白々しい風
松本 卓也

詰め込まれたスケジュール
思い返しても変わるはずがない
時間を一つずつ手探りするたびに
何を抱えながら生きているのか
だんだんと見えなくなっていくよ

汗と香水と煙の匂いが立ち込める
博多駅二番乗り場での待ち時間
ほろ苦いコーヒーで漱ぐ口に
どれだけの言いたい事を噛み殺し
どれだけの言いたくない事を言ってきたか

数えるのは酷く億劫で
滑り込む電車に奪われる視線
あそこに飛び込んでしまえたら
一瞬の思考が過ぎったかと思えば
幾ばくかの恐怖と共に苦笑いを浮かべる

顔を見合す事の無い群衆の中に
どれほどの感情や痴情が無気力に消費され
コンクリートの壁面に擦り付けられたか
僕に数える術などある訳が無い
僕に識別する理由などありもしない

今日は白々しい風が吹いているから
帰り着く頃にはきっと夢を見ているだろう
枠組みの中で役割を振られる事も無く
自分の居ない情景を幾ら想像しても
誰も泣いてくれなんかしないのだから


自由詩 白々しい風 Copyright 松本 卓也 2006-03-31 23:26:39
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