緩やかな坂道を下りると
遠くに海が見える
ここから見る海は
手のひらの中に
隠れてしまうほどの大きさ
海を目指して歩いてゆくと
潮の香りの風が吹いてくる
風は太陽の ....
誰にも
知られたくないことって
本当は誰かに
いちばん理解して
もらいたいことなのかも知れない
止まっていた
私の時間は
君に出逢った
あの瞬間から動き始めた
....
灯りをつける ままの指影
笑われに 風 戸に止まる
はかれる継ぎ目 キラら酔
のぞく帆三日月 黒河蔵海
折鶴といて 折り痕ぬぐう
灯りを消したままの指守り
雪が降り積もる
形の上に
形のままに
雪が降り積もる
同じ重さで
同じ冷たさで
人の想いは
あまねく
くまなく
降り積もることはない
人の想いは
違った重さで
....
いつもの店のいつもの席で
ちょうどよく酔ったその後で
独活の酢味噌和えという旬のものを
うすうす噛んで
うすうす僕は
ひっそりとニンゲンをやめるのだった
右の席からは仕事の話
左 ....
江ノ電鎌倉高校前駅と
腰越駅とのその間で
窓という窓が突然
ぱっと明るい海となり
ゆるいカーブの水平線に
乗客はみな取り囲まれてしまうのだった
すばやく走る波の線
空の始まるとこ ....
髪についた雪を払って
傘も持たずに街を歩けば
見慣れた景色は別世界
眩しいほどの銀世界
ふかぶかと残したはずの足跡も
振り返ればもう微か
念のため確かめてみたけど
両足ともにちゃ ....
水の中では
泡が言葉だ
生まれたそばからはじけて
君に伝わることはない
同じ水槽の中にいるのに
君の夢が僕には見えない
同じだけれど違う生き物
互いに互いを選び合えずに
....
林檎の花は雪色 蕾は朝焼け
雪に枝を折られながら
木を裂かれても 根は雪を吸う
発芽し実になる芽の成る術を
同じく過ごし 来年の芽は待つ
芽が実になるのは二年越し
熟成は枝から始ま ....
僕の一番深いところにある
尽きることない泉から
喜びや悲しみや
くすぐったい気持ちなんかが
湧きだしてきてとまらない
ありとあらゆる才能の中で
生きて死ぬのが一番の才能
そう言っ ....
掃除を終えた綺麗な部屋に
いっぱいの日差しが入ってくる
本棚の背表紙もそろえたし
机にだって塵ひとつない
今のこの部屋には
神さまだって住めるけれど
そうするわけにもいかないし
背もたれ ....
ある冬晴れの日のその空と
同じ色の表紙をした
日記を買った
他に種類はたくさんあったのだが
それはひときわ僕の目を惹いて
一度手に取り
一度戻して
もう一度手に取り買ったのだった
....
青空は生物の息ではないかしら
すてきというまえのうっとりとした
それから
ミルクの入ったガラスのコップをおとして
わってしまった時の悲しみのしみる
それからまた
ごちそうさまという ....
一日分の答え合わせは
いつも寝床の中
模範解答のような布団に
やんわりと挟まれて
たいていが正しくない僕は
自分にバッテンをつけては
寝返りを打つ
寝返りを打つ
寝返りを打つ
....
木の天辺に腰かけて 青空と雲ばかり見る
木の葉を見下ろして 草が波のよう
風から生まれる 花の歌
花しか知らない 風の夢
靴が かかとから外れて
靴が 足から うっとりと飛ぶ
羽など ....
僕の<ありがとう>に
羽がはえて
僕の<あり蛾とう>が
飛んでいく
特製オムライスを作っている
君の左肩にふんわり
とまると思いきや
君の脇腹をつまんで
帰還する
<最近 ....
愛情を裏返すと
憎しみに変わるという
それはよく聞く常套句
けれども。
憎しみを表返すと
愛情に変わるとは
何故かとんと聞いた事がない
高鳴る鼓動 胸の奥
線路は続くよどこまでも
ポケットに手を突っ込んで
汚れた靴で旅に出る
マンネリ化した毎日を
変化球でどうにか凌ぎ
水でうすめた番組を
膝をかかえて受け入れて
....
やさいをそだてる
くさとりをする
はたけの
ちかくの林で
うぐいすがないている
山は
さぁ雨上り
風に戦ぐ今日も
悔いは無し
ながめる
雲ゆく
鬼蜻& ....
風と光
肌触りと眼差し
雲と微笑
素っ気なさとほつれめ
先週より軽い靴音
長袖シャツの袖口が気になる
温かいコーヒーを飲もうと
財布を探った手が
ポケットの温もりを探し当てた
....
電子レンジの中で何が起きているのか
ぼくはよく知らない
中に入れた物が熱くなって出てくる
そういうものだということの他は
操作方法だけ知っていれば困らない
ターンテーブル ....
ごめんなさい
ごめんなさい
ぼくに、ごめんなさい
歩道と車道を分ける
足元のブロックは
道にそい カーブにそい
入ってはいけない場所が
存在するのだと教える
枠は 時間と共に崩れ
修正されては 崩され
鳥に遊ばれ 虫にうとまれ
....
湯気の体が
空をつんざく音に
いったん裏返りまたもどる
王冠の金色よりも
はげしい色と形をして
夕立の前に吹いていた風は
僕の胸に火をつけていった
残忍で透明な蠍の火種
その影 ....
窓もない玄関もない俺の部屋
どこかでたしかに会ったことある人に
挨拶してはみたものの
結局あれは誰だったのか
日が暮れるまで思い出せなかった
減るものじゃないけれど
宙に消えた「こんにちは」が
なんだか寂しい ....
帰り際に君が残していった
つれない言葉のひとかたまりが
僕を軽々吹き飛ばし
ふりだしにまで戻してしまう
まるで魔法だね
はだしで睦み合った日々を
真下に眺めながら
いつも ....
雨粒が個体のように転がって撥水製の傘の斜面を
雨の街そこが始発の駅ならば待っているのはみんな雨人
家がない ただそれだけで蔑まれ
ナメクジの這う赤いポストを
....
どこかしらないところで
しらないだれかが
しらないことで
おこっている
どこかしらないところで
しらないだれかが
しらないことで
わらっている ....
ぶらぶらとぷらぷらを
足して二で割ったような散歩をしていた
日曜日のエイプリルフール
晴れているような曇っているような空だ
やることもないし嘘をつきたい相手もいない
コンビニでショートホ ....
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