うるさいお前らそんなに喋るな、喋るなっていうか喋ってもいいけどそんなにうるさくするな。なんでそんなにうるさいの?なんでそんなに無知なの?声が大きいし言葉が間違ってる。
昨日私のパソコンはRの文字 ....
肌を剥き
熱を忍ばせたら
恋になるとでも思っているのか
あの人なら
触れずとも
私を炙る
腐るぐらいに
抱えるほどに
桃を買って
浴槽に投げ入れる
熟れながら
毛はかたく
肌にするどい
桃とわたしの内側は
べたべたしてきている
何かが失われようとしている。いつも、常に。移行する状態のなかで。いくつかの物事が同時進行的に失われていく。
落下した車両の撤去も済まぬうちに鉄道は再開する。ニュースは技術の盗作を騒ぎ立てる。 ....
意識の断片が浴槽に張り付いていて書き終わったら全てが水の中にあるといいなと思う。
キャベツむくとき
裏がわの水分があるでしょう
それをすくいとるように
いつも触れてくれた
あなた
晴れわたるほど影は濃く
それにかくれて口づけた
陽のもとでなく
影の落ちる場所に恋はあったね
ながい柵があり
(たとえばそれは
夜だったり朝だったり
場所だったり人だったり
あるいは思想だったりするけれども)
ともかくながい柵があり
内側というのは
どちらですか
檻 ....
きのうは
鯛や牛肉をたべ
上等の酒をのみ
なめらかな衣服で
わらっていた
わたしが
三秒に一回
情事を思い出すことが
いけなかったとは
思わないけど
その考えが
救済のように思え ....
おどろくほど小さな空間におさめられているわたしの心臓
鞄ひとつの荷物も滑稽におもえるほどに
それが
あなたの腕のうちにあって
はじめて機能するなんて
わたしがいつでも捨ててもいい ....
扉を開けると夏が直角に立っている午前。
明石を経ち、埼玉を経て岩手へ、の途中で気仙沼に寄り、盛岡を折り返し仙台を通りまた埼玉へ帰って来た。明日また明石へ帰る。新幹線で。夫と。行きよりも増えた荷物 ....
たぶんあのとき
奪って逃げなかったのが
答えだった
ぼくのなかの
ぼくたちの
晴れた日で
季節が傾いて花は咲いていた
たぶんあのとき
立ちすくんだことが
答えだった
わ ....
梅干の転がる先の卵焼き
群青の布引いて気持ちだけ海
雨の日の青菜は少しだけ薄味
のり弁の日はいつもよりいいお茶で
蓋をするときのひそかな緊張感
影の濃くなる季節には男物のシャツを着て立っていた君
アスファルトさえ色づいて騒がしいから両の耳ふさぎたくなる
日に一個積む諦めの白々しくかがやく三百六十個目
いまでも死にたくなるけど
それにはそれなりの元気がいる
動脈を切るのも、錠剤を用意するのも、ロープをかける梁をみつけるのも
けっこうな重労働だ
死にたいひとは死ねばいいよ
応援しないけど ....
むかし
愛されたら世界が変わるとおもっていた
愛し合うのは
ひとつになることだとおもっていた
でもぜんぜんちがった
愛されるのは
自分は世界にひとりしかいないと思い知ることだっ ....
自分とはぜんぜん似ていないものを あつめて暮らす 花とか夢とか
ちか道を知っているけどおしえない 君との時間が縮まるようで
はえ際に濡れるうぶ毛を ひそやかなものにたとえる ばれないように
百年が経てば僕たちも街も無くなることだし 遠まわりしよう
....
ドーナツの 真ん中の食べかたを
かれは知っていたよ
そんなところが
たまらなく 好きだった
あなたを手に入れようとおもったら
あなたの妻や
あなたの妻の膨れたおなかも手に入れようとしなきゃならない
それも、
手に入れられるかどうかはわからないままに
あなたが慈しむあなた ....
なんでも持っているひとっていいよね。
と、友人が言うので、
たしかにそうかもしれないけど、なんでも持っているひとを見たことがない。
と、返した。そうしたら、
あなたは、なんでも持っているじゃな ....
魚焼き網と食器桶をハイターに漬けて、便器とあらゆる排水溝にそれ用の洗剤を流し込む間に、うちじゅうの床を拭く。鏡とテレビとパソコンの埃を柔らかい乾いた布で磨いたあとで、便器とあらゆる排水溝とハイター ....
ひとりじめする贅沢と
分け合える幸福
ナナ、ぼくたちは、
ひとりでは幸福になりにくいみたいだから
壁の白さに飽きたら
青空のしたに降りといで
ナナ、
世界は用意されて ....
グレープフルーツ搾るなら
男の子つれてきたってだめよ
女の子を抱くような強さでね
って
言ってもわからないでしょう?
カレーにかびが
ういていたので
かきまわして食べた
わたしは
いったい
どのくらいのかびで
出来ているのだろう
セックスのあと
べたべたしたキスをくれる男よりも
冷えたビールを寄越す男のほうが好き
もしそれが
火傷しそうに香るコーヒーだったら
きっと愛してしまう
セックスの前に
愛を口にする男 ....
靴はかるくて
空は青色
人もまばらな
枯れた海辺で
飴玉がわりの太陽を
半分こして舐めながら
横切る不幸を指差して
かなしい色を
指にともして
柔らかい絵を
ふたりで描 ....
いくつもの賭けをした
あの坂道を
はやくのぼりきった方が勝ちだ
瓶入りのコーラを賭けて
角の犬に吠えられたら負け
一杯の牛丼を賭けて
先に恋人のできたほうが勝ちね
きれい ....
何度もおもいだす
何度も何度もくりかえし
手首のあたりにあるうすい火傷のあと
ささくれた働き者の指
左がわの耳たぶに指すピアス
くるぶしの刺青
うすい無精髭。
(わたしはむかしあなた ....
真昼間に
なんの不満もなく
とつ然死にたくなるんだ
晴れた日に
ささやかな痛みをいつも
道端に捨てているんだ
ごみ箱には
いつもそんな取るに足らない悪意が紛れているんだ
....
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