あんドーナッツを
ためて、ためて、投げあげて
放物線の落下する地点まで
走って、セバスチャン
つぎつぎと走って
受け止めて
全部くちで
そういう無意味な訓練を
たくさんして
*
 .... 
{引用=昨日の空と、今日のわたしと、明日の凪と、そこに存在しない隙間、}
窓際のプリズム きみと共有し 虹のない冬に射しこむキセキ
近づいてなお遠ざかる逃げ水にかざす指 .... 
「この深い泥の中から拾い上げた錆びたマイクで自己紹介です」
胸と胸を押しつけても重なれなくて 鼓動の数は決められていて
灰の舞うプラットフォームを走りだせばほろびる前の .... 
どのやりかたもまずいが子育てに正しさはない 
人生のようなものにも
それがないように 
あたしたちにともなう
正義は/悪は
それらの構成とセンスで 
角度を変えながら進んでく 
冷静でい .... 
その前に決められていた雨上がり言葉をひとつ少女は知った
ひそやかに水は逆流していると富を嫌った国語教師は
ペンギンと乗れば寂しい 24時25分に出る終電車
いましがた呼び合いました。 .... 
(足のとれたピーターパンの人形が積もった埃の下で見る夢)
途切れがちな点字ブロック跨ぐ夏 雲の向こうに打ち寄せる青
内側にはびこる針の芽を撫ぜて微かな痛みが .... 
世の中で一番暗いときはいつですかという質問の答は 
夜明け前 
だそうです。
レディース&ジェントルマン
この闇の意味を問いただし
まぶたを何回も何百回も何千回もまばたきしな .... 
ふもとに自転車を止める
自転車ももはや山の木のように生えている
僕は山の記憶の泡に洗われ始める
かつてこの場所も辺境だったのだろう
山は人とは無関係な体系を
今も変わらず維持している
 .... 
 
 
01
図書館にパンが落ちていたので男は拾って食べたのだが、それはパンではなくムカデの足だった。
02
図書館の大砂漠で遭難した司書は一週間後に救助され、その翌年には大統領になった .... 
となりのおっさんが着信音に出て
イソギンチャク死んだんか、
と第一声を発した
さみしいやろ、海にほったらなあかんな、
おっさんたちにとってイソギンチャクは
犬や猫のような .... 
すこしでもさかむけがあればきみがきてこころをたしかめられるんだ
ちょっとしたかわいさがぼくのたねをまくはながさくまでわらってられる
ぬりつぶすてがみのなかのあてなにはぶらっくほーるよりふか .... 
きみが運ばれて
いった、きみが
愛したものも、きみが
愛さなかったものも、ともに
運ばれて、断絶した
彼方とは
断絶そのもので、きみは
そこで
跳躍する
 .... 
扉が
壁になった
観音開きの合わせ目には一ミリの窪みもなく
錠前も、蝶番もなく
光も、ざわめきも、向こう側の気配はなく
ひた駆けてきたあなたの
汗と、一千万秒が
消散した その静寂で
 .... 
がいこくのなまえ
いそがしいね
がいこくのなまえ
どこにいたの
どこからきたの
がいこくのなまえ
たくさんでてくる
はやしのようになる
がいこくのな .... 
耳を澄まそう 
日が翳り 
灰色の雲が天蓋を覆う 
低く垂れ込めて 
最初の一言を 
ポツリ 
と 
耳を澄まそう 
これは 
幾千億の雨粒が語る物語 
その一粒一粒が .... 
そして扉の向こう側になにかがあふれている
閉じていた扉をあけるとそこには透明な顔ばかりがあっちやこっちを向いている
みんなばらばらにどこかにいこうとして
ただ浮かんでいるだけ
あたしもおなじよ .... 
川はおびただしい死体の群れでおおいつくされて
おれたちは水に触れること無く向こう岸までたどり着くことができた
あまりにもまぶしすぎて影を無くしたまま
光を失ったコンビニエンスストアーの自動扉を手 .... 
背が高いとは限らなかったよ
ちいさいやつもいた
まあちいさいのもでかいのもばかだった
さわらなきゃいいのに火にさわるのはやつらだった
火傷したくなけりゃ
火からすこしだけ離れていたらすむ .... 
ひかりたからか
からか からか
穂の息ひそめ
言の火ふらす
窓のふくらみ
煉瓦の道
こだまする影
屋根に立つ影
風のなか揺るがぬ星や星
足の指がつ .... 
すべてはこのバスの中で完結している
ふとそんな言葉が頭を横切る
雨はもうじきあがるだろう
そうして所在無さげに
手すりの傘だけが残るのだろう
老人は窓と小説を交互に眺める
後ろのどこか .... 
窓に映る窓 沈む窓
手首から土
幾度もひらく
白く小さな花火のはじまり
光なく光ある
言葉の淵の舞をすぎ
針を静かにつつむ手のひら
大きな銀の鳥
唱と踊 .... 
バスタオルに湯気の立つ少女くるまれている
春には毛布もうすくなる老人
落ちてくる雨粒にときおり天にくちをひらく少年
あたしはひざを折りさらに腕をおりまげて居酒屋の出口で誰かをまってる
星が .... 
いつだって窓は
逆光に黒いコンクリートを四角くくり抜いて
冷たさと
まだ見ぬ町と
まだ起こらない出来事と
未だ語られない言葉と
遠い町の中を走り抜ける音で彩色された
真っ青な空を映してい .... 
片目とじて高層ビルのてっぺんを愛撫するほど遠いきみの背
くちびるが世界、とひらき漏れ落ちる欠片のなかにわたしは棲んで
カレンダーに王冠を描くもう二度とあうことのないひとの記 .... 
少年誌の山を崩し
初めて手にしたビニ本をめくることで
成人女性の身体には
モザイクという器官があるのを突き止めた
未知の感情に駆られ 求めた場所は
服を着ていたり
声すらかけられなかったり .... 
初夏の風の流れかたは
グラウンド横にもえる雑木林の
緑の揺れかたであらわされるらしい
美しく思いすぎないよう
美しく思いすぎないよう
丘を登る道を歩く
ふたつ影は千鳥格子に
新緑と樹間を .... 
夏の日が薄紫色に
透けて近いので
君になにかを書きます
花が開いては
落ち
黒い道路を汚しては
それをふまないよう
ふまないよう
すこし飛ぶように
歩き
振り向いたなら
 .... 
糊の効いた藍染めをくぐり抜けると
石鹸の香りがいらっしゃいませと迎えてくれる
散歩の途中でみつけたお風呂屋さん
モクレンの香りに誘われて迷い込んだ小路
朝夕通っている駅前通りとはさほど離れ .... 
新月の夜に
世界中が停電して
僕が誰だかも
わからなくて
原初の闇の中に
視界が境界を無くして
僕が誰だかも
わからなくなったら
初めてこの言葉も
線の一本一本をほどいて
かたちか .... 
草木も眠る丑三つ時には
言の葉寺の鐘も鳴らない
小粒の雨が纏わりついて
糸を引いている女の
肩から背中から人形を
操る天空の指のような
月の傾き、梟の
抑え気味に笑う声とか
つがい .... 
 
 
 
 
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