チーズスフレ
松本 卓也

ふわりと柔らかな木地に
サックリとナイフを通して
微笑む君の目の前に
切り分けた木地を差し出して
キラキラのスプーンに乗せて
そっと口に運んであげよう

交互に頬張りながら
口に広がる甘さと
微かに残る酸っぱさに
別々に過ごしていた
子供の頃を思い出し
大人になったその時に
思い描いた理想の人と
互いの瞳に映ってる
姿を見比べたりしてさ

外に吹く風はまだ冷たくて
今日を春と呼びたいのに
暗く湿った空に流れる
灰色の雲は恨めしいけど

暖かいココアを注いだ
同じ形のコップを掲げ
何の記念日でもないけれど
乾杯をしてみながらさ

そっと食べさせて
ふっと笑いあい
そんな日を過ごすため

毎日に積み上げた
疲れと涙と責任を
少しずつ分け合うため

二人で切り分けながら
チーズスフレを食べようよ


自由詩 チーズスフレ Copyright 松本 卓也 2006-03-19 00:06:59
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