蒼褪めた雪が、赤茶けた地面に降り積もる、俺は、穿たれた穴だらけの腕を肩からぶら下げて、夏のような、冬のような世界を彷徨っている、まどろみが居座った脳髄は、もう、長いこと、濁った、湖のようで .... 運営元が二十年前に行方をくらまして放置されていた巨大迷路の跡地、その駐車場だった場所で、アスファルトを突き破るように伸びた雑草のジャングルの中に手を繋いで死んでいた二人の少女の死体―始め、警察はど .... いつからか指先に付着していた錆色の凝固した血液は、なめてみると土にしか思えなかった、まだ数分しか経過していないのか、それとももう幾時間か経っているのか、いまはまるで判断することが出来なかった、空気は雨 .... 舶来産のまがいもの、これ幸いとばかり抱え込み
国を挙げてのばら撒きショー、さながら非加熱製剤のごとく
テレビプログラムで胡散臭い、司会者と博士のプロパガンダ
いかに安全で素晴らしいものか ....
いつしか俺の血には凝固したガラス片が混じり、血管の内壁を傷つけながら流れて行った、内耳にはいつだって体組織の悲鳴が聞こえていた―低く、呻くような、けれど確かに、それが悲鳴だと感じさせる、声が…感覚 .... まだ明けぬ夜のことなど延々書き連ねたところで仕方がないのだ、日向のことを、簡潔な希望のようなものを綴らなければ誰もそれを読んでみようなどと思うはずがないと、誰に言うともなくひとりの若い男が初めての .... 俺はお前の血を受け、とある海の近くの工業地帯を流れる小さな河川で身を清めた、それでお前は溶け入って闇のものとなり、姿のないものとなった、それでも俺がお前を見失うことなどなかったし、お前もそのことは .... 公園の、古い
石を組み上げただけのベンチで
左腕をだらりと投げ出して
男が眠っている
俺には確かに
そいつは
眠っているように見えた
なんなら
幸せな夢の中に居るみたいに

一 ....
細胞たちの悲鳴が渦を巻く目覚め、始まりの光度はいつだってキツ過ぎる、身体を起こすたびに、眠っている間に降り積もったものたちが行方不明になる、そいつらがいつ、どんな瞬間に姿をくらますのかわかったため .... 欠けた刃物のガラクタが
陳列された
壁紙の剥げたじめついた地下室で
グラム・ロック、あれやこれや
わずかに
外界と繋がる
窓に
朝が
遠慮がちに訪れるまで

二匹目に通り過ぎた ....
それが
正しいか間違いかなど
たいした
問題ではなく

ただ
あなたが
ひとつでも先に進んだときの心を

夏が人々を焼き払ってゆく
わたしはグレーの作業服を着て
かれらの骨を拾っ ....
抜殻を踏み潰す明方の散歩、鉤裂きの朝日に近しい気持ち、袋小路の中で思う、帰り道の入口は本当に遠い、崩落の正確な日時、直ちに必要な情報に限って提示は拒否される、どこかで誰かがそれを握っているかもしれ .... ポリバケツの中に廃棄された腐敗し続ける狂気と、その肉を狙うドブネズミの低い鳴き声、名前も知らない薬の効果偏頭痛に変わる日常の蠢き、まともな時間じゃないのだから文句を言うのは筋違いってもんさ、月は薄曇り .... どこからやってくるのか分からない鈍い反射を受け止める網膜は在りもしないものばかりを確信したがっていて、薄汚い言葉ばかりを口にしてはまた時間をドブに捨てる、昨日までの雨のにおい、溶解した記憶が隠れる .... 闇、散り散りになって
ちっぽけな逡巡を嘲笑い
睡魔に弛んだ
色褪せた脳髄の
目を瞑るに任せる
アウトサイド、口内の苦い
苦い苦い傷を噛んで
喉笛に忍び込む
血液を記録した
午前一時、 ....
思うに俺は、生まれてすぐに、育つはずのない骸の中に押し込まれ、どういうわけか上手い具合に育ってしまったというわけだ、ある初夏の午後、歪み木細工の椅子に沈んでぼんやりとしていた俺はふとそんな考えに行 .... 時刻は午後四時で、僕は見知らぬ部屋の中に居る、マンスリーマンションのような、生活に最低限必要なものだけを揃えた味気のない部屋の中だ、玄関を開けるとすぐにキッチンがあり、木枠にアクリルガラスをはめ込 .... 失われた歌がもう一度流れる、時が地に落ちた午前零時、掠れた声の中に、鬱血のような産声、痙攣のようなビブラート、消え行く瘴気みたいに、路面の亀裂の中へ潜り込んでミミズどもに食われる、神が己の下着の中 .... ホルマリン漬けの胎児が見る夢を具現化したような午後、生命が身体のどこかから抜け落ちて…俺はさながら末期の中毒患者のようだった、上手く動けず…横になっては束の間の眠りに溶け込み、少し起きてはまた横た .... 明日消えていく空のことを
僕は果たして君に歌えるだろうか
明日消えていく風のことを
明日消えていく雲のことを

どこか遠くの
台風のせいだろうか
たえず眠気がやって来る
停滞の自室で
 ....
ポール・オースターの
痴呆症の老人のひとりごとみたいな小説と
アブサンの辛辣な酔い(ネイキッド・シティーの方のね)
小皿の上には
昨日の残りのカシューナッツがいくつか
小皿のデザインはい ....
夕食のときに誤って
傷つけた口の中が傷む
悪態が脳裏で曲芸飛行を繰り広げる夜
ラタンの椅子の上で一対の飛蝗が
遺伝子を残そうと試みている

呪縛から解き放たれた
そんなものになりたか ....
もの言わぬ時に埋もれ、目の端に微かな痒み、割れた指先の鼓動…生は歪みによって饒舌になる、忌々しい話だと思いながら苦笑を繰り返す、蚯蚓のように床の上でのたうちながら、いつか、道端で死んだ友達を思い出 .... 死霊のように空を彷徨う俺そのものの幻を、置き去られたように見上げている一二時間、彼方に佇んでいる雨雲は、ある日突然自死を選びそうな誰かの微笑みによく似ていた、朝食の後味は奇妙に歪んでいて、つまり、 .... 僕らは充血しながら、動脈瘤の世界で明滅を繰り返す、循環するメジャーとマイナーのコード、ハウリングしてる緊急避難警報、駅の片隅のデッドスペース、沢山の要らないデスクチェアーの一番上に放置された黒電話 .... 誰かの手から零れて、真夜中の街路で砕けたウィスキーのボトルから流れ出る僅かな酒は、病巣に塗れた誰かの喀血を思わせる、ささやかな色合いはいつだってほんの少し、呪いみたいな印象を残す、お前みたいにせせ .... 夜はきちがいの回転数でお前の脳髄を貪る、微弱な電流が起こす目視出来ない程度の燃焼が、すべての回路に障害を設けるのだ、微かな異音、焦げる臭い…原因は特定出来ない、無意識下の疲労、浸食、知らない間に蝕まれ .... 鼻濁音の目覚め、朝食の飲料に混ぜ込まれた昨日、労力としてだけ機能する一日のかくも空虚な疲労、浅ましい宗教のようなコミュニスト、曇りガラスの一粒の汚れを視認することは困難を極めるだろう、散弾銃のイメ .... コントロールの無い
まっさらな時間
無いというのが正しい
及ばない範疇
関わりのない概念

首のもげたモラルが
深夜のニュース番組で
戯言を列挙してる
おれは首を掻いて
いらだちを ....
干乾びた野良犬の死骸と、ひび割れた路面の暗示的な形状、捻れて消える泥酔した下層階級者の夢があとに残すものは、ショー・ウィンドウの微かな脂の染み、カウント・アウトのような潰れたカフェのテントが風に煽 ....
ホロウ・シカエルボク(1232)
タイトル カテゴリ Point 日付
blooming underground自由詩022/8/21 15:08
誰がバンビを殺したか自由詩022/8/7 22:28
パス・スルー自由詩1*22/7/29 8:03
World quake sick自由詩2*22/7/24 21:31
指先の輪廻自由詩2*22/7/13 21:42
戦争と戦争ごっこの話自由詩3*22/7/4 22:58
神は悪魔であり、その逆も然り。自由詩022/7/3 21:45
彼の欠片自由詩1*22/6/26 21:27
蠅の王が見ている自由詩0*22/6/19 16:32
透過の雨自由詩1*22/6/9 22:20
文化会館の用具箱の隅に残されていたいくつかの書き置き自由詩022/6/2 0:17
彷徨いの中にしか人生はないのだと思うことがある。自由詩022/5/30 16:15
デッドマン・ウォーキング自由詩1*22/5/22 13:28
ひとりで歩いた道のことしか覚えられない自由詩3*22/5/15 23:43
リスキーな夜の話自由詩022/5/8 10:31
断層の誕生自由詩3*22/5/5 23:12
交信は不可能自由詩4*22/4/26 16:18
夜に煤けた歌の行方は自由詩022/4/21 9:14
Une Correspondance自由詩022/4/16 16:05
明日消えていく空のことを自由詩022/4/12 10:02
馬鹿さ加減自由詩1*22/4/8 21:57
すべてが所詮は呪縛という名の遊戯であるのなら自由詩2*22/4/5 0:13
はぐれものの夜自由詩022/3/29 14:57
亡者の先導、沸点のブラッド自由詩0*22/3/23 15:22
バウンドの世代自由詩1*22/3/15 11:16
vagabond自由詩2*22/3/5 16:05
未だ、その血飛沫は。自由詩022/2/27 0:22
彼に会いたい自由詩1*22/2/22 23:54
日付変更線の彩自由詩022/2/14 1:44
重度のシンコペーション自由詩1*22/2/13 13:42

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