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わたい、もやしはきらいや。
病室のベッドのうえで
母がぽつりと言う
六十年も付き合ってきて
母の好き嫌いをひとつも知らなかった
そんな息子だ
お父ちゃんがな、腹切ったときに出て ....
いつの日も
夕日は、約束に似ている
すっかり、
日が落ちるまで
果たせなかった約束をかぞえては
また、
あしたに賭ける
ぽつりと、残された
オレンジの雲は
あしたへとつづく
....
乾いてる軒下暮らし梅雨の日もそれが定めとうな垂れて
ほんとうに美しい玉葱の芯どうしてもほら泣いてしまいます
玉葱の玉を採ったら葱だらけでもそれは夢{ルビ二兎=にと}を追うひと
玉葱の ....
生きる
乾いた空の木の枝は
去年と同じ姿をしている
彼らは信じて疑わない
この冬が
やがて春になることを
人はどうして姿かたちを変えるのだろうか
老いることは人も木も同じは ....
親はいないのか
捨てられたのか
たかいのか
ふかいのか
風がきつい
まぶしい
今日の空
ひとのかたちで
風に捨てられて
おまえは
なんていう名の雲か
太郎か、次郎か
花子か、雪 ....
も吉と歩く
何もない冬の午後
も吉と歩く
はたちの頃 一年ほど日記をつけた
何も残せず ただ消えてゆく日々が
とてもこわかった
時間はたっぷりあったのに
いつもの散歩道
....
冬の玄関にはわたしにいちばん近い花を置くたとえば蒲公英
辿り着いた岬に根をおろして君は海をみていたね昨日も今日も
陽だまりを送ってくださいとあなたが言う十一月の蒲公英を送る
今年最後 ....
もう、十一月だ。
現フォもすっかりサボッてるけど、ここんとこ畑仕事もサボってる。
十一月は関西では玉葱の植え付けシーズンです。休日の朝、買ったばかりのラパンに乗って、玉葱の苗を買いに行きました。十 ....
{ルビ月極=げっきょく}さんは資産家だ
日本全国に空き地を持っている
でも、どこに住んでいるのだろう
月極さんのお家がない
そう思うと、ちょっとかわいそう
パートさんになった
月極で働 ....
まいにち、テレパシーをとばしている
とどいたのかなぁ
今日は雨だけど ・・・
れんちゃんにとって
六月はもう、真夏とおなじだった
朝から暑くてたまらないみたい
ひんやりつめたい ....
空のピアノを見ましたか
ほら・・、
二重橋のような、おおきな虹のことです
ト音記号と、ヘ音記号のついた
おおきな、虹
ドは、どこにあるのかなって
迷いませんか
ふしぎなことに ....
昨日とおなじものは
いらないのに
明日になったらやっぱり
おなじもの?
君はかわっても
ぼくはかわらないのかな
いくつになっても?
うん。
将来のゆめを語るひとでいたい
九十 ....
ぼくも夏毛になりましたって そんなアホな
暑中お見舞い申し上げます たま
雨の日はほら
また寝ぐせがついてる犬のひげにアイロン だめかしら
どしゃぶりの雨の中しつこく猫をさがす犬 ....
あした咲く朝顔は
雨の軒下でこうもり傘みたいに
とじています
あしたも雨なのかな
朝顔って、おかしな{ルビ花=ひと}だね
傘をもって
生まれてくるなんて
いちど咲いたら
もう、とじ ....
すこし太った と
しわだらけのあなたが言う
たしかに
しわの数はへっていないけれど
わずかに 浅くはなっている
一年ぶりに 団地にUターンしたのが良かったのか
また
独居 ....
かたつむりがね
いないとさみしいよね
木の葉の影の雨宿り
でもね
木のてっぺんにもいるんだよ
きっとね
だって だって
ひなたぼっこしたいから
アリさんがね
いないとさみしい ....
ゆうてみて
あたしのどこがきつねなのか
そらぁ
お天気の日に雨はおっかしわなぁ
そんでもなぁ
この雨を降らしたんはあんたやで
しょぼくれた顔してうどん食べてたから
声かけたん ....
わたしは縄文の舟を漕いでいる
トチノキを刳り貫いた
粗末な舟だ
赤い犬をいっぴき乗せていた
これが最後の猟だと
わたしは思った
子どもたちは
夏の来なかった時代を知らない
もう ....
空も
海も
荒れている
鉛色した浜辺に
鈴をなげる
こんな日であっても
ひとは
生まれ死ぬのだろうか
鳥たちは
季節を選ぶというのに
どんな理由があって
生まれ死ぬのだろうか
....
短歌を超える詩が、あってもいい
詩を超える短歌が、あってもいい
詩人も、歌人も夜はおなじ寝床で肌をよせあって
眠るのだとおもう
今日はもうなにも書けなくて
はやくお風呂にはいってあし ....
便利やで。このひと。
うれしいと泣く。
哀しいと笑う。
恋もできる。
歌も唄う。
故障は少ない。軽くて丈夫。
充電式やから停電に強い。
環境に順応。
ええ仕事する。みんな欲 ....
うすっぺらな
アスファルトを剥したら
今も蘇る
ブリキの街
白く錆びた娼婦の肌が
うすい庇の影に
やさしく溶けて
ぼくを呼ぶ
はだか電球ひとつ
布巻き電線が這う天井
タイル ....
あけましておめでとうございます。 たま
オロチ
箸は一本でいいと言う。
ふたりの子は箸を一本ずつ持った。
狐の権太はうどん屋に化けて
村の二本松の辻に店を出してい ....
空いっぱいの夕やけを見たいとHが言う
寒くない?
うーん、だいじょうぶ。
今日はあったかいし絶好の夕やけ日和よ。
どこがいい?
うーん、
海がすぐちかくにあって、川の流 ....
1)
庇には樋がなかった
コールタールの屋根をはげしく打って
雨は黒い路地に、まっすぐ流れおちた
ひくい窓を大きくあけて
わたしは雨の音を聴いたはずなのに
路地に敷きつめられたコー ....
なにもかも捨てなければ眠ることはできなかった
今日ひろいあつめた荷物をまるで投げ捨てるようにうば
われていつまでもあきらめきれずに夢の入口に立ちつく
す日は朝まで眠れない
それはなぜか、老いる ....
ゆうちゃんは無口な転校生だった
四年生の春に
ぼくのクラスにやってきた
ゆうちゃんと、ぼくは
なぜか気があって放課後はいつも一緒にあそんだ
がっこうは友だちできへんからきらいや。
....
八月
隙間のない日差しが街を埋めつくして息をとめた地上
の生きものたちは白い化石になるだろうか
昼下がりの昆虫のように日差しを避けて地下に逃れた
人びとの背にうっすら
あの日の地核の影が ....
あとかたもなく崩れゆく遠い果実を見つめている
Hのしろい指がりんごの皮をむく
どこまでも切れることなくつづく紅い航跡はこの星を
ひと回りしてわたしのからだのやわらかい節々にから
みつく
....
うすい羽のはえた夜行バスにのって
月あかりにかがやくいくつもの雲をこえて
あいした理由も
あいされた理由も
すべてあなただったから
いつもの街角、いつものバス停
やわらかな猫の手に夜の ....