私は知っていた
この部屋に積もる埃全てに意味があることを
皮膚をかきむしってもかきむしっても
私の皮膚がぽろぽろとこぼれるばかりで
わずかに血がにじむだけであることを
睡眠薬の眠りは決して
 ....
南西からの風が荒れて
夏は終わりかけているらしい
それでも温度は32度あるし
湿度ときたら80%を越えようとしているし
気圧計はどんどん下がる一方で

そのくせ雨はちょっとしか降ってなくて ....
新字新仮名編)

憂いと恋を取り違えし愚かなる女あり。
己が憂いは詩人の言の葉ゆえと逆恨みして、
詩人の口に轡を填め己が耳に大鋸屑を詰めしが、
詩人の指ひらひらと動きなお言の葉を綴りた ....
さっき何となく星が見たくて外に出ました曇りなので星は見えま
せんでした街灯ばかりがあかるい淋しい夜です何がしたかったの
かわからなくなって家に戻りました家の中は静かなようでいてじ
つはいろ ....
三十はとうに越したが
精神年齢がそれほどいってるかは疑わしい
とにかく子どもは二人ほどいる
「ほど」の部分に何があったかは想像に任せる
下腹はよれたTシャツを膨らませ
ジーンズはさっき下の子 ....
精霊が戻る夜
移動する鉄の塊のうえ
眠れない君は
きちきちと鳴く


(携帯苦手だ)
最後の夜なんだからどうせなら
もっといい男と過ごしたかったよと言うと
そりゃ俺も同感だもっといい女がよかったよと
答えたその男をみると
なぜかそいつは夫でも昔の恋人でもなく
遠い昔に仲がよか ....
手伝ってあげたのはわたし
猿ぐつわをはめて
両手を後ろに縛りあげて
うきうきと心弾ませて飛び込む
井戸のくらがり

よい井戸姫になるのだよ
井戸の底は竜宮に
天に通じるのだからね
よ ....
1 夜の庭で

白い米を
黒ずんだ木の升で三合量る

最初のとぎ水は
庭に撒く

立秋を過ぎたので
コオロギが鳴いていて
いるか座が光っていて

だから私はしばらく庭にいた
 ....
夜が終わろうとしている
真夏午前四時半の空は青ざめて

ほのかに光るシリウス
さっきまでは見えていたプレアデスは
もう見えない

コオロギが鳴いている
いちばんよく響くあれは
たぶん ....
夏バテしちゃって
ソーメンばっかり食べていて
しばらく米を食べてなくって
米びつの米はほっぽらかしで

へんだなあとは思っていた
締め切りの部屋に小さな蛾が群れ舞うから
妙だなあとは思っ ....
青白い殺虫灯に
まっさきに誘われて
バチバチと音を立てて
まっさきに死ぬ。

燃え上がる火を見つけると
後先知らず飛び込んで
一瞬火の粉を吹き上げて
あっというまに死ぬ。

光に惹 ....
山ブドウのつたに
寄生しているから
ブドウムシと呼ぶ。
冴えないちっぽけな芋虫。

それがどんな成虫になるか
私は知らない。
たぶん冴えないちっぽけな蛾か蜂に
なるんだろうと思う。
 ....
自然の草の色に似ている。
たとえるなら稲科植物の
たとえばエノコログサの
淡くやさしい新芽の色。

人工的な色にも似ている。
たとえば小さなころ大切にしてた
プラスチックビーズのネックレ ....
水埃にすっかり覆われて
ほんのすこしも
動きそうになかった
実際さわっても動かなかった

二本の前肢は
がっちりとハヤをつかまえていたが
そのハヤさえも
半ば腐っているように見えて
 ....
やがて埋め立てられる小さな沼のうえ、
イトトンボが飛んでいる。
二匹繋がって。
澱んだ水面をいくども叩きながら。

沼からちょぼちょぼと流れ出すどぶ。
そのそばにある休耕田。
その脇を流 ....
どうせなら
綺麗な水に浮かべばいいのに
ほんのすこし先に
飲めそうな水流れる小川があるのに

にごった水たまりにいる
無数のアメンボ。
そのものすごい密度といったら
日本の人口密度もか ....
ふあんふあん。ふあん。
重力よりも
風力を強く感じていそうな。
ふあん。ふあんふあん。

糸みたいに細い八本の脚は
這っているのか飛んでいるのか。
脚のまんなか吊り下げた胴は
浮いてい ....
夏盛りの真昼の山奥で
輪唱するのをよく聴いた
山奥で暮らしたことのないあのひとに
そう言っても信じてもらえないかもしれないけど

夕暮れどきに街中で鳴く
ヒグラシはあまりにものがなしいけど ....
しんきらと冷えた冬空からこそ出発する
はずだった

真冬ならばきっと
乾燥した肌は粉を吹いて水を求めただろう
夜空の河の湿度はきわめて低い
のどが乾いたなら
お姉さんにあげるはずの牛乳を ....
ここに俺がいると思うか思うなら挙手せよ
インターネット上に俺がいると思うか思うなら挙手せよ
あるいは印刷された紙に印字された文字に
夕方の台所に夜明けのシャワー室に
ビールが臭う真昼間のネット ....
十八歳のころから
ひそかに考えてることがある
考えるだけで実行には移してないが
裏山の防空壕跡に入るたび思い出す

そこにはそれはそれはすごいヤブカの大群がいて
それからちょっとしたコウモ ....
すい とやってきて
吸い と刺す
すい と逃げる
吸い とまた刺す

吸ってるのがわかりにくいんで
腹が立つ
痒くなったときにはどこにもいないんで
腹が立つ

いまどき
日本脳炎 ....
こいつの針は
いかにも太すぎる。
刺したらバレバレだってのに
気づかれてないと思ってる。

すでにかなり痒いのだけど
私は片手にキンカン持って
知らないふりしてあげてみる。
腹の赤味が ....
玄関脇の柿の木の下
アブラゼミの抜け殻はきれいに光る
クマゼミの抜け殻もてかてか
ヒグラシの抜け殻ときたら繊細な芸術品

なのにニイニイゼミは
ニイニイゼミの抜け殻だけは
{ルビ胞衣=え ....
ぶちあたる。
とにかくぶちあたる。
光ってはいるけれど
安っぽい弾丸。

蛍光灯の傘にぶつかる。
窓にぶつかる。
壁にぶつかる。
いちいち音を立てる。

緑金色の背中は
あれでな ....
つまんない虫だよ。
臭いし。
強いったって
スズメバチには負けるし。

天然のやつは栄養不足で
ツノが貧弱だし。
羽根の艶なら
カナブンのほうがいかしてるし。

でも幼虫のときは最 ....
この時刻にこれほど眠いの
悪くない話だと思うよ
さっきメラトニンたくさんナイトミルクnemuを飲んだから
それで眠いのかもしれないけど
睡眠薬は飲んでない 飲んでないんだ

肩凝りがずいぶ ....
いつもあのひとのことを考えているわけではないから
たまには大目に見てやってほしい

外は爽やかに水色の夏の朝
汗で酸っぱいTシャツを脱ぎ捨てて窓辺に立っても
田舎の農道に車一台通るでもなく
 ....
夏休みの宿題は終わったのと
かあさんは訊ねる
私はもう学校卒業したんだよと
何度説明しても

かあさんは言う
おまえはやく宿題をやんなさい
ツクツクホウシが鳴く前に
とっとと宿題を終わ ....
佐々宝砂(882)
タイトル カテゴリ Point 日付
Shaman's Love Song 2自由詩304/8/31 5:04
Shaman's Love Song 1自由詩204/8/31 3:59
愚かなる恋の顛末自由詩104/8/30 6:50
置手紙自由詩504/8/30 6:49
午後の喫煙自由詩6*04/8/26 17:15
仮寝の宿携帯写真+ ...004/8/26 5:06
歓喜の海[group]自由詩104/8/21 4:16
彼女が望んだように自由詩104/8/21 4:15
単純な喜びについての単純な唄自由詩904/8/14 0:06
夜の秋自由詩3*04/8/10 4:50
コクガ(百蟲譜46)[group]自由詩7*04/8/10 2:15
ヒトリガ(百蟲譜45)[group]自由詩6*04/8/10 2:14
ブドウムシ(百蟲譜44)[group]自由詩6*04/8/10 2:13
ワカバグモ (百蟲譜43)[group]自由詩304/8/8 23:14
タガメ (百蟲譜42)[group]自由詩4*04/8/8 23:12
イトトンボ(百蟲譜41)[group]自由詩6*04/8/8 23:11
アメンボ(百蟲譜40)[group]自由詩204/8/7 4:18
ユウレイグモ(百蟲譜39)[group]自由詩304/8/7 4:07
ヒグラシ(百蟲譜38)[group]自由詩204/8/7 4:06
スクリプターレス・スクウェア自由詩104/8/7 3:54
トリプトファンレス・トリプル[group]自由詩10*04/8/6 5:42
ヤブカ(百蟲譜37)[group]自由詩604/8/6 4:15
アカイエカ(百蟲譜36)[group]自由詩104/8/6 4:01
ハマダラカ(百蟲譜35)[group]自由詩4*04/8/6 3:59
ニイニイゼミ (百蟲譜34)[group]自由詩304/8/5 4:14
カナブン(百蟲譜33)[group]自由詩7*04/8/5 3:58
カブトムシ (百蟲譜32)[group]自由詩1*04/8/5 3:56
夏の深夜、午前2時、自由詩204/8/5 3:51
夏の朝、午前5時半、自由詩604/8/4 5:33
ツクツクホウシ(百蟲譜31)[group]自由詩1304/8/4 3:35

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 
0.11sec.