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なぜだろう
臨死はひとけたになったのに
卒寿のおひとりさまにむかって
遠くから鴉が揶揄している
近くで番犬が威嚇してくる
そして 反対に ....
つつじが丘のひだに
住みついて 三十年
いま 卒寿となって
しんみりとおもう
九十の齢(よわい)の歩みが
(おかげ ....
きさらぎは昼さがり
北風の挑発もなく
ふゆびのさざなみは
ベランダのひさしをすどおり
やわらかなひかりとなって
おだやかに三和土のうえで
尾っぽを引きずっ ....
散策の道すがら
杖をつついて 卒寿が呟く
近頃になって
つつじが丘の街はずれは
新興住宅の建設ラッシュで
昔の歩道のつつじの群が
めっきり粗野になっちまったと
....
冬枯れした街の
家並みをすりぬけて
白糖の雪ぐもがうかぶ
紺碧となった 虚空のもと
ドライブに便乗する
その・・・ひととき
卒寿のおひとりさまは
....
政治や 経済とは
無関係に
大宇宙の 風と
小宇宙の 光りの 変奏に
あやつられながら
生れいで やがて
とわに 消えて逝く
そうだ そうとも
....
けさも 軍手をはめて
P・C のキーを叩いている
骨・皮・筋(すじ)衛門
卒寿になって
初めて知った
暮しのなかの「偶然」も
....
毎日 毎日 ただ毎日
卒寿の大脳は 撫ぜられている
白い群像の
ポジティブだった 蒼いひかり と
黒い塑像の
ネガティブだ ....
広場の木立ちが さけんでいる
黒い北風の渦まくなかには
行くなゆくな と
両手を振って
だが・・・・ ....
冷笑されるでしょう が
卒寿となった いま
すがりつくしか ありません
過ぎてしまった
脆い群像の 淡い言動のかげ に
卑下されるでしょ ....
「師走」というと
通り一遍の味けは凡庸だが
「年積月」などと言い換えると
陰陽五行説を想起して
なんとなく 芳香が
五臓六腑から湧きあがってくる
かくして・・・・
老眼を ....
卒寿の軽薄となってしまった想いは
足踏みを繰り返しては
うしろばかりをふりむき
まったく前を憑こうともしなくなった
かくして あぁ・・・・・
....
芥子色の北風をついて
冬至の太陽が
レースのカーテンに
無味乾燥の原版として
いろつや褪せた
庭木のかげをはりつける
卒寿と ....
いまごろになって
やっと
起床直後の呪文が
癖となった
仏壇にたてかけた
亡妻の遺影に
「おはよう」と
口 ....
東海は 渥美半島の 砂山から
真昼の渚に 乱舞する
海鳥たちを ながめるとき
太平洋を覆いつくす
「悠久」のふた文字が
こころにしみて
....
手入れが欠けた裏庭には
跋扈したぺんぺん草が 王者となって
むなしいかげを ふるわせている
神楽月というのに
優雅な舞楽は 聴き取れず
沈滞した深閑だけが 満ちみちて
丘のひだにも ....
なぎさでさわぐ波濤のように
名前まけする 小公園の
こだちがざわめく 晩秋 に
卒寿となった おひとりさまは
もっぱら せまりくる
おのが身の陰影(かげ)に追われる
甲高い鳥のさえずりと
....
街なかのさみしい
さみしい小公園で
低学年のこどもたちは
新調して貰った
自転車にまたがって
喊声をひろげ
尊い「時」を讃えている
あゝ おらにも かって
そう ....
陽はやわらかにあふれいで
光はしずかにふりそそぎ
こがねのなみがおさまった
神楽月は わびしい街はずれ
原っぱの片隅で おとなにとっては
意味もなく くりかえされる
こど ....
かぜが およいでいる
広場のベンチの端っこで
ひかりが ねころんでいる
更地の草かげのしたで
とある日曜のショッピングで
おとこたちは とまどっている
目移 ....
庭木のこずえが
暮れ六つどきの
かわいた秋風にゆれている
しのびよる冷気と
弱気なひかりにさえ おどされる
卒寿のお ....
遠くで鴉がうそぶいている
近くでキジバトがうなっている
もういっぽうでは
無聊が楽隠居のかげをひそめて
脱落のひなたぼっこ ....
蝶番に赤錆びが 出始めた
脳味噌に白カビが 生えだした
それなのに
卒寿までいのちが めぐまれたこと ....
冷蔵庫のコンデンサと
コンプレッサとが
ご機嫌いかが と適時にささやく
そして そのたびに
卒寿のおひとりさまは
ぴくっとして 暮しの流れに竿をさす
過ぎた四次元の追憶を迫 ....
一坪菜園を撫でまわし
ベランダの屋根を照り返す
昼さがりのふゆびが
連日ささやいています
卒寿となった
おひとりさまにむかって
過ぎた「時」の古傷を
迎えた「空」の生傷を
残 ....
「生」が図太かったら
短命でも良しとするかい
それとも
長命にめぐまれたら
「精」の脆弱さに甘んじるかい
卒寿のおひとりさまになっ ....
昔 いっとき 叫ばれた
つたないスローガン──
「発想の転換」
そうだ そうだった
卒寿に甘えて
弱きになるのか
卒 ....
「時」はきしみを刻み
「空」はゆるみを映すなか
古来の卒寿にめぐまれて
おらはおひとりさまとなった
自問自答のたわごと それは傷いた
....
ときどき いたずら に
玄関テレビホンを押してゆく
おせっかいな通行人がいるもんだ
知ってか知らずか
ご老人 呆けてはいませんか
....
小さな秋に
里のまつりのイベントで
そしらぬかおして
そのひとは 全身を着飾っている
薄墨いろのはなびらと
セピアいろのこの葉でもって─ ....
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