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そとにあるよ
みんな みんな
そとにあるよ
黄色い光の午後に
窓のそばで微笑みながら
少女は世界を宿していた
....
不快を感じて
顔を洗おうとするだけ
いまは正常なんだろう
ここでいうところの
基本的なこと
仕方がない
そういう生き物なんだから
妬ましく思ったり
強いものの陰に隠れたり
....
上野まで
行けるかしら
イチョウという名の銀杏
黄色がふる
「君と行きたい」と
言ってみてはだめですか
無意味な
意味のあることを
君としたい気がしたのだけれど ....
ときどき
取られたような気持ちになって
「わたしを返して」
と
思う
または
「わたしを帰して」
かな
日もルーズになりはじめた晩夏
名もわからぬ鳥が鳴く
湿った畳の目だけを
見つめかぞえ
また眼をつむる
夢見が悪かった
人に会いたくない
話もしたくない
すべてに
誰のために ....
わたし
(現象する
音声に燃えていく
{ルビ紅=くれない}する
空ろな現存の呻き
青ざめる{ルビ夜=よ}
鋭くかげる新月に
引かれる心音のにじみは
血管を震わせて
蒸発してゆ ....
細胞の輪郭は
発熱に適した形なの ね
あなたの音源との距離感は
可笑しくて悲しいけれど
あなたの感覚器の滑稽な分離も
可笑しくて悲しいけれど
さらに 伝導にも適した形なの
....
ぼくらのまちにほりえもんがやってきたよ。
いろんな冒険と計算を乗せて。
勝つためにやってくるんじゃなくて利用するためにやってくる。
それをわかってて加勢するやつ。
つまらない中傷でつぶ ....
満月は
あしたから
だんだん萎んでいきます
わたしの満月は
いつだったんでしょう
月は
また膨らみますが
わたしは
もう膨らみません
子どもじゃあるまいし
....
蠢くというよりは
疾走する
ゲジ
無害なのだな
でも嫌いだ
何がって
その足の多さ
狙われたら
逃げ切れない速さ
お前が走る速度ほどに
私の背筋が凍る
うら若き乙女の頃
....
日に焼けた顔が
農婦のようで
働き者でもないのに
わたしは
温室栽培ではなかったんだ
どこにでもある雑草
虫に食われたり
風にさらされたり
軒下であるだけまだマシ
鏡の前 ....
あれは冬だったから
あの月とは違うけれど
1月10日のあの街の
あのビルの森の上に出ていた月と似ている
8月
今夜の朧月
明日
現世は終戦記念日だという
夏が折り返す
も ....
臨終の床で何か伝えようとする善三
大地「お父さん、何が言いたいんだい?」
善三「…絹子…… 」
医者、聴診器を耳からはずして神妙に
医者「亡くなられました…」
頭を垂れ ....
いまはもう
どうでもいいはずのあなたの
うた
それは幻で
あなたでない
あなたが書いた
ほんとうのうただった
いまのあなたは
出し殻で
きらいです
猫なんて
なでている
....
家のそばに浮かんでいる
家と同じかたちのふちどり
それがなにかわかりません
晴れた日にも曇りの日にも
空に無数にきらめく粒子
それがなにかわかりません
まじわり ....
もし月が地球に落ちてきたら
全世界の人々は両手を天に掲げて
月を支えようとするだろうか
売り出された月世界旅行
価格は110億円
誰でも
それだけあれば月に行ける
行きたいけど
お金がない(笑い
お金が欲しいと思う
110億円は
小売価格だから
原価はいくらだろう
....
わたしたちは小学校のプール跡に住んでいた。
もちろん家に住んでいた。
プール跡に、家が建ったのだ。
ともすれば思い出したように、夏にはテーブルの上にサトウくんが立った。水泳大会 ....
触れることも触れられることも
拒んでいた手
そんなことすら
忘れてしまった手を不意に繋ぐ
温かさ
そんな空想が
思考の隙間に挟まって
消え
誰も
何も知らない私を
存在させ ....
小鳥の瞳に恋をした
少女は
空にキッスして
ことばを失った
あ
{ルビ喃語=なんご}が空を切る
白馬に行った
気圧の変化で耳痛い
トンネルをくぐったらすごい雨
またトンネルをくぐったらすごい晴れ
白馬についた
涼しい〜
湿気もないし
空気もうまい
早速ニジマスつかみどり
....
乱れた心に
流れこむ無情
忘れてしまいたい事さえ
TVのニュースで流れる
時代に気付き
我が身の儚さを嘆き
重くのしかかる 避けられない
運命の糸を辿る
全ては泡の如く
消え ....
地べたに寝転び
子供の青空を見る
美しい腹を見せて
ジエット爆撃機が
堂々と飛んでいる
何百人も昨夜
殺してきたのだから
当たり前だ
りりしく飛べ
蟻んこよ
俺の頭に登 ....
自分も
いじめたりするけれど
猫を悪く言う人が
嫌いだ
猫を
かわいがりすぎる人も
なんとなく
気持ちわるい
認めなかった犬と
いまは暮らす
犬は
帰るたび
喜んで ....
十代のころ
風呂で毎日肌を磨いていた
それは
白蛇のようになまめかしく
女というものは
綺麗であるべきもの
愛されるために生きるもの
それだけでよかった
なのに
酷いのですよ
....
左足が捨てられた砂浜
ずっと目を合わせられなかった砂浜
砂浜を演じていた砂浜
腐らない写真を捨てた日
うしろめたさが熱い砂浜
足音が引きずられる地瀝青
焦げた靴にうんざりした人の
叫 ....
ねえ 南十字星ってどれですか
と恋をしていた
空はあんまり星だらけだったので
はたして
その星をあなたが知っていたのか
わたしは知らない
し、
知らなくてよかった
白線を
....
母は時折話して聞かせてくれた
その 夏の日のことを
まるで 昔話を物語るように
淡々と淡々と
話して聞かせてくれた
どこへ行った帰りだったかしら
小さな弟を連れて
畑の中の一 ....
ささやくようにはいりこんだ季節は
坂の向こうで風をふくみ
かがやいている
いつも背中に手をふれ
たしかめながら
もうずいぶん歩いて
彼女の手には ひまわりが一輪咲 ....
カナカナが
鳴いていた
紅の夕日が沈むのさえ
浸れない私だった
いつの間にか
蚊に刺されていて
皴の多い手は
なかなか美しくなれないでいる
自分だけを愛していた頃は
....
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