秘密の宝石箱はもうすっかりぶちまけてしまった

どうせみんなまがいもので
いちばん高級なやつでも貝パールに過ぎなくて
いちばん安っぽいやつはきらきらするキャンディの包み紙で
そもそも宝石箱自 ....
もしかしたら私は
口にしていいのかも
俯瞰したようだ
街並みである
硝子だった
観葉植物である
イキモノかもしれない
混ぜてある
というのは嘘で
風はある
風だけはある
ほかはみ ....
窓にノックの音がする
こんな寒い夜更けにやってくるのは
あいつしかいない

上着を羽織ってベッドから出る
夫は眠りこけているいつものように
かすか
とはとても言えないいびきをかいて

 ....
其の人は南洋にゐた事があつて
だから私は其の人を思ふ時
まづは珊瑚礁の島々と
南の海とを腦裏に描いてみる

南洋の風物は鮮やかで
翡翠の海に{ルビ屹度=きっと}
色とりどりの ....
幾重にも入れ子になった
夢の物語のひとつで
旅する人々が歩いてゆくのを見た
真冬の草原に鉄路が走っていて
旅をしない人々は
白茶けた駅でいつまでも待っていた
旅から帰る人を待っていたのか
 ....
ふと気がつけばあたりはきわめて複雑で
ちょっと説明のしようがないんだが
とにかく私の左胸ではトビウオが騒いでいる
右手にはねっとりべっとり蜂蜜がついている
左手にはお定まりの手錠で
ここらへ ....
 1

少女は夕暮れにオルガンを弾き
聞き覚えたメロディを拾う
不安定なコードで単調な伴奏を繰り返し
遠い歌声に耳を傾ける

暗い森の奥 澱んだ沼の畔
彫刻のように動かぬ蟾蜍 ....
窓辺にトックリバチが巣をつくった。
なめらかな曲線を持っていて、
微妙な色彩のだんだらで、
それは見事な造型だった。

だから毎日眺めていたのだけれど、
いつしか忘れてしまった。
役立つ ....
そういや私が最初に「たもつ」なる名前に目をしたのは、考えてみたら「醤油」を読んだときではなかった。

某PJでレビュウに値する詩を探していた私は、幼いが鋭い何かを感じさせる短い詩「さめ」に注目した ....
幼かった私たちは
この蝶をヨツアシチョッチョと呼んだ。
今はもうそんな幼稚な名では呼ばないが。
私たちは誰も大人びた名称を知らなかったのだ。

でも私たちは知っていた。
昆虫は六本脚という ....
昼休みの中学校の教室に
セセリの群れが舞いこんできたことがある。
女の子たちは気持ち悪がって騒ぎ
男の子たちは争ってつかまえた。

鱗粉は毒だと言われていた。
茶色いし羽根の閉じ方が普通の ....
さびしい秋の夜の
さびしい田舎の
さびしい家の
さびしさが

さびしさのあまり
ちいさく凝って
足をはやして
ひょおんと跳ねる

さびしいね ひょおん
さびしいよ ひょおん
そ ....
闇が鳴いている。
ねっとりと濃厚な闇が。
手をひたせば
指先を黒く染めそうな闇が。

美しい声ではない。
金属的な声だ。
こすりあげる声だ。
痛い声だ。

闇が鳴いている。
明確 ....
見つけるたびに
ひいふうみいと星を数える。
間違いなく二十八あるから不思議だ。
一個足りなかったり多かったりはしない。

二十八の星を数えたら踏み殺す。
だって連中は茄子の害虫だ。
連中 ....
近くの小学校から
家路のメロディーがかすかにきこえる。
むくどりが騒ぎながら巣に帰る。
そろそろ帰ろうと思って土手に登る。

いつも歩く河原の
何度も踏みしめた砂地。
そこに蟻地獄がいる ....
真冬の風に押されて入る
どこか樟脳くさい昆虫館は
暖房でひどく乾燥して。
こんな昆虫館には必ずいる。

この大物を忘れたら
昆虫少年たちが怒るものね。
確かにすばらしい虫だものね。
あ ....
天井に赤い足跡。
てんてんと増えてゆく。
猫のそれよりもすこし大きい。
足跡をつけてゆく生き物の姿は見えない。

ダブル・ベッドの上のふたりは、
そんなことてんで気づかない。
見逃された ....
ちっちゃくて硬い。
鈍色にくすんだ鉄のかけら。
美しい鳴き声は持たない。
美しい模様もない。

田舎の物置の
米ぬか臭い片隅で
ただ生きてゆくために
もぞもぞと生きている。

生の ....
見た目はパッとしない。
目立たない。群れない。
硬そうにみえてそうでもない。
脆いかというとそうでもない。

灰だか茶だか緑だか色曖昧な身体には
何のためだかツノがある。
これがまた雄同 ....
晩秋の土手です
枯草を焼いている人がいました
深い空に
白く見える遠い穴がひとつありました

気がつくと指がべとべとするもので汚れているのでした
甘いような気持わるいような香りが流れ ....
烏瓜が真っ赤に色づき
葛の葉っぱがみんな枯れ
桑の木がセミヌードになるころ
カマキリは生きながらに枯れる

雄を食ったのは晩夏で
そんなものとっくに消化して
それでもまだ冬がこないので
 ....
いまはもうない家の
いまはもうない裏の畑で
空いっぱいに舞っていた
アキアカネ。

物干し竿に 洗濯物に
それをとりこもうとしてる母の髪に
それを見ている私の肩に
アキアカネ。

 ....
おそろしげなる{ルビ杣人=そまびと}の
十人かかりて動かせぬ
切り倒されし杉ありき
杉と契りしむすめごが
赤き襷をきりと締め
えいやと綱を引きやれば
やれかなしやと大杉は
するりするりと ....
海底深く沈むというその都市を
あなたはルルイエと呼びました
それともそれは
ル・リエーだったかもしれません

その名の発音さえ定かでない都市の
おそらくひどく冷たいのであろう
石造りの歪 ....
ふんぐるい・むぐるうなふう・くとぅるふ・るるいえ・うが=なぐる・ふたぐん、

呪文を唱えて、
銀の鍵で夜空の門を開けば、
きっとあなたに出逢うことができる。

たとえば遙かな時間の影の向こ ....
印を結ぶまでもなく
彼のものを召喚するまでもなく
すでに定められていたらしかった
パルプの汚泥で黒ずむ東海の海辺に生まれ落ちたとき
太陽と水星はともに宝瓶宮にあった

あるいは優しい人びと ....
以前やませば(山田せばすちゃんのこと)とメッセで話していて、たもつさんの詩とやませばの詩の違いは、たもつさんのほうがマジメそーに見えることだと私は言ったが、よく考えればちょっと違うな。やませばの詩には .... 1.

洞窟は亜硫酸ガスに満ちている。
酸素濃度計は警告の悲鳴をあげ続け、
俺のマスクは目詰まりしている。
俺が生きているのはどうやら奇跡的なこと。

俺を拒み人間を拒む洞窟世界で、
 ....
身体に七つの穴を穿たれたので死んだときいた それが誤謬とも誤伝とも思えなかったが 顔のないままにあのひとが俺の前にいた まさか千と千尋のカオナシに触発されて生き返ったわけじゃあるまい とは思うのだが  .... ばくばくと奇妙な声で嘆いて八つ足は怯えて。

八つ足が食い散らかした誰かの足。
腕を伸ばして拾い集めるとどこかで呼子が鳴る。
あれが合図なのだとしても、
立ち上がることはできない俺には足がな ....
佐々宝砂(882)
タイトル カテゴリ Point 日付
秘密の宝石箱は自由詩3*03/12/1 5:22
もしかしたら私は自由詩103/12/1 0:42
あいつとわたし その1自由詩2*03/11/28 21:20
石となりし人に自由詩3*03/11/28 16:23
旅する人を描く人を恋する人を夢みる人の恋唄自由詩203/11/28 2:20
ふと気がつけばあたりはきわめて複雑で自由詩103/11/28 2:12
遠いひと自由詩403/11/25 21:03
トックリバチ(百蟲譜12)[group]自由詩103/11/25 21:00
たもつ家のほうへ — たもつさんの詩の印象 2 —散文(批評 ...603/11/25 20:47
ジャノメチョウ(百蟲譜11)[group]自由詩603/11/21 23:46
イチモンジセセリ(百蟲譜10)[group]自由詩403/11/21 23:43
カマドウマ(百蟲譜9)[group]自由詩303/11/19 17:53
キリギリス(百蟲譜8仮題)[group]自由詩203/11/19 17:18
ニジュウヤホシテントウ(百蟲譜7)[group]自由詩203/11/19 17:07
カゲロウ(百蟲譜6)[group]自由詩203/11/18 5:19
ヘラクレスオオカブトムシ(百蟲譜5)[group]自由詩203/11/18 5:18
ダブル・ベッド自由詩203/11/16 17:40
ゾウムシ(百蟲譜4)[group]自由詩403/11/16 17:39
ツノゼミ(百蟲譜3)[group]自由詩203/11/15 1:46
香り自由詩203/11/15 1:45
カマキリ(百蟲譜2)[group]自由詩203/11/13 22:01
アキアカネ(百蟲譜1)[group]自由詩603/11/13 22:00
ひきてゆかしむ[group]自由詩403/11/13 5:19
海辺の散歩[group]自由詩203/11/11 22:34
愛の技巧[group]自由詩503/11/11 22:29
ハスターの僕[group]自由詩303/11/11 22:26
失われた醤油を求めて — たもつさんの詩の印象 1 —散文(批評 ...703/11/8 15:21
白熱 リバース[group]自由詩503/11/8 12:30
白熱 サイドA[group]自由詩103/11/8 12:29
[group]自由詩1*03/11/7 11:14

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