ケーキを食べたのは
ケーキを食べている女の子になりたかったから
ケーキが食べたかったわけじゃない
ケーキを食べている女の子になりたかった
正しくはないとしりながら、あの背中にもう一度触れなければ詩を詠むことができない気持ちがする。脂肪の薄い、汗ばんだ背中。皮膚の内側にとじこめられた熱、その裏側にある動物みたいな匂い。
数えるほどし ....
ピーナツバターを塗りたくってから、くだいたナッツをまんべんなくのせて、すこし焦げるまでトーストする。卵を溶いて、砂糖と出汁で味をつけて充分熱したフライパンで巻く。沸騰して火を止めてから三十秒経った ....
抱かれていたら
いっさいの言葉が消えてしまった
あきらめに導かれて
横たわる生活に屈した
詩人は 歌をもとめて
音楽家は 色をもとめて
画家は 言葉をもとめて
それぞれに寝床をみ ....
初夏に良く似合う君の肌
五月は、いつも遅れてやってくるね
陽射しをはじいて透き通る日々
ひいやりとした床の上で
最後の苺を食べよう
写真を撮らなくなって一年ほど経った。しかし少しまた絵を描くようになって、カメラを使っているときにはほとんど絵を描いていなかった、文章だけはいつのときも書いている。
物事をおこなう上で(ここでは創 ....
あらゆる事象は往々にしてひとつの地平に閉じ込められる。
*
時間に切れ目を入れるようにして生活が綴じてゆく。
*
猿の脳みそを吸いだした。
*
斜視の女が窓のす ....
あふれるようなやさしさが
あふれてしまったのでどうしていいかわからなくなった
ひまわりの広告をみて
ひまわりだねえ
と言う
ひまわりだねえ
と返しながら
ひまわりをみている
ひまわり
桜がちりはじめているので
かなしい
かなしいと言ったら
かなしいのか
と ....
飲みかけのコーヒー
食べかけのプリン
吸いかけた煙草
死にかけの犬
読みかけの本
書きかけの日記
脱ぎかけのズボン
掛けちがえたボタン
揃えられないブーツ
禿げたマニキュア
散 ....
ナナ、もうきみが
誰とも性交しなくていいように
全部塞いでおいたからね
安心して
そとをあるいておいで
チョコレート
は
みかた
蹂躙
は
てき
メンソールシガー
は
みかた
制限時間
は
てき
おとこのこ
は
みかた
おんなの人
は
てき
....
昼間に、いくつか電話をかけた。仕事のための電話と、連絡、それから遠くにいる友人と、誕生日を迎えた男の子に。
恋人からは、いちにちに何度か電話がかかってくる。きちんとご飯を食べている?とか、洗濯物 ....
うす青は群青の背に程遠く 終わらぬ恋の浅はかさを見る
はじめから終わっていたと知りながら引きずるように肌をぬらした
すべてなどあってないようなものだから千切れた胸に世界を仕舞う
....
あかるさに開いていたのはこころでもからだでもなく精神でした
マニキュアが剥げちゃったから帰らなきゃ 爪のさきまであたしでいなくちゃ
ふりむいて、そのときにまだちゃんといて 先に終わるな ....
天気が良くない。いちど実家に帰って、それからまたここへ帰って来て五日。ずうっと天気が悪い。雨か、そうでなくても曇り空。桜の花はもうほとんど散ってしまって、枝に残るしなびた色はもう桃色ではない。
....
あかるすぎて
うまくとべない日
靴ひもを結びなおしたら
生まれ変われる気がした
経血のついたスカーフを
器用に蝶々にして
こうばしい花びらを
あつめて土にかえす
(あなたは
....
いく前に 引かないで 来て いかないで
「本当?」「嘘」「嘘?」「本当は」「嘘でしょう?」
これなあに あか、青、黄色 、 肌に咲く
「みないでね」「みせて」「みて」「だめ」「見 ....
あしたの準備、というものをしないで寝る子どもだった。宿題も、時間割も、着る服もほとんど準備しないで寝てしまった。かといって、早起きするわけでもなく、だから毎朝、わたしは兵士のようにごたごたと用意す ....
かなしみを
かなしみ終えたら
ひとは
笑わねばならない
かなしみが居座って
笑いかたをわすれてしまうから
こころがばらばらにちぎれて
もう一つには戻らない
体じゅうの血が流 ....
眠る、それは祈りだ、もしくは祈りに似たなにか
新しいソファー、白い合皮のソファー、ふたりがけのソファー、わたしたちのソファー、わたしたちの部屋にあるソファー、わたしたちの生活に調和するソファー、 ....
生まれながらに海にして
私は誰も待っていない
浮かべて揺れる大きさを
舟も陸もが優しさと
讃えはするけど繋がれず
生まれながらに陸にして
私は誰にも出会えない
在り続けるこの風体 ....
ゆるやかな住宅地、カーブに沿って咲いているひなげしの頭をひとつずつ摘みながら目の前を通り過ぎる乳母車を押した女に俺は尋ねる「俺は誰だ」ひなげしまみれの女は重たいまぶたをぴくぴくさせながら言う「知らない ....
はるあさく みどりをまつは 黄卵と よるのせにさく ふくらみゆく月
ゴーサイン、そうあるべきでないこと、線路の交差、乗換え案内、小型化、軽量化、構造の繁雑化.....
冗談、胃袋みたいな鞄、鞄みたいな小部屋、小部屋みたいな恋愛、恋愛みたいな冗談。
腹痛、睡 ....
それがまるでさいごだってみたいにせつないかおしてくれよ。
願うだけせつなくなることをなんでもして
*
いろいろな噛み心地のプラスチックを食んでいる感覚
自分自身をつみあげた先 ....
口のなかの、右側の、親知らずを抜いたところが腫れている。そこはたびたびそのように腫れるのだけど、それは、「ばいきんが入った」せいだと、ずっと思っている。むかし長年歯列矯正をしていたころにも、そのよ ....
かなしみを束ねたように咲く春と 曇天に鳴るあさましい胸
振り向けば 散りながら咲く優しさを 知っているから前しか見れない
長いうでに春風をからませて
すいすいとあるいていく
かび臭いまちを泳ぐように
恋はもう
ずいぶんまえに終わっているのに
曇天に胸が鳴る
彼がふりむいたら
また恋がはじまってしまう
....
好きで、よくライブへ行くのだが(インディーズ・ロック・バンドが多く出る)、どうしてもベースに見入ってしまう。ギターやドラムやヴォーカルやキーボードももちろんそれぞれに素晴らしいのだが、ベースの、あ ....
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