ほどよく素っ気ない風が
袖をめくり上げたシャツを
透過していく
さらさらと粉っぽい光が
釣鐘堂の屋根を滑り
落下していく
手桶と柄杓と
線香と花と
いくばくかの懐かしさをぶ ....
こ、こいつ
どこにそんな力が…!?
(愛だよ、これが愛のちから…) ぐぐぐ
う、そ、だ、よっ!
めきょ
取っ組み合いになると
すぐに顔を下げるので
チャランポーをくらうの ....
ひょうひょうとして口笛を吹く君の
尖らせた唇の先で
さっき僕が吐いた息が震えている
頬を火照らせ走る君の流した汗は
やがて蒸発して
巡り巡って僕の汗へと
一億分の一で構わないから
....
眠れない夜に数えた星たちの引力を浴び空へ落ちゆく
かなしげに
ぬれていた
わすれじの
そのひとみ
おもかげも
そうげんの
いまはただ
かぜにまう
いちりんの
はなびらか
たたかいの
ちによりて
そまりたる
ふるさとの
....
傷つけまいと
気を遣うのに
言葉にすると
尖ってしまう
どうか
この心のままを
そのままの
あたたかさで
伝える術はないだろうか
僕の不自然な笑顔が
君の表情を見て
凍り ....
やわらかな鉛筆の芯で
ここにはいない君を
スケッチしました
身体をおおう毛は
鉛筆を少しねかせてふんわりと
ひげは鉛筆を立てながら
細い針金のように
それは君の
生きることにまっすぐだ ....
年老いていく 秋は黄昏の川に
燃え残った夢の残骸は 流れて
それでも 生きなければ ささやかな
喜びのために あてにはならない
忘れられた郵便ポストに 投函した
出しそびれた手紙 ....
コトコト
電車
コトンコトン
電車
コットンコットン
電車
どこかで見たことのある
ごちゃまぜの車体
帰ってきたなあ
秋が来ていた
遠い遠いところから
この家のどこからか
そっと耳を澄ますと
秋がわたしを呼んでいた
遠い遠いところから
あの日と同じ声がした
呼ばれるままに
仏間の襖 ....
向日葵の前で大きく背伸びする
「あなたは神を信じますか」
ふいに声をかけられ、振り向くと、若い美しい女が立っていた。
鈴木俊介は保険会社に勤務し、主に災害や火災に適応した商品を担当していた。昨今の地震や水害に対応するべく画期 ....
吹き渡るのは九月の
上風を食む草いきれの歌
輝きのなかの
沈黙よりもお喋りな
聞き流し
自転車は立ち止まり
カレーパンを頬張り
文庫本を繰って
雨上がりにはきっと
昨日よりも青く
午後をもっと愛 ....
何年ぶりだろう
二人で食べる黒蜜のあんみつ
手術前のある日の病室
老舗の和菓子屋の前を通り
ふと気づいて買った
お土産のあんみつ
あんみつの中には
紅白の求肥や赤豌豆
漉し ....
いかん
どきどき、どきどき
年甲斐もなく
いやいや、年相応
少し休みませんか
あなた頑張り屋さんね
手が言ってるわ ヘトヘト
でもあなた泣いたことないね
どうしてなんでしょう?
少し前
金環日食の起こった年でした
....
HONEONNA (骨女)
わたしの肩甲骨を
あなたの冷たい指先が
抱き寄せると
わたしの胸骨は
哀しく軋んで
あなたの裏切りを覚った
わたしの鎖骨を
あなたの嘘が ....
何が無いのか
自信なのか
意欲なのか
まるで
ひどい通信簿をもらったような
夏休み
比べては落ち込み
比べられては憤る
創るのに必要な
腹の底の力が ない
ROKUROKUBI (ろくろ首)
夕暮れの観覧車に
絡みついた
わたしを解いて
BMWの助手席に
しがみついた
わたしを引き抜いて
あなたの吐息と唇が
辿った
....
懐かしいこと思い出しました
ずっと前にこの街から
ずっと離れたところにいた時
唯一の連絡手段が電話であったこと
思春期のタブー
お喋りな母に電話の内容を盗み聞きされること
....
「ち・よ・こ・れ・い・と」
あの夏の
「ぱ・い・な・つ・ぷ・る」
打ち水のキラキラ
「ぐ・り・こ」
夕日のバイバイ
後退で箱の中はゆりかごから落ちて震え。
笑みを倣う行列は歩くが、道に足跡は無い。
記憶からずれて遠くなった心音。
斜面上を軽い言葉で撫で、
小さな心臓はどこかへ消えた。
....
斑入りの朝顔の葉
白い斑
子供の頃は病気の葉だと思っていた
今では朝顔の個性であると想っている
今では斑のアクセントに自然の美を感じる様になった
斑入りの朝顔の葉
不効率な自然の葉 ....
優しい言葉ばかりを 紡ぎ出す事は 容易い
思っても居ない心を 並べ立てて
笑顔で お喋り
そういうモノでは 無いでしょう
一つ 一つの 糸を 絡め合えば
喧嘩にも なる
....
なかなか膨らんでくれない風船に
飽きもせず息を吹き込み続ける
何処かに穴が開いているのを知りながら
滑稽な独り遊びを止めることが出来ない
春には妄想を咲かせて散らして
夏には傷痕を弄 ....
あなたとの戯れに疲れ
白く塗りつぶされた心
もはや何人も入り込む
隙間さえなく息を潜む
生きた屍の日暮に一つ
許されているのは悶え
押し殺す声も言の葉も
漂う風さえ黙している
....
最近よく夢を見るんです
出兵直前のあなた
居間に堅く座って
じっと私を見つめておりました
いつもらしくないと思っていたら
軍服の釦が掛け違っていたので
やはりあなたはあなただ
と思いまし ....
<ザ・ロング・アンド・ワインディング・ポエトリィ>
言葉はいつも
戸惑いながらやって来る
曲がりくねった道を通って
日常の生温い闇をすり抜けて
言葉はいつも
恥じらいながら ....
GIRAGIRA
あの頃の僕の瞳は
油の浮んだ水溜り
空も街も人も季節も
虹色に濁って見えた
今にも分解しそうな心を
繋ぎ止めていたのは
少し哀しい臭いのする
ギラギラ
....
蝉時雨が
それほど新しくない記憶を
影縫いするものだから
そのまま置き去りにもできず
立ち止まる
吹き出す汗
ハンカチを忘れたことに気づく
いつもそうだった
肝心な時に何かが欠 ....
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