スクランブル交差点の真ん中でひとり
ちきゅうにやさしい
すき焼き・しゃぶしゃぶ食べ放題
四人様からお願いします
と店員さんには言われたけれど
自分の養わなければならない細胞の数を ....
シロツメクサが燃える
その灰で僕は
無色の麦藁帽子を作った
誰も許してくれないから
まだ駅のロッカーにしまったまま
身体が長くなる
そんな様子を目視できる日々があった
僕 ....
夏至は過ぎた
バッタが叫ぶ
長椅子の陰で
低地の王国には
車のエンジンが
冷たいまま飾られている
産卵を終えて
ジェット機は行く
もうそこを
誰も空とは呼ばな ....
小さな虫を追いかけて
少年がどこまでも走っていきます
窓の内側でも外側でもなく
ガラスの中に広がる草むらを
何も持つことなく
私はいったい何時
ガラスの中から出てきたのでし ....
電柱の傍らに
人が立っていた
面接官、と書かれた名札を
首からぶら下げて
前を通り過ぎようとすると
採用です
そう告げられた
面接官は去り
替わりに名札をぶら下げて ....
消しゴムを食べていると
母が気を利かせて
夏みかんのジャムを持ってきてくれた
消しゴムなど食べられるはずもないから
いらない、と断ると
代わりにコーヒーを入れてくれた
....
壁に壁の絵を描きます
そのうちにどこからどこまでが
本物の壁かわからなくなります
途方に暮れていると
ゴミ収集車が最後のゴミを積んで
走り去って行きます
わたしはあれには乗れま ....
椅子と椅子の隙間から
右側だけの手紙を書きます
今日は洗濯物を
たくさん畳まなければならないので
表札はきれいに外しておきました
見えるだけの郵便局の前から
鳩の歩く音が聞こえて ....
窓辺に飾られた
一輪のチューリップが
ひとり言をしている
叶えられなかった夢について
叶えられた些細な願い事について
自分がここにあることの意味について
そしてその無意味さについて ....
眠りすぎたアルマジロが
夜、買い物に出かける
満月には人のロケットが
数本突き刺さって
何かをお祝いしている
店は既に閉まっているので
丸まって待つ
冷蔵庫の中のように寒いけれど
....
魚屋の片隅にあった目薬を買う
お店の人と角膜や水晶体等について
少しだけ話した
すぐ側で魚介類はそれぞれに
幸せそうな形で整然と並んでいた
それから帰りの駅ではお腹が痛くて
膝 ....
鉄鉱石の中にある海を
小魚が泳いでいく
夜の明けない方に向かって
今日は海が重すぎるから
いつまでたっても
カモメは空を飛べない
そしてわたしは
シャボン玉の作り方を
....
ピキは犬ではないのかもしれない
犬だと思ってドッグフードまであげていたのに
買ってきた犬図鑑に載っているどの犬とも
その形状は一致しない
図鑑の犬はすべて四本足なのに
ピキは六本 ....
クランクを回す
上りのエスカレーターが動き出す
人が乗る
負荷がかかる
乗る人の数は徐々に増え
更に力を込めて回す
見上げると人が
下りのエスカレーターを待っている
上り ....
深夜、電話が鳴っている
誰もいない、何もない
とても遠いところで
そんな気がして目が覚める
電話はどこにも見つからない
安心して再び眠る
夢の中で電話が鳴る
受話器は ....
国道16号線を走る
千葉44km
渋滞に巻き込まれる
千葉42km
千葉40km
ゆっくりと近づいていく
千葉30km
千葉4km
もう少しだ
そう思って ....
紙に押した自分の指紋で
迷路をしなければならない
広い会場のような所にわたし
そして試験監督みたいな格好をした人
二人だけで向かい合って着席している
何度やっても
わたしの指紋 ....
待合室のソファーで
男の人が傘を差していた
空が見えないから
屋根に気づかなかったのかもしれない
名前を呼ばれ
男の人が立ち上がった
傘を丁寧に閉じて
今日はひどい雨ですね、 ....
お店屋さんで息をした
お店屋さんだから
みんなしていた
様々な形が売っていた
気に入った色があったので
近くにいた店員の女の人に
色だけ買えるか聞いた
形もついてきます
....
少年が電話の凹凸に触れているころ
少女はまだポストの中で
封筒から漏れてくる潮騒を聞いていた
すべてが終わったら、
横断歩道をきれいに塗りなおそう。
町中いたると ....
水の途中
眠れない夜のために
わたしの棒高跳び
細胞壁の間をすり抜け
背面から着地する
床のキッチン
床だからキッチン
冷蔵庫の脇でうずくまり
スイカ、美味しく冷 ....
小豆色のバスに乗る
車体の気配があまりしないバスだった
既に乗っていた人たちは
みんな別々な方向を見ているのに
誰なのかよくわからない
信号待ちをしている間に
道端の枯れた草花 ....
むかし男の人が死んだ公園で
山岸徹也くんと砂の城をつくった
歯ブラシが近くに落ちていて
それはとても古い感じがした
城門に番兵の人形を二体置いた
翌日、城は壊されていた
人形は ....
耳が遠くなった
もう手が届かないところまで
痒くても
かくことすらできない
耳は更に遠くなっていく
遠くなるにつれて
聞こえるようになった
知りたかったこと
知りたくな ....
これから結婚について書きます。
その前に男性側の視点であることを前提としなければなりません。
何故なら私が男だからです。
女性側からの視点で書くことも不可能ではありません。
....
亀のレストランに入った
亀たちが食事を楽しんでいた
メニューにあった
「亀肉のソテー○○○風」
(○○○が何であったかは失念)
を注文した
料理名の下には
不慮の事故で死んだ ....
掌に雨が降る
小さな水溜りができて
魚たちが泳ぎ始める
両方の手で精一杯の
くぼみをつくる
それでも水や魚は
溢れ出してしまう
途方に暮れているうちに
いつしか雨は ....
おでんの中を艦船が航行する
デッキから若い水兵が
手を振ってくれる
大根とはんぺんが好き
牛スジは入れる習慣がない
ガンモは好んで食べないが
無ければ無いで淋しい
こ ....
道路を丸めて食べる
どうしたら草の音みたいに
生きることができるのだろう
曲った色鉛筆
間違えないように覚えた言葉
値札の無い指の軌跡
並べることばかり
いつの間にか上 ....
長いものに巻かれている
とても柔らかな
マシュマロに腰を掛けて
呼吸に合わせて
長いものが少しうねる
今まで大切な人と
大切なお話をしていたはずなのに
もう残りものの空し ....
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