崖 より
沼谷香澄

夜明け前から降る雨に冷やされて知らず固化するわたしであるよ

いえぬちにいるとき雨は沁みてくる。知ってる、外に出ればいいのだ

見上げれば雨がざーざー降っている 染みひとつないしろうい天井

アメリカセンダングサの固化、いや木化した日向ヒナタ微風ソヨカゼ、がまんできない

パンパスか?薄か?パンパスか?薄か?あたま一杯埋めてよ、白よ

隣家から薔薇のラティスに這い込んだ凌霄花ノウゼンカヅラ 咲けば許そう

かづらつるくさ悲鳴を毟る(毒虫と紛う根を出す凌霄花)

セイタカアワダチソウが視界を包み込む(いのちだ)崖を滑って降りる

細胞が全部貴方を向いていたそういうときはいい子ができる

ええと、でも、今じりじりと音立てる鉄塔を見て、ほら、また、あれが、


初出: Tongue2号 2013年11月15日 原文縦書


短歌 崖 より Copyright 沼谷香澄 2017-10-12 22:39:46
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