一年まえとおなじように、さるすべりの木がアパートのしろい壁に影を落とす。葉のおちた、やせた、冬のさるすべり。
はれて、あたたかい夕方は清潔なにおいがする。角のスーパーマーケットのほうから、圧倒的 ....
かわいた雨がはりついて
ふるいノートは空のまま
そろえた靴をふみつけて
はだしの猫がおどるよる
ならんだ星のまんなかで
ちいさな夢がもえつきる
あなたがわたしのようにできていないように
わたしもあなたのようにはできていない

ひとは、物事は、それがあるべきではないようにはできていない

押しつけあおう、殺しあおう、壊しあい、奪 ....
花が割れるおとを知っているだろうか。
わたしのよく知っているのは、凍った薔薇が割れるおとだ。
虫の羽の振動のようにか細く、澄んだ一瞬の音。

音に執着した時期があった。色やにおいやかたちに ....
誰かを傷つける誠実さと、自分を護る狡猾さなら、いったいどちらが罪だろう
わたしたちは
皆で手を繋いでいることができない
綻び、繕い、
それを誰かが押し拡げ、
ちがう誰かが埋め立てる
 ....
冷えてうまれゆく朝を
一人でみていた
生ぬるい夜を
壊される秋を
一人で

かなしみは
受け止めることも
受け流すことも
包み込むことも
捨て去ることもできない
そのかなしみ ....
電車に乗っている。

夜の仕事を終えて、それはいわゆる飲み屋の女なのだけど、電車に乗っている。酩酊の手前で。
飲み屋には、いろいろな男のひとがくる。それをいろいろな女のひとが待っている。男の ....
わたしをみないで
うつさないで
おもわないで
わたしをみないで
みないまま
愛して
額を星型にくりぬいて
そういう風に生きていこうとしたのだ
垂直に突き立った時間を
半分で折り畳んだのも
注がれた水を飲まずに捨てたのも

それでも、あまり深刻になる必要はない ....
ふたつで1パックの太もも 紙コップのうすいコーヒーの温みで時間を計り からだをしめらせてうそをかくす たくさんのうそがドアーにはりついている そして地面が壊れはじめる 受け止められずに 受け流せずに  .... まず綱が切れる.物事は徐々に浮遊しはじめる.昨日はトースターの裏側からら行がごっそり見つかった.つぎに内部と外部がゆっくりと剥がれおちる.

たとえば、思うのは
そのちょうど中庸にいることは ....
かえり道
ひる間の道路で
失神した

ことばを
ていねいに
編みすぎて
くちは
どこかに
縫い込まれてしまった

おい、猫
わたしたちは
やさしさが
足りなかったな
 ....
たぶんこのまま
消えたらいいな
うすねず色の
雲がかかって
脳みその中が
ぬるく泡立つ
朝靄の薄雲に似た恋情の 移ろい易くもいちめんに咲き 鉄塔の切先に白い烏がとまって喚いている 物事の切先に頭の良くない蛸が絡みついて喚いている 夜のえりあしが伸びきった性器に引っ掛って喚いている 敵はどこだ?
白い白い夜明け の向う側に 見えるか  ....
「届かない」 抱き合いながら目を伏せる

いとしさの静寂にふる白い雨

引き寄せるつよさをはかる むなしさよ
うつろいを隠してくもる窓硝子 季節が後退して冬がくる
胸のなかに痩せたこどもをひとりかくして
ステンレスにはまる寒々しい白をみている

いろいろを重ね
温度を保ったとして
巻き戻る波をとめることはできない
 ....
しりながら 夢をみすぎた いくつかの瞬間には 死だった しりながら 罪をながめた そのとき初めて会ったみたいに 橋は わたしのためのものではなかった 自分むけにつくられたせかいなんて嘘だと しりながら .... さいごに何か言いたいことは

神父に言われた死刑囚は
「おれは
手品師になりたかった」
と言って
舌を噛んだ

そのとき
神父の持っていた
聖書は
白紙だったことを
だれ ....
鳩を飼っている家がある。近所だ。なんというのだろう、名前はわからないけれど、鳥小屋をもっともっと大きくした屋舎に、何十匹も。朝がたと夕暮れ、鳩たちは放たれて舞う。ほとんどの鳩の身体は真っ白なので、 .... あの星が流れたらひとつ捕まえて 君に会うまで隠しているよ         静かな窓のまえに立って
       汚いことばをいくつも吐く
      うす甘い空に雲がたなびいて
     鏡のようにつるつるの水の上を
    あかるい色の羽を ....
さえないな、と思っていたら、十月なのだった。
十月のある日はわたしにとってはもっとも重要な節目のひとつの日だ。
だから、こうして、いろいろ考える。
いつもいつも、ひとつの考えが頭の中にある。
 ....
遠い夢にひとりきりでたっている 澄んだ海辺に干されるように


やるせないものばかりを盗んでいる ほつれた糸を引き抜くように


後ろ手に楽器を鳴らすようなもの わたしを見ないひとを抱 ....
くち元におだやかな笑み 午前2時 夢をみながら 夢みせるひと

体温のうら側を抱き合うふたり せまい寝床は寝息で縺れて
だれかを
いとしいと
思っても

自分のものには
できない
知っているから

いつもより
すこし早起きして
おだやかな寝息を
瓶詰めにする
灰だらけの朝のじめんから
つるつると生えてくる腕たちに
片っぱしから色をつけるその間に

目隠しをして手足を縛って猿轡を噛ませて、
炙って捩じってばらばらに千切って、
砕いて溶かして混 ....
ぶどうの実みたいにていねいにしてね 薄い皮膚のしたは滲んで ためらいを波打ちぎわでうけとめて こぼれる前に飲み干す二人

えりあしに新しい香をしのばせて 季節のように抱き合う初秋

組んだ手を解いては笑いまた組んで ほろりと落ちる金木犀
はるな(1859)
タイトル カテゴリ Point 日付
さるすべりの影散文(批評 ...110/12/9 16:07
自由詩310/12/2 18:42
そういうふうにはできていない自由詩110/11/30 5:56
音のこと[group]散文(批評 ...110/11/28 16:41
あさいゆるし自由詩110/11/26 7:55
一人でみていた自由詩410/11/18 4:42
酩酊()散文(批評 ...0+10/11/17 6:04
みないで自由詩310/11/17 5:55
晴れ自由詩210/11/12 13:07
電車、みじかいスカート自由詩310/11/12 13:07
浮遊自由詩1+10/11/12 13:06
自由詩510/11/10 13:42
あわ自由詩210/11/10 13:38
薄雲[group]短歌110/11/6 5:52
敵はどこだ?[group]自由詩310/11/2 3:10
逢い引き川柳110/10/29 18:50
別れ話川柳110/10/29 18:36
できない自由詩110/10/28 14:01
みすぎた自由詩010/10/28 14:00
手品師自由詩110/10/28 1:14
鳩のこと[group]散文(批評 ...210/10/23 15:14
秘みつ[group]短歌110/10/22 23:54
穏やかな日自由詩410/10/20 17:24
十月散文(批評 ...010/10/20 17:09
神様[group]短歌110/10/20 3:12
いとしいひと[group]短歌110/10/20 2:52
小瓶自由詩010/10/14 6:25
自由詩110/10/14 6:22
ぶどうの実[group]短歌110/10/9 23:35
二人[group]短歌110/10/9 23:28

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