順々に
液状の名詞が
格子に垂れてしたたる
世界のおおよその大きさが
張られている 複数の 頭蓋
額縁にぶつかり 欠けてしまった
顔のような 意味
....
青空はずっと振るえている
時が かげになって路にこぼれてくる
壁のうえにそっと 黒い木が枝葉を撒く
思うということ
街にいくつも街を重ねていくこと
あなた ....
見えないが それは
熱の蛇が 這っているのだ
かんぜんな 石を湿らせ
なにもかもが黙る
熱の蛇が
這っていくのが見えない
街はいつも 叫んで ....
瞳からのぞくと
馬たちが みえた
日が薄ぼやけ
あたりは冷えて
草の においだけが
ほそながくかがやいていき
わたしたちの
愛はきえた
....
夕方になる
しずかになる
水をのむ
みえているものを
いま 思い出している
喉の奥で きれぎれに疼く
石のシルエット
それは 似ている
....
波が
たちあらわれる
形たちが 昏ませる
黄色いセーターの
喜劇的なふくらみ
勇敢な笑い
あの時の光
花弁がひらくように
ゆ ....
擦られた マッチ
よる 路地のしかくい
たくさんの 白い足もと
物がたる言葉が
網膜に掛かる
引き攣れる
句読点
菜の花を食べて
咳きこんだ
あの日の熱は
そのあたりに置いてある
曇り硝子
ロー・テーブル
けれども 一体どこなのだろう
ぼくはきみを見たことがある
....
東京
透けた卵管が
標識のたかさに浮いて
われらを 孕もうとする
香港
銃声のようにみじかく
中毒のようにながい
発狂が四角に建つ
....
せまい
ことばをつなげた
愛らしきものの
馬鹿らしきものの
井の頭公園
きみからの
電話だけまっていた
かなしさの
退屈しのぎの
....
恋人たちは
ひと夜きりの雨だれ
むなしいヘッド・ライト
路上で きたない髭の男が
犬のように愛をうたっている
さわがしい言葉と いつか記憶に
変 ....
波間で
花びらを
持とうとする
すごい 忘却の速さで
水のように
貴方の部屋にいた
そのことのすべてを
分かろうとするけれど
とても ....
熱を舐める
終電すぎ 汗のすべりが
愛の五月蝿さをおしえてくれる
置いていった本のように心が
かなしくひかる
こんなにも
あなたの
ばかげた
世のなかが晴れていた
ことばが ぼくの目のなかで
すばやく動いて よくは見えない
たいくつな愛のように夜がきてほしい
あなたの胸にいつしか溜 ....
煩い町に
ふれて
僕は 意味のまえにいた
夕がた
本をよんで
考えることを考えて
きみの眼を 思う
押しつぶした 光が
なんどもまる ....
話は長くなる
いくつか 電灯が浮きはじめる
夜 ためらいと苛立ちが覆っている
東京
思考のなかの
昇降するものをもたぬ
階段
道化師 指を剥い ....
躰のほとんどを
ねじれた袋におさめて
わたしたちは泣いていたね
はんぶん透けて
はんぶん凝ったような
美しさ 見えかけの 東京の月
あの時のきみがずっと
ぼくの傍でねむっている
少しだけ、雨の匂いをさせて
笑いながら喋りつづけた
言葉はむなしい闇にのまれた
若く優しいだけでいられた
....
桃を食べていた
指で口をぬぐった
戸が開いて何かがわたしにふれる
液状の 概念じみた何かがわたしにふれる
死んだ後もそこに在るとされるものだ
それは 戸を開け ....
昼過ぎまで 魂をみていた
ローソンに車を停めて
海辺の商店街で
わたしに友達はもういなかった
腐った犬などがわたしの腕だった
わたしの歯が彼らの瞳だった
....
想うと、
その部分はくりぬかれた
むこうからくる
むこうへとゆく
ひかり色のくらやみ
はねかえる 音韻的船旅
オニヤンマたち むこうからくる
毒く ....
錐ひとつ
モダン
モノノアハレノナガレ
錐、しずむ 漕ぐ
水銀的ウッドベース
水銀的ウッドベース
水銀的ウッドベース
刻は 刻を えがいていく
....
まるい
光のとかげ
うしろから頸を締めた
深い 叫びのつぶて
むかしのきみの幻に
許してほしいと上目を遣った
とっくに許されているくせに
....
朝の小石のなかで
眩しい河をみている
春初めの木々 幾つかの色が
わたしの心にさらされる
わたしの心は さらされる
凄いものを ずっと みている
煙草をすって
悲しんでた
きみの唇と
わからない思い
花の葉は にごり、
ふっていた雨はやみ……
永遠に
さびしいだけなんだって
き ....
並び替えた語らが
愛想笑いをしている
竹林
空腹の蛇だった
噛まれた耳だった
おりていく夕闇だった
感じられる前の淋しさだった
吐気がして
ねむっていると
あおい空がみえた
わたしたちは睦み合いつつ
観念の ふやけた泥団子に成り果てていたが
憎しみながら ねむっていると
吐気 ....
滑らかで硬かった
あの日、きみからの言葉は
剃り残しの髭みたいな
滑稽を 愛と呼んで
非常に申し訳ない
悲しさよりも
ひらったい暴力を探す
....
割れた幾何学が
積み上がっていく夕
雨のような寂しさを身にまとうひと
抽斗は
開けられることはないのだろう
無機の
果実
歯欠けの道化師は
朝 マンドリンを焼く
駅前公園で
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
0.34sec.