{ルビ誤綴=ごてつ}された
 この午後の陰を 歩く

 哀しみも慕わしさも
 あなたの唇の{ルビ彩=いろ}で 膿んでいた
 {ルビ端=はな}から鋳込まれていたように
 そこに ここに ....
  風景が振りむいた
  きりきりと ただ一度だけ
  冬の 椀の 上

  木立があった
  冷えた池も あった
  あなたが いなかった

  振りむいた
  震えた 溢れた ....
 わたしたちの 静かな部屋は 青かった

 ポケットに入れた 痛みたちは つぎの日には
 砂にまぎれ、洗濯機ゆき
 やだなぁ。

 {ルビ溢水=いっすい}を 眼にとかして
 わたした ....
 泳ぐことができず 手足を
 遊ばせているだけの水夫
 笑いぐさで

 赤く硬い
 蕾が 夜の上で冷えている
 折り重なった 死の ガーゼケット
 重い目蓋を 持て余していた 沈黙の ....
 亡者に似て言葉たちは
 あおい廊下を徘徊している
 床に雲までもが
 映り 流れていくから
 滑りやすい 廊下
 谷間に
 爆撃のように空が落ちてきた

 カラン、と音がして
 貧しい僕らは 拾いたくて
 枯葉のまえでうずくまった
 青い 空に
 梢がしがみついている
 かなしいことは いつも
 庭の木の柿のようにみのる
 世界の端のほうに 僕は坐っている
 つぶれた靴を
 見ていると雨を思い出す
 ほの明るい 窓硝子のむこう
 僕の心が僕の心に変わっていく
 その間も絶えず 雨は降り続けている
 世界が 大きな空洞なので
 水平線が見えた
 海が見えた

 白い 掻き傷が あるのか無いのか
 どうしようもなく なにもかもが
 影

 倦み果てた貌で
 あなたは 眼に映る ....
 中空にほうった
 ボールが手元に戻ってくるように
 一日が 終わった

 熟れた光が実をつけては
 落ちていくのを
 潰れるのを

 目で 追っていた
 銀の線を引いていく飛行 ....
 魚が数匹
 日の光になって
 頬の上を泳ぐ

 問われては 答え
 答えてはまた 問い
 感情の影に貌をかくして

 問われては 答え
 生まれてはまた 息絶え
 命あるもの ....
 寒いが 晴れている
 中野坂上で降りる

 昼は あんかけ焼きそばにした
 ベンチに腰掛け空とビルを見てた
 流されていく言葉は
 僕の中にあるのか世界の中にあるのか
 そうした問 ....
 何も言わない
 読点のような皿を洗う
 燃え終えた数本のマッチに
 年々似てくる
 僕の記憶

 日をうけて
 影になっていく 木
 振動する沈黙 かなしすぎるほどに
 決して ....
 雨のふる町がカーテンの向こうにあって
 ためらいがちな鳥の鳴声も混ざっていて
 徐々に推敲されている

 テーブルのコップを見る
 書棚の本を見る
 床を見る
 漂う 朝の成分
 ....
 赤い葉が 二、三枚
 枝に残っている

 ここに
 光が建っている
 秋 水辺にいるみたいに
 薄く 目を開けて
 飛沫を 頬に浴びて
 裏口から入ってくる
 ショート動画のような感情が入ってくる
 出来事よりはるかに速い
 もの凄い速さで
 南国の木々が潮風に揺れてた冬の日
 友人に借りた車をコンビニに停めて
 スマ ....
 無害なことばかり話す有害な人
 舌先から 論理が涎のように垂れて
 皺くちゃのスーツに染みをつくる

 キミに足りないのは嫉妬心だよ
 そう言われた 丸ノ内線の車内で
 他人か知り合 ....
 アーケードを沢山の人が歩く
 なにも考えていないときの
 脳内のような光景

 半透明な意識が血管を流れていく
 言葉がダマになってそこかしこで死んでる
 ふと 誰かの気配を感じて振 ....
 蕎麦湯を飲んでいると
 阿波踊りの囃子が遠くなった
 昨日の昼のこと

 投票に行ってから
 「ブロークバック・マウンテン」を見た
 昨日の夜のこと 昔の恋人を夢に見た
 どんな夢 ....
 昨晩 新宿で友人と呑んだ
 バーでは若い男女が
 資本主義の終わりを論じていた
 会計前に女はキスをせがんでいた

 友人は家庭に問題を抱え
 僕は三十七で 家庭を持たず
 僕らは ....
 カメレオンの眼は
 薔薇に似ていなかったかと思い
 検索してみたがどちらかというと巻貝
 今し方 ハヤシライスを食い
 煙草をすい 部屋の暗いあたり
 眺め
 ほつれそうな体 仮初の ....
 谷川俊太郎さんが亡くなられた
 十一月十三日二十二時〇五分 老衰のため杉並区内の病院で

 谷川俊太郎さんが亡くなられた
 この一文はずいぶんと不思議だ
 生や死を超えた感じのある方だ ....
  桜ばながおおいに散り、
  けものたちの背に 描かれた
  わたしは するどい雨になって
  丸ノ内のビルを降っていく
  記憶の 蓋に添えられた 女の髪の束
  俳句のような
  矩形
  プリヴィズの夕日は歪む
  ためらいがちに衣服をぬぐ
  口づけは言葉の数をこえて重なる
  淵にいて
  くるくるとまわった
  すごく晴れてた


  池があった
  水に 日もぼうと浮いてた
  ぜんぶ本当にあった


  淵にいて
  かなしさから
 ....
  おしゃれなRockが
  煙るような音量で充満する
  ビジネス・ホテル 3104号室
  いやな感じだ


  青白い天気図の影を
  カーテンが弾いている
  さっきか ....
  なまこの指に溜まっていく
  季節はうつくしい
  ゴム長靴が 二、三組
  傘もささずに駆け去っていく
  この場所が 貴方の 唇であったなら
  忘れたものだけ
  見ることができた


  床に張った
  埃 夕日の格子型
  蛇口に残る 唇のような水
  言うことができた
  言い尽くしたことだけを


  ....
  約束の時間にすこし遅れて
  寂しさの続きのような場面が始まる
  駅舎の街灯に羽虫が 丸く 集る


  高架下 ラーメン屋に入る
  やがて感情は数枚の貨幣に似てくる
  ....
  日の光の血痕
  かさなった眼が ここにない
  熱い空 道すじをかすれて
  私たちの歌は時間の
  壁の裏におちた
草野春心(1149)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
都市風景文書グループ24/3/23
太陽文書グループ24/3/23
短詩集文書グループ24/3/23
春心恋歌文書グループ23/11/6
コラージュ×4!文書グループ14/4/3
詩の磁場文書グループ12/7/21
投稿作品
誤綴(2025.01.21)自由詩325/1/25 9:16
ラザロ(2025.01.16)自由詩325/1/21 18:55
Overflow(2025.01.09)自由詩325/1/18 21:39
泳げない(2025.01.08)自由詩225/1/16 21:01
亡者(2024.11.30)自由詩425/1/10 22:07
貧しい僕ら(2024.12.09)自由詩3*25/1/9 19:12
梢と果実(2024.12.12)自由詩425/1/8 19:27
自分(2024.11.29)自由詩324/12/19 19:14
倦み果てた貌(2024.11.28)自由詩5*24/12/15 21:17
軌跡(2024.11.10)自由詩5*24/12/14 11:00
魚(2024.11.06)自由詩524/12/10 21:50
宙吊り(2024.11.04)自由詩324/12/4 18:27
何も言わない(2024.11.03)自由詩624/12/2 20:19
雨の朝の推敲(2024.11.02)自由詩124/11/30 22:03
プールサイド(2024.11.24)自由詩5*24/11/28 19:08
速さ(2024.11.01)自由詩124/11/27 20:14
涎(2024.10.31)自由詩424/11/25 20:22
アーケード(2024.10.30)自由詩224/11/24 20:06
昨日のこと(2024.10.28)自由詩124/11/22 19:59
資本主義の終わり(2024.10.27)自由詩424/11/21 19:33
カメレオンの眼(2024.10.25)自由詩524/11/20 22:13
谷川俊太郎さんが亡くなられた(2024.11.19)自由詩6*24/11/19 22:17
剰余、散華自由詩4*24/10/30 22:37
矩形自由詩2*24/10/30 22:36
淵の話自由詩324/5/14 20:39
現代的な死自由詩3*23/12/28 22:55
なまこ自由詩423/12/28 22:48
果物籠自由詩1123/11/14 18:18
羽虫自由詩523/11/6 22:51
lensflare[group]自由詩823/10/30 21:44

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