行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた
振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる
今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている
「いつも利用する ....
冷蔵庫を背負う
重くて温かい
海のようなものが
背中から体の中へと
伝わってくる
夏休みを終えて
少したくましくなった
児童たちの声が
外の方から聞こえる
かつてもこうし ....
厳格な王様がいた
優しいお姫様がいた
富める者がいて
貧困と差別があった
内外で争いがあり
子どもたちは時々
壁にもたれかかって
よく笑った
忘れる人がいたけれど
同じように
....
木陰で体温の
呼吸する
と、内と外とが入れ替わり
境目に懐かしい
わたしのかたまりがある
施設の人と集配車の運転手が
簡単な口論をしている
近くのベンチで関係のない
小柄な男性が ....
犬が休んでる
まるで僕のように
背筋が足りない
何かを継ぎたして
少しずつ毎日の
起立がある
どうしてだろう
お父さんになってしまうのは
瞬間は確かにあるのに
どんなに積み上 ....
落っこちてる
わたしの心を拾い集めて
lonely heart
大好きなあなたに会いに
電車に乗るわ
高鳴るこの胸のときめき
きらきらして
あの頃のわたしたち
きれいだ ....
冷やし中華が
静かに終わった奥の方
特別なこともなく
人をまたぎ
人にまたがれ
狭い柄模様のシャツが
時々きれいだと感じられた
入口の貼紙には
かつての文字のようなものが書かれ
それ ....
寝台車の匂いが
掌にする
腕はまだ
距離を測っている
残されたものを集めると
骨の近く
きしきしして
初めて靴を買ってもらったときの
恥ずかしい喜びしか、もう
いらない
....
老廃物と手をつなぐ
せつないから
死んでるようだ
見たものが
足元で花になり
ピアスでしたね
初めてのプレゼントは
初めてでしたね
はがれていったのも
見送ることは時々
見送ら ....
砂丘に洗濯機
ウィリーは素朴
上手に筋肉
そのまま届きそうになり
春子、帰宅
ジャングルジムから
人の匂い
道路は名前
生きることは
重力の淋しい過程である
という前提にたつと
....
ポケットが汚れ始めている
待合室は朝から眠たい
何かの整備工の人が
口を動かしている
語りかけるように
沈黙を選ぶ言葉があった
目を閉じようとすると
少しばらばらになる
水が優しい濃度 ....
やさしみの
さかなが
しずかに
みなもをおよぐ
やわらかな
さざなみは
しあわせなきおくを
みたそうとする
やきつくされたあさ
さいれんがなりひびく
しきはまた ....
はさみ
兵藤ゆきより
大きなはさみを
買う
ポケットには入らないので
背負って
帰る
兵藤ゆきですら
背負ったことないのに
道が市街地に向かって
少し車で混んでる
子供の頃
兵 ....
木陰に砂糖菓子のような
駅をつくって
少女は列車を待ってる
関連づけられるものと
関連づけられないものとが
交互に、時には順序をかえて
やってくる
皮膚に触れば
それは風のことだと ....
午前、すべての音を忘れ
掌からこぼれていく
ものがある
極東と呼ばれる
工業地帯のある街で
あなたは忘れられない
いくつかの日付をもち
数えながら折る指に
僕は気づいてはい ....
51
手に速度が馴染む
坂道は距離のように続き
俯瞰する
鶏頭に良く似た形の湾に
昨晩からの雪が落ちている
ポケットに手をつっこめば
速度はあふれ出し
また新たな速度が生成され ....
庭に雑踏が茂っていた
耳をそばだてれば
信号機の変わる音や
人の間違える声も聞こえた
ふと夏の朝
熱いものが
僕の体を貫いていった
雑踏は燃え尽きた
かもしれないが
庭 ....
41
市民会館の大ホールを
ゼリーは満たしていた
屋外では雨が
土埃の匂いを立てている
観客の思い浮かべる風景は
みな違っていたが
必ずそれはいつか
海へとつながっていた
....
31
世界が坂道と衝突する
アゲハチョウの羽が
誰かの空砲になって響く
内海に
大量のデッキブラシが
投棄された夏
遠近法のすべてを燃やして
子等は走る
....
21
カレンダーを見ると
夏の途中だった
日付は海で満たされていた
子供だろうか
小さな鮫が落ちて
少し跳ねた
恐くないように
拾って元に戻した
22
フライパ ....
11
ジャングルジムの上で
傘の脱皮を手伝う
またやってくる
次、のために
海水浴の帰り道
人の肌が一様に湿っている
12
ピアノを弾くと
鍵盤がしっとり ....
「序詞」
ゆりかごの中で
小さな戦があった
理不尽な理由とプラントが
長い海岸線を覆いつくした
けたたましくサイレンが鳴り響き
その海から人は
眠りにつくだろう
....
雨やみて雲雀の飛んだ水たまり
何を見て驚いたのか鯉のぼり
紫陽花がたくさんのいろ人みたい
桃をむく香りと北へ寝台車
空目指し向日葵たちが背比べ
アリが来てわたしの足を ....
光合成が不得意の僕らにまた夏の陽が降り注ぐだろう
屋上のベンチに座り互いの塩分濃度を確かめ合った
生き物の忘れていった生ものが機体の上で腐りかけてる
メデューサが美容院に ....
バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて
席に座り
バスの一番 ....
玄関に傘が一本
ギロチンのように
あった
昔こんなもので
人が酷い目にあったのだ
と信じられないくらいに
静かな朝だった
やがて傘は
扉を開けると
仕事机のような格好にな ....
水底に
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の ....
キリンは新婚カップルの取材を担当した
ツルとカメは生き証人として
動物園の歴史を書いた
シロクマは環境問題に
ゾウは動物虐待の実態に
鋭い論調でメスを入れた
羊たちは眠れない子供のために
....
静かな言葉に騙されて
武器を売り続けた
いくつもの春を泳ぎ
疲れれば
もの言わぬ記号に似ていた
河口に人の死体が流れてくる
知らない人ばかりだった
知っていたとしても
....
一年ぶりにルゾンに行った
エリーはまだいた
胸元の開いた黒いドレス
すっきりと鎖骨があった
その間からはるか遠く
エッフェル塔が見えた
エリーは携帯で撮った
子供の写真を見せてくれた
....
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