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夜になる
部屋の中にカラスがやってきて、出口を求めて飛び回る
壁紙はズタズタに破れ、床には一面黒い羽根が散乱し、白壁には至る所に血痕が見え隠れしている。
壁面の古傷はとうに変色してドス黒 ....
1.
沈んでいく午後の窓辺から、ひとつ夕暮れが生まれる。ぽつ、ぽつ、家の明かりが灯っていく。街は林檎を落としたように熟れていて、傾いていく日差しの中にあってその景色はとても懐かしく感じられ ....
眩しすぎた広場では
落ちぶれた浮浪者の
座っているベンチの
その裏で
捨てられた仔犬が
母親を探して
かすれたか細い声で
鳴いている
お腹、空いたのかって
落ちぶれた浮浪者が ....
そうだ
高いところに行こう
プラットフォームへと続く階段の上から
地面を見下ろしながら
唐突に思った
何故かは分からない ただ
今、どこにも行く宛がない
未来への進路は絶たれたし
....
遠く、鳥が鳴いている
意識は一歩一歩夜に近づいていく
遠く、母が鳴いている
風に揺られて木の葉が騒いでいる
耳の奥の会話が言葉を奪っていく
私がベッドの上で窓の外を見ていると
母の顔をした ....
振り返れば、蒼ざめた空
眩しすぎる光が、あたしを責める
光が、眩しすぎる
5年もの歳月
あたしはずっと
ひとりぼっちで
部屋のなかで暮らした
外に出ることは極稀で
....
一人でウォークマンを鳴らす。
賑やかな教室から逃げる。ウォークマンを引っ掴んで。
休み時間になると決まって屋上に忍び込み、赤錆びでザラついた柵の
隣に捨てられた小汚いパイプ椅子に座り、ウォークマ ....
電車の窓の向こう側の、外の風景のその先
右から左へと過ぎ去っていった心象の中に
少年の頃の自分が口をパクパクさせて泳いでいる
僕は餌なんか持っていない、それなのに
少年の頃の自分が口をパクパク ....
ブーツの中の夜がゆっくりと足音をたて、落ちた
爪先の薬指があるべき方向を差し示し、
質量を伴って引き寄せられる 闇の中へ
あるべき姿を見失った自身の影は、
どのようなラインを描くべきなのか ....
記憶は左から右へ過ぎ去り
流れる雨に歪んだ街並みは
僕の黒い顔を窓に映している
暗い路地にぼやけた蛍光灯は
6等星にすらなれなかった
歩道を照らす銀色の光達
僕達は何処へ行くんだろ ....