すべてのおすすめ
若葉は青臭くていいと
老いた葉が
羨ましげに
鑑賞している
尖っていた葉は
あなたを守るため
傷つけるためじゃない
でも 遠ざけたのは
青くて頼りない葉だったから
そ ....
裸に海の膜を纏う
崖を繋ぐ羽毛の吊橋が足裏を優しくくすぐる
乾いて冷えきった太陽の光に背を押された
橋を辿った先に広がる光景は
眩しい新緑の髪がなびく草原だった
ああ
甘酸っぱい桃色の ....
彼は大ぐち開け森の燃える音を食べた
銀のスプーンで掬って葉が浸み込んだ
悲しみの調が喉で喜んでいるようだった
開放の叫びが聞こえてくる
私は鳥を好きな場所へ逃げるようにと自由を放った
....
球体 陶器 木偶 海底 列柱 イオアンネス
肋骨 列柱 古代の不思議 肺臓学
喉笛骨 空洞発声 老婆 時限式
四次元 箱家 ラピスラズリ 瞠目 手品
宮殿六角形 セミラ ....
Yの海馬の幾つかの
細胞に刻まれたひとこま
「また会おうね」と
Yが弟にかけた言葉
にっこり白い歯を見せた
会えたのか、呼ばれてみると
意識は無くて体中で息を求めていた
「〜彦ち ....
郷愁を誘うメロディーが
滅多につけないカーステレオから流れ出すと
僕の空は92年のあの時に戻るのです
僕が故郷と呼ぶ場所は産まれた土地のことではなく
自我が形作られた父の転勤先のことで
....
息を切らしながら山道を登っていくと
薄暗い脇道から片目のポインターが飛び出してきて
びっこの前脚で器用に跳ねた
どうしたらよいのだろう
何かの病で左目を失くしたのか眼窩は
底知れぬ闇 ....
光があるのだから
わたしは黒い影でいい
あなたを照らす
光はひとつ
遠くに感じる声
それでもあたたかい
遮るものは
わたしのいのち
ひとつだけ
頬を伝う、ああ
なつかしい
こんな ....
小さくなっていくこと
悲しいと思ったことはなくて
けれどいつか
君の小さな手で
拾ってもらえなくなるのだと思うと
それはとても悲しいことみたい
君はとても
ていねいな人で
きっちり ....
顎鬚をたくわえた男が
布を手に玉蜀黍を磨いている
小屋の外に置いた籐椅子に座り
一心不乱に
遥か上の方で青空が
ずっと前に動きを止めたことを
....
1)
庇には樋がなかった
コールタールの屋根をはげしく打って
雨は黒い路地に、まっすぐ流れおちた
ひくい窓を大きくあけて
わたしは雨の音を聴いたはずなのに
路地に敷きつめられたコー ....
ねじ巻きおもちゃは
関節を鳴らしながらやって来る。
遠い日の音の記憶は今も耳の残っているか?
子どもたちと笑い声は連鎖して
隣の君の声も聴けない
優しい人達の笑顔は今も変わらない ....
きみが覆いつくした 世紀は輝く
きみは高らかに筆を降ろし 画布から水面につたう
きみは光と水を 調合する
きみは招待で
振向くきみは侵食のようだ
きみは廃棄物マニフェスト ....
ひものついた雪が
首の下で揺れる
残されているのに
しばられて
くずれていく 雑な音声
ふらついて
たてついて
鳴るはず も
ない すずやか
な 声
書き溜めた理想が
燃やされて、
吹き飛んで、
わたしは扉も満足に閉められない
検体になる
眼球の
背びれ、胸びれ、尾ひれ、の連動がなす
鱗の反射にいち早く気づく若者よ
両肩が雪崩る ....
電線のすき間に光る欠け月
本当の私は いつも煙草を手に思いを口にしてた
風のあたたかさや
寒さ
楽しさ切なさを
今朝の風はあの日に似ていたよ 悲しみの模倣のように
冷たく
日差しゆるく
....
街を彷徨う蒸気と共に
白熱した悲しみが車をよける
手をつないだ恋人たちは
知らない土地の話をしている
七色に輝くスーツのポケットには
小さな戦争の火種が入っている
....
思い出の数には限りがあって
両の手のひらからこぼれた思い出は
ひとひらの色あい
鮮やかに晩秋の野山を彩っては
やがて力尽き
道端の
ふきだまり
静かな眠りに何を夢見る
※
....
だれのものか
だれもしらない
島の ちむは
たましいの遺産
戦世(いくさゆ)でも
混血でも
総決起でも
珊瑚あたまのガジュマルが
三線片手に汗かき鳴らして
愛しく ....
ぼくは
とじこめられた悲しみ
爪を噛むなよ
あきらめろよ
ぼくはとじこめられた悲しみ
届けられない葉書
みわたす限りの
こすもす畑に
種を撒いていた
きみだ
きみだ
きみ ....
固いタイルに
きみはうつ伏せ
ぼくはぼく自身より
長く鋭い針を
きみの背骨の中点に差し込む
素早く、直角に
屹立させる
こうして
線と
....
はなぞの
げっこう
さんるーむ
むじのかべ
ひくいそら
どあのおと
かんいべっど
りゅうどうしょく
ひきだしのせいしょ
うすいほほえみ ....
綿毛の海で泳ぐ
後ろ姿を探す
秋の始まる午後に
あたたかさとつめたさの両側から
等しく守られていることを知った
星の人から届けられる
言葉によらない通信を
言葉に変 ....
掌を
滑らかにすり抜けて
北風が
秋の香をさらっていくのは
路上ギターの奏でた
奇術の仕業
ほぉら
まぁだ
いーるよ
す ....
予め
蕾は刈り取られていた
頭上を
越えていった
鳥の名前を知らない、
車輪のあとに立ち尽くす
わたしの肩を抱いて
そっと
目を伏せたあなたの
手と、
手を
重ねると
....
夜が落ちてくる
夕闇の秋
空に残る青の名残
雲の陰影
輝き始めた三日月と
まだ小さな一番星
切り取られたような山際に
影絵のような樹木達
光と影の混在は
もう指先まで押し寄せ ....
瑠美子さんは昔から
玉のような麗人だったが
きのう出会って驚かされた
50代にしては白い素肌
それはいい
話しながら顔を見ると
美とはこんなものかと驚かされる
にこりと笑う瞳の
優 ....
いま
いま
いま
いま、
「今」を追いかける
ねえ
いまは
いつわたしのところにあったんだろう
ねえ
いまは
いまどこにある ....
はだけた空の向こう
だんだんと透明になる秋の模様と
そろりとかき回す
乾いた、みどりいろ
やがて
脱ぎ捨てていく
いちまい、
いちまい、
はらはらと、
はらはらと、
....
この香りが五月でもないのに
懐かしさが全身に{ルビ迸=ほとばし}る
僕は気になる この香りが
逆らいに倒れた僕をそっと
この華奢な体が抱いてくれた
揺れまいと
木の葉が{ルビ頑=か ....
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