砂 より
沼谷香澄

音のない青空である 端っこをびりびり破り裂く哨戒機

白い、錆、赤い、石灰、見てしまう。古い高架は堅い、おそらく

海ゆかば。冬、清潔に風化され。臭い残さず水漬く屍よ。

◇基礎体温を付ける◇気分を記録する◇小さな達成感を見つける

いま、あなた、タイヤ抜かれた自動車の、気持ちわかりますか、何考えてるか

立つ死体。うん、故事を引くまでもなく、死にます、死んで砂になります

谷ゆかば。動物園を定年で辞めたゾウらの老ゾウホーム

白っぽくちぢれる冬の緑葉が希望の意味を囁いている

あるはずの運河の幅は二百メートル しゅうしゅうと風、イネ科の枯葉

まぼろしの水門越えて赤さびた犬がボールをフェッチしている

初出:Tongue第4号 2004年1月21日 原文縦書


短歌 砂 より Copyright 沼谷香澄 2017-11-04 20:59:15
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
個人誌「Tongue」収録作