ときどき、自分がいままでどうやって生きてきたのか思い出せなくなる。
たとえばそれはセーターを編んでいて、順調に右肩まで編んだところで突然、鈎針の動かしかたを忘れるようなかんじ。右に編むのか左なの ....
わたしたちにとっての生活は
愛にみちながら残酷で
はてしなく自由でありながら縛り付けられ
とりとめもなく広大なのに小箱のように手軽な
つねに両極と矛盾を孕んだ
お菓子のようなもの
いろいろなひとがいるから
いろいろなきもちになる
ろうそくのような 虎のような かみくずのような 長靴のような かみどめのような 列車のような 自動販売機のような 鶏のような
そんなきもちに ....
めぐちゃんは
やりまんと言われてたけど
自由だった
やりまんと呼ぶわたしたちよりは
ずっとずっと自由だった
べつにうらやましくはなかったけど
おとこを抱こうと
きめるとき
こころは安らかだった
耳元で
お札がさらさら鳴るような
そんな安らかさだ
すぐに吹き飛んでしまうような
中庭に
植えた花は
きれいだけど
枯れてしまった
窓際に
活けた花は
きれいだけど
萎れてしまった
花屋に
勤めてみたけど
まい日
まい日
まい日
まい日
まい ....
誰だ誰だ誰だ誰だと喚きまわっているから私だと耳打ちしてやったらすうっとしぼんでいった誰だ誰が死んだんだ?私だ、菊の花まみれで立っている女。あれはもう腐ってるから食べないほうがいいと男。緑の肌の少女 ....
ゆうぐれに
さみしくなったり
あるいていて
ふと生活のにおいに
あしをとめたり
ゆっくりとしか
すすめないこと
くやしくなったり
生きるとゆうことが
どれだけ不安でも ....
ながくのばしたかみの毛を深い赤色に染めて、頬は日焼けしているんだけれど、蒼ざめて。
いつか会おうね、きっと会おうね、手を振って、見えなくなって、立ちつくして。
みんないってしまう。
みんな、来て ....
白いさんごに
てをついたら
ざくりと血が出る
ああ
わたしは
自然とは別物だ
かえりみち
ながいながいレールをみながら
このゲームが
はやくおわりますように
と
願っている
終わりますようにと
祈っている
ピアノの音と
玄関のドアーの音
入ってきたのか
出て行ったのか
わからない
あしたの朝
もしもきみがいなかったら
あしたの朝
もしもきみがいなかったら
( )
....
こうばしい背中にのこる夏の日を さらさら撫でて響く虫の音
別れぎわ惜しむ間もなく日は落ちて 寄り添う影に夜は優しく
よこむきになって
泣いていたら
右目のなみだが
左目にはいって
はんぶん魚で
おぼれていました
台風が遠くの海にさしかかったと聞く。わたしのいるところは、晴れていて、暑いがきちんと秋の日差し。さしこむ光の色が橙で、日が傾いているのだと思う。
わたしは空調のきいた室内で、窓の横に座ってい ....
しらない人が
にやにやしながら
ついてくる
ああ
わたしは
人を殺しつつ
誕生に感涙し
星空にふるえながら
少女の処女をうばう
わたしの命から
意味が剥がれおち
あな ....
だれか
汚い戸をあけて
入ってきて
つめたいお皿に
生ぬるい血を
注いで
あけはなして
去って
だれかのものにして
心臓を
落としてしまった男が
こちらをみて
口を開けている
あのときから
うたが歌えなくなった
かわりに
詩をかいている
かわいた心臓が
膨れあがり滴るような
詩をかき ....
空を引きずり
波を止め
人を変えた
いくつもの声が
きえた
さかい目のような悪夢を
人々はみた
それでも
悪夢のような日常には
すぐに慣れる
都市の陰欝を
打ち抜くように ....
あらゆる可能性があり、またあらゆる不可能性があるが、それらに大差はない。それらはみな頭のなかにあり、実在する一匹の蝿に勝てるものはない。引き金を引けるのは実体だ。実体化する可能性。
まなざしが果実のように熟すなら 情も枯れゆき朽ち果てるのか
鰯雲 終い忘れた風鈴がからからと鳴る かなしいみたいに
明けがたに仕事を終えて
20分だけ男のひとに会った
くちの中に
たんぱく質の味を覚えながら
台所で立ったまま桃を食べた
うす暗く うす寒い からだのなかに
うす甘い桃が
ぬまぬま ....
わたしは
鬼を育てている
小さくて可愛い
鬼を育てている
百年を わたしは三つに分け
大きいものは土に埋め
小さいものは火で燃した
一つ残った手まり程のを
わたしはするりと飲み ....
わかりきってることだけど
それがそこにあることが重要なのかもね
なにも言い切れないぼくたちが
届かないなにかをほしがることは必定で
それがそこにあるってことだけが重要なのかもね
あなたがたと
話したり
笑ったり
していると
こころが平べったくなるのが
よくわかる
あなたがたは
正直で
親切で
寛大だが
あなたがたと
話したり
笑ったり
し ....
完璧な森 深い緑色
完璧な埋葬 残酷な金色
完璧な・・
森、埋葬、そして墓標
額縁、衣、カンナビス
矛盾・・
贅沢な墓標
(ひとごろし)
///・・・
....
こうばしい匂いは
おとこのこの
おへその上からする
おんなのこたちは
それを知って
おんなになる
青い朝も
青い夜も
青い汗も
過ぎてしまえば同じようにいとしい
はやくすべてが過ぎさって
いとしいものになりますように
あらかじめ壊れたものを受け入れるのは、
壊れゆくものを見つめるよりも、きっと易しい。
でもどっちみち、
どちらにしても、
空気のすくない星で暮らすようなもの。
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