すべてのおすすめ
春雨に濡れるこうもり傘を閉じ君をついばむしなやかな夜
樹皮の裡に青年さらに蝉しぐれ少年が行く地球回しつ
少年の消えた浜辺の波がしら寄せ来て浚う貝の墓さえ
頁繰る老眼鏡の横顔はツェペリンさえも侘びて聞かしむ
変なひと影は満腹うつせみの君も君もだチ ....
{引用=
まどろむ{ルビ瞳=め}、蜂蜜に濡れたラディッシュ (ねぇきいて I'm crazy for you.)
}
気の抜けたとんびが空をとんでいる。コペルニクスに会いにいこうか
我先にと群がる群れより遠ざかり自分ばかりを見る私
土曜日の夜明け切らぬ電車はバラバラな人達を乗せひた走る
上りは楽しみを乗せ下りは疲れを乗せ日曜日は過ぎ行く
....
如月の温くき休日二人して柿右衛門展思い出になる
洋服を二・三点も出されけりどれも似あいて妻はみめよき
妻出勤部屋を出でゆき戸を開けば横顔見せて運転席に
銀の雨、初めて君を知ってから37℃微熱のくちびる
悲しみをすえ、そうじきよ。ぞうさんの長いおはなも彼に届かぬ
tongueという怪物の棲む洞穴にまず招待の愛の共食い
歯の裏を口蓋打ちつ舌踊る孤独吐くだに異国語になる
恋人は菓子パンに似て買う前と装裂き食らう刹那が美味し
クレパスのさくら色だけ短くて買いたしにいく春の自転車
冬空をひこうき雲はまっすぐに。どこまでもゆく、どこまでもゆけ。
かぐわしい酒はこれかとディサロノを娘の森に注ぎ乾杯
楽土への鍵はアーモンドの香り
私の口移しで召しませ
最後の夜彼のカルピス飲みほして身に焼き付ける初恋の味
やわらかな光をたばね菜をゆらす瞳に春を住まわせた人
屋上でバニーガールは恋に落ち月のベールをまとう十二時
{引用=
絵具を溶く指から香るあなたの匂い。だから時々描けなくなるの。
滲み出す画面の先に春があって たまらなくなるから青色を塗ろう
大好きなふたつのものを区別する、わたしの ....
あの空はきっと誰にも描けない{ルビ薄紫=うすむらさき}のグラデーション
病室の君も宇宙を駆けめぐる秒速30キロのランナー
いつだって留守電のままの息子たち声が聴けない寂しさは闇
バス降りる園児の声がよく響く日本の未来君らに託す
牡蠣フライフワッと揚がる瞬間に別れを告げたあなたを捨てた
赤い薔薇悪いイメー ....
雨の日は虹の七色探索す。ポスト、au、ロフトにハンズ。
薄皮に甘露の珠をしたたらせ揺れては誘う双子の果実
帽子つけ鏡の国へ向かうのはアリスじゃないよ
私のキノコ
魔女の矢に刺され震えて鏡よりあふれこぼれる白雪の糸
北風を歩く麦の穂影こぼし月なき夜の炭水化物
ふくろうは鳴かぬか檻に閉ざされし脳という名の北辺の森
キリストは冬の季語なりあお黒く風にはためき電線ゆらす
きらきらと何処から降る雲母の粉乱視の眼 ....
見えなくてすんだまなこをひと晩で開けたあなたの 眼をえぐりたい
綾辻行人・児嶋都「眼球綺譚」に寄す
暗やみの道の途中にぽつぽつと火が{ルビ焚=た}かれている道しるべだろう
本当のわたしを浸せばバスタブに泡が咲いてる、泡が散ってる
日(休日出勤)
日曜日「宴のあと」の風沁みて いて座の子らがゼロを吸う街
月(週休)
月曜日一人ぼっちのアイドルで『ありあまる富』口ずさむ丘
火
今朝も ....
「ヒヤシンス」うさぎの耳にささやいて花の白さを月に浸した
「再発は再出発のことだよ。」と笑った母のわたしは娘。
ふるさとの母の帰った日の夜の 机にぽつんとはっさく光る
しましまの囚人みたいな服を着て四角い窓から空を見ていた
あかい花、血の滲みただかなしくて
唇ぬすみ逃げる夕焼け
あかい花、きれいだねってつぶやいた
水に落ちればいつか見た夢
あかい花、口にしたなら消えてゆく
....
1 2 3 4 5 6 7 8