少年の 碧い心音が 秋桜の花束と 共振するから
ほろほろと 崩れゆく 夜の輪郭を 掬いとる指に
まとわりつく記憶は 水彩の淡さで かなしく
けれど窓の遠くに 群青の塔群が 絶え間なく
銀の月と ....
花びらのような
スカートを纏い
その指で散らして
欲しいと願う
胸の鼓動を
キュンと早くする
苺が潰れて
しまいそうなほど
甘酸っぱい時を
口に含んだ
白い吐息が
運ばれ ....
フワフワとユラユラと
なんでも受け入れる
丸い心と四角い体
優柔不断と紙一重
思いめぐらす夏の空
待ちわびる秋の空
突き刺す声と冬の空
凍 ....
暮れて行く秋
まつすぐな道
銀杏の葉のそよぎ
感じてごらん
たつた今うしなはれた
いくつもの命の分だけ
透けて行く風を
たつた今うまれた
いくつもの命の分だけ
....
高跳びで超えたバーの向こうに
約束を交わす空があったこと
孤独な大地を蹴り上げる足は
記録よりも記憶に残る顔が
いつもそこにある会心のジャンプ
見せ合う度に燃える心臓が
入れ替わる ....
静かさ
静かさ、といふ音があると思ひます。
秋の夜長、しをれかけた百合を見ながら
静かさに耳を傾けます。
{引用=(二〇一八年十一月八日)}
....
わたしを測るものさしと
変わらないリズムで過ぎていく日々
この二つが欠けてしまったら
わたしはどうなるのだろう?
毎日何度もわたしを測り、確認し
毎日同じリズムで過ごす
わたし ....
離れていくこと怖くはないよ
少しだけ嘘をつくのが
自分に掛ける最後の魔法だ
気付いてるでしょう同じ気持ちを
伝え切れなくて隠れた星のように
輝いてないと見てくれないのね
側にいるよ ....
だるまさんが
転んだ
そこにいたはずの
みんなが消えた
時の流れに
目を瞑りながら
眠ってしまった
呼吸を残して
戻っては来ない
人の足跡を
散りゆく落ち葉が
埋めていく ....
命を頂いて生きている
だから頂きます、というらしい
けれどそれはそんなにありがたく
罪深いのだろうか
鶏が産み落とした精の無い
卵をいくつも使ったケーキは
悪徳の味がするのか
命を失った ....
風の向きが変わってきました
感じる温度も変わってきました
香りも変わってきました
それは朝の空気に飛び込んできました
鼻から吸い込み気管で感じました
今ま ....
古ぼけたオルゴール
今じゃどんな音楽を奏でていたのか
誰も知らない
時代に取り残されて
ホコリまみれになった君は
わたしによく似ている
今のわたしに
必死にしがみついていた
で ....
みたこともない
みなみのくににむかって
いっせいに とびたつ とり
ないかもしれない
あした にむかって
ゆめを 放つ
たどりつけるのかどうか
じつはわからない
ふゆのむこ ....
今、一度だけ
あなたにサヨナラを言う
そして深く眠りにつくの
あなたは淋しそうに
でも優しく笑って
わたしにサヨナラを返してくれた
どうせまた会えるのだから
お別れの時間は短くて ....
怒れば父に似ていると言われ
黙っていれば父の父に似ていると言われ
笑っていると母に似ていると言われる
母方の田舎には老人ばかりで
外を歩けば何処のもんやと
わらわらと集まってきて
ほお、ほ ....
光る宝石を身に付けた時は
それより輝く命を見逃す
一瞬の煌めきの中で揺れる
原石を持った人の夢だから
重たくて軽い口笛を吹くと
眩しい世界へ届きそうになる
真っ白なノートを開いただ ....
真っ白なノート
予定も何もない
一文字目を書くのは
さぞ緊張するだろう
まだ何も書かれていない
新品のキミ
わたしはキミを汚しながら
明日を生きていくんだ
いい友達にな ....
常夏の陽が波にとけ
波の子生まれ遥々と
この島国へ流れ流れて
夏を運んで、春を流して
波の子ゆすら
ゆすら、すら
鰯の群れや鯨の髭を
気ままにゆらし
ゆすらすら
浜辺に埋め ....
白鷺が
橋の欄干に立つ
切り取られた
わたしの
瞳のひかり
羽ばたきが心を
さらいゆく
橋の上の肉体は
ただわたしを見上げて
心ここに在らず
遠く遠く浮遊する
時すらも置 ....
箸よ、おまえは美しい
未熟な身体で生まれ
生死の境を漂っていたわたしが
ようよう生にしがみつき
お食い初めをしたという
小さな塗り箸よ
遺品整理をした
そのときに
うやうやしく ....
誰に語るということもない
老いた人の呟き、そこに何があるのか
そこに道がある、人の来た道がある
ふたりの兄は死んだ、戦さで死んだ
だから戦地に送られなかった
兄たちは勉強が出来た、友人が多か ....
『何かが足りない』
探しても探しても
『何か』が分からなくて
満たされない心は
空っぽのはずなのに
わたしの身体は日に日に重くなる
どうしてだろう?
いつ落したのだろう?
....
バスには乗り遅れてしまった
あこがれも置き忘れ
古びたベンチで一人
溜息をつく
それでも天を見上げて
両手を差し伸べる
なぜだろう
夢は終わったのに
と ....
崩れそうになる
ひび割れた心
あなたの言葉が
唯一の接着剤
偽りの言い訳でも
聞かせて欲しい
唯一の言葉で
埋もれた一粒の麦のことを
考えている
踏み固められた大地から
顔も出せず
根をはることもなく
暗澹とした深い眠りのなかで
郷愁の念を抱いているのか
夏天に輝く手を伸ばし
希望の歌が ....
けだもの
ひとの声がする
空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に
やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする
《祈りなさい ....
霧のつぶが
ここらに留まっている
セイダカアワダチソウが
しっ
と立ち尽くしている
秋は秋でさみしいから
オルガンを弾く
幼き
亡き王女に寄せたこころを
いつまでも
....
すべて消えてなくなればいい
想いも 愛も
淋しさも悲しみも
ここにいたという軌跡さえ
波にさらわれてしまえばいい
a dream
誰にも知られずに
消えて行く私の言葉たち
....
羽
とんぼが旗竿の先にとまつてゐる。
セルロイドのやうな羽の一枚が、半分切れてゐる。
緑の縞の入つた黒い胴を一定のリズムで上下させ、三枚半の羽を震はせながら、とんぼは ....
毎日見ている通りの街並み
その変化に気づいていない
今の景色を目蓋のシャッターで留め置いて
昔の景色を見るチャンスがあったら気づく
こんなに変化しているのに
....
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