ある日ひょっこりと
君から連絡があるかもしれない

そう思うと
携帯を家に置き忘れた事が
不安で堪らなくなる

そんな事ある訳ない
分かってるけど

胸ポケットに
願いを一つでも ....
雲間から伸びる陽射しを浴び
汗が染み込んだTシャツが
少しだけ軽くなった気がするのは
単なる錯覚でしかなくて

切れ間に広がる果てへ行こうと
熱気を帯びた風を蹴っても
待っている笑顔など ....
いつもこの歌を唄う時
零れ落ちそうな涙をこらえ
腹の底から喉を震わせている

普段どうしようもなく卑屈で
人に気を遣えないだとか
寒い事しか言わないだとか

馬鹿と呼ばれながら生きて
 ....
早朝
カーテンを開くと
蛾が一匹
網戸にへばり付いていて

不愉快だから
乱暴に網戸を開き
勢いよく締める

羽をばたつかせ
それでも飛ばない

白昼
食事から戻っても
蛾 ....
目が染みるほど充満した煙の中
何を血迷ったか跪く自分の姿を
鏡に映しこんでぼんやり眺めていた

数限りない自業自得の渦で
息をする資格を無くした雑魚が
水槽から腹を出して浮かんで ....
たとえ咽るほど湿った空でも
たとえ二カ月しか経ていなくても
そこが「我が家」であるという事実に
これだけの安堵を感じられるなんて

雨足は強くなっていくにつれて
今日から押し流されていく昨 ....
空気を吸い込むのでさえ
精一杯に力を込めなくては
ここでは何も掴めそうにない

五反田の駅を降り立って
いつも行くカレーのチェーン店を探すのは
どこに行っても変わらない味に
きっと安心を ....
札幌の六月はまるで
長崎の三月のようで
違いを挙げるとすれば
もう桜は咲いていないくらい

午前中まで降っていた小雨
午後にはすっかり止んだけど
慣れようもない寒さはそのまま
心を照ら ....
レモン果汁のチューハイを
ちびちびとやりながら
溜息をつくのはもはや日課だ

鏡に映る容貌はどうみても
二十代後半には見えないほど
未来を思うには老けていて
過去を振り返るには青臭い
 ....
一泊五千四百円の
十階から覗き込む
見慣れない街の灯りは
夜が更けるほど明るく
時が経つほどに寂しい

小窓から隣の駐車場を覗くと
一人きりの姿が振り返り
何故だか視線があった気になり ....
点滅する信号に気付いて
駆け出す僕の背中越しに
野良犬が小さく吠えかけた

立ち止まり苦笑い
どうせ誰も待ってないから
そんなに急ぎなさんなって
そういう事を言いたかったのかい?

 ....
車載時計は21時半を過ぎて
人気などあるはずもなく
風が木々に囁く声さえ聞こえない

料金所を越え
長いトンネルに入り
アクセルを踏みしめ

車間距離を示す標識が
歪んで千切れるのが ....
一人で眠るには幅広のベットで
空想の世界を泳ぐ夢を見ていた
僕が裏切った全ての人達と
僕を見捨てた全ての人達とが
互いに手を取って微笑んでいる

ありえない風景を眺める僕と
異なった視界 ....
無意味な夜更かしの後に
明けた朝の風を吸い込んでも
昨日の残りを埋めきれていない
事実だけが胸に残っている

始業と同時に終業を待ち
帰宅と同時に無限を願い
眠りの直後に目覚ましが鳴り
 ....
馴れ合えよ
馴れ合えばいい
そんでさ
他人の心なんざ
置き去りにして
知らぬ間に傷つければいい

そーいうのがお好みだから
大抵は気付かないまま
甘えと惰性の中で
切り刻んでいるん ....
風向きは悪くないから
こんな酷い雨でも
窓を開けていられる

国道に何台かの車が
時折行き交っている
その音さえ掻き消すほど

雨足が強くなるほど
1DKの部屋に響くのは
天窓を叩 ....
在る筈のない痕跡を
見つけた気になる度に
流れる記憶の向こう側で
忘れてた笑顔を思い出す

振り返っても戻らないのは
決して時間だけじゃなくて
僕が君を覚えていて
ふとした瞬間に蘇る記 ....
想像していたより
ずっと簡単だった

左手を少し動かして
アドレス帳から
君の名を削除して

メールボックスを開き
暗証番号を入れて
フォルダごと消去して

目頭が少し熱い
涙 ....
米軍基地を見渡せる
緩やかな坂の中ほど
ぽつんと小さく咲いている
タンポポに目を奪われた

種を飛ばす少し前の
綿毛を湛えたその姿が
遠くのドックに停まっている
巡洋艦と重なっていた
 ....
夜が静かに震えて
雨が残した雫の音を
途切れ途切れに数えていた

置いてきたものとか
残してきたものとか
そんなに遠くではないけど
もう帰れない日常を思い

少しだけ寂しくて
無意 ....
国道に面した真新しいホテルで
五回目の夜を寂しく過ごしている
激しい雨音を掻き鳴らす春は
去年よりもずっと冷酷だった

ルームライトに浮かぶ哀れな影
照らされる白髪を何本か引き抜いても
 ....
弱い雨が混じる夕暮れ
運ぶ風が柔らかに包む
小さな花びら舞い落ちる

鼻の頭で微かに咲いた
一片の泡沫を運ぶ香りは
いつからか通り過ぎるだけの
季節を憂えているようで

桜にですらき ....
何杯の酒を飲み続けて
どれだけの吐瀉物を流し出したか
胃や肝臓に残る重苦しさも
頭の芯から首筋に響く痛みも
この愚かな心に刻みつけられた
嘆きと悔やみを忘れるに至らない

事実が目の前で ....
詰め込まれたスケジュール
思い返しても変わるはずがない
時間を一つずつ手探りするたびに
何を抱えながら生きているのか
だんだんと見えなくなっていくよ

汗と香水と煙の匂いが立ち込める
博 ....
コンビニで買った納豆巻
開いて海苔を取り出すと
半分少し過ぎた場所から
バラバラになっていやがった

ささやかな夕飯すら
満足に食えないなんて
中途半端な納豆巻を
悔しさ交じりに噛み砕 ....
抜け殻の瞳を眺めると
底に微かな水があった

忘れかけていたのは
例えば同情であるとか
例えば憐憫であるとか
そういう物を拒絶しながら
守り抜いた自己が在って

外側から眺めると
 ....
迷いや苦悩
劣等感や嫉妬
孤独や寂しさ
無理解への苦痛

美味しい食事
快適な眠り
人前での笑顔
傷一つ無い手首

病名がないから
この重苦しい心も
たいしたもんじゃない
{ ....
ふわりと柔らかな木地に
サックリとナイフを通して
微笑む君の目の前に
切り分けた木地を差し出して
キラキラのスプーンに乗せて
そっと口に運んであげよう

交互に頬張りながら
口に広がる ....
向かい風が強く
帰路を遮っていた

ネクタイに残る斑点
三月に降る雪はいつもより
駆け足に融けていくようだ

見上げた街頭が染める
閉じ行く季節の徒花は
移ろう時に逆らいながら
自 ....
17時の眠りから
22時の目覚めを経て
1時に途方に暮れる
今は月曜日だというのに

喉に注ぐお茶
吸い続ける煙草
秒針は滑らかに
目覚ましを回っている

散らばった部屋で
一人 ....
松本 卓也(291)
タイトル カテゴリ Point 日付
忘れ物自由詩3*06/6/28 1:32
梅雨空に問う自由詩006/6/27 2:09
大切な歌自由詩2*06/6/22 1:06
自由詩2*06/6/18 0:26
拗ね者は無様に吠える自由詩1*06/6/17 0:19
労働者の哀歌-帰宅編-自由詩2*06/6/15 1:01
労働者の哀歌-東京編-自由詩3*06/6/13 23:33
労働者の哀歌-札幌編-自由詩1*06/6/10 23:18
労働者の哀歌-仙台編-自由詩3*06/6/10 0:26
労働者の哀歌-名古屋編-自由詩4*06/6/9 0:46
野良犬とサラリーマン自由詩1*06/6/2 23:57
飛べ自由詩2*06/5/30 0:12
ファンタジア自由詩1*06/5/26 0:18
黒点の中心部に焼きついた笑顔を見たい自由詩3*06/5/25 1:45
馴れ合えよ自由詩0+*06/5/21 1:10
雨音に相応しい詩などみつからないのだから自由詩2*06/5/19 1:02
板チョコ自由詩1*06/5/14 21:48
Clear自由詩2*06/5/9 23:49
タンポポ自由詩2*06/5/1 0:47
バイバイ自由詩2*06/4/23 1:05
雨に詠えば自由詩2*06/4/11 0:07
桜、散る自由詩3*06/4/7 21:46
自棄自由詩1*06/4/3 1:30
白々しい風自由詩2*06/3/31 23:26
納豆巻自由詩0*06/3/30 1:17
脱皮自由詩2*06/3/28 1:22
名前を付けてあげてください自由詩4*06/3/21 23:55
チーズスフレ自由詩1*06/3/19 0:06
きっと、忘れない自由詩2*06/3/15 0:18
週の隙間に挟む詩(うた)自由詩0*06/3/13 1:53

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