思い出は命を熔かし手作りの花嫁衣装虫食いており
断片に身体を残す死に方をすると必ず鬼になれるよ
諍いの理由を述べよ(1)領土(2)種の保存(3)好きだから
戦いを始めるための罠 ....
かつて{ルビ平城=ひらしろ}なりしものあり{ルビ国寶=こくほう}の碑銘を残し倒壊しけり
ちかごろは酔いて吐く日の多かるになお飲みたしと書に記し置く
ないものをあるというのがくるしくてわたし ....
{引用=窓の外、乾いた風がぱらぱらとヤマモモの葉を鳴らす。猫がきりりと座りなおす。首を長く伸ばして何かを凝視している。}不可能な猫が財布を手に持って医者行ってくると窓閉めて出づ。
不可能な猫が小さ ....
彼岸から呼び続けてる猫がいる、いいや、あの子はいま膝にいる
{引用= 気温二九度。湿度六〇%。さあこれからだ、というときに、抑えつけるものがまたやってきた。いいかげんにしてくれいったい誰なんだ ....
都市部では人の体を流れゆく水の違いが見て良くわかる
黒い。黒い。水木の樹液たっぷりと飲んで太ったアブラムシども
死であった 指先を病んだ結果の 花瓶の脇の携帯電話
平和に 光の当たら ....
白い水泡立つ水がゆるやかにさくらはなびら運び去ります
眼底はきれいだそうだ わらわべもねこも目玉を狙って来るが
桜葉のトンネル抜けて(抜けないで)(ここにいたいの)孫見せに行く
のど ....
看板のペンキが文字の型どおり剥げているから読める。牛乳
げに量りがたきは寿命・生命力・必要とされる度合い(書籍の)
芝桜模様に透ける衝立の向こうに顧客管理簿が咲く
寝る前に読ん ....
生命に憑かれているというべけれ 湿原にずぶずぶと、足首
人食う、人の、目の、白、光、血を流し、たるは、食う顔、食え、サトゥルヌス
青空に白く小さい染み一つ仕方がないの有明の月
切 ....
音のない青空である 端っこをびりびり破り裂く哨戒機
白い、錆、赤い、石灰、見てしまう。古い高架は堅い、おそらく
海ゆかば。冬、清潔に風化され。臭い残さず水漬く屍よ。
◇基礎体温を付け ....
鉄塔が一・二・三・四・五・六・七冬の畑を遠巻きに走る
壁を見るたびに震える目の中の双子の振り子。時計、こわれた
毎日の電話 かならず接続後二分五秒で圏外になる
うつむいて、馬なでて、 ....
夜明け前から降る雨に冷やされて知らず固化するわたしであるよ
いえぬちにいるとき雨は沁みてくる。知ってる、外に出ればいいのだ
見上げれば雨がざーざー降っている 染みひとつないしろうい天井
....
すれ違うバスに手挙げる運転手その手袋に染み付いた夏
図鑑開けばマツヨイグサの花の上カミキリムシが交尾したまま
くねくねとうるさい耳に触れながらオレンジ色の雲を見ていた
浜道の路肩にタ ....
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