紅茶をのんだ
西友で買ってきた安い{ルビ氷菓子=アイスクリーム}を
紙スプーンで交互に食べて
....
*
ファイブ・ペニーズ
ベンチ
耳を澄ましていた ただ耳を そっと
じっと 動かずに
夜更けの三時に誰かが夕食をたべるときも
そっと ただ
噴水の音だけを聴いていた。 ....
あるとき哀しみがやってきて
壁紙を引き剥がし読みかけの
テーブルの上の本を引き裂いてゆく
暗幕で覆われた部屋には夜しかない
そう曠野はいまこのこころに映る風景なのだ
それでも半額のシ ....
陽ざしが注いで
私の庭にも
優しい色の花が咲く
柔らかい雲が
少し動くと
空に向かって
胸を開いていた
白木蓮も
風に 花びらを
はらはら散らす
「星とたんぽぽ」
ねぇエトワール 見て御覧
中芯は 中空に在るよ
精一杯 背伸びする風の最果て
つかめぬものを つかもうする指先
いちめんに咲く たんぽほのロゼットが地面をつ ....
世界はさまざまなかってな基準に充たされていて
世界の涯からから零れ落ちるそれらの反響が
夜空に谺しているようなそんな夜だ
でも僕の基準をきみと決めたから宜しく頼むからね
それにしても僕 ....
ハラリ
腰までながい黒い頭髪
ぼくの初恋の少年の恥じらいを取り戻させるもの
――垣間見える
年上だったあの女(ひと)の面影
フワリ
仄かなリンスの香り
お澄ましのお姉さん ....
夏草のなかに咲く赤い花、
黄色い花、青い花、
目を細めたそれぞれの眼差しが、
地の上に咲き誇る。
花よ、あなたたちを写真に撮ると、
世界はなんて平らなのだろうか。
立体に馴れた私たちは、
....
束縛されない生なんて一時も無い
愛しきれたひとなんていなかった
孤独は平気だが
孤立しては生きてゆかれないから
哲学書を逆から読む
偏ったじぶんの人生観の途上で
ニーチェや仏陀 ....
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