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雪が降っている感覚に、薄目を開けた
凍りつく湿度と、ほのかな光を感じる

雪の一片一片には
冬の陽がほんのわずか宿っているのだという
だから真白く淡く輝いているのだと
幼い頃、母が聞かせて ....
薔薇の下から
少女の唄声が聴こえる


庭の片隅に植えられている
その深紅の薔薇の下から聴こえる少女の唄声は
私にしか届かない
それが惜しいほどに、華麗に、時に遣る瀬なく
 ....
地上で最後に咲いた花には
目がありました

かつて生存したあらゆるものが死滅し
文明の残骸さえ塵になった地上で
とうとう最後のいのちになった花は
青黒い雨に打たれながら
薄汚れた白い花弁 ....
雑木林の奥の崖まで行く癖がある
そんな時に偶然見つけたのがこの教会だった
天井近くには鳥の巣まであるほど廃れていて
キリストは取り外されたのか
薄汚れた大きな十字架があるだけだった

軋む ....
何事においても、排出する事に快感を覚える。
排泄行為は言うまでもない。
お風呂も毎日一時間以上入って、汗をダラダラ流す。
風邪をひいたらラッキーだと喜ぶ。
鼻水を出す喜び、咳をして腹筋使って、 ....
長く白い廊下を歩いている
窓のない、一人分の幅しかない廊下を
私はただ延々と無言で歩いている

平易な路程ではなかった
ある時は出口を求め走りに走り
またある時は壁にすがり壁を壊 ....
私はわたしの重みだけで倒れて割れる

痛みの断片を寄せ集めて
出来上がったわたしを私は消したいのに
身体の内側から鋭い切っ先に刺されて
抜けた髪の毛の断面からすら血がしたたる
私の中身はわ ....
あなたについて
私が見たもの聞いたもの、感触、熱、味
ぜんぶ
私の中に入れて蓋をする

逃げ出そうとされて嘔吐感がこみ上げるけれど
音を立てて飲み下し腹におさめ
唇を閉じたままニィと微笑 ....
だからあなたは
ひかりへ向っていて下さい

あなたの
その肉を流れる血液を脈打つ鼓動を
私はこの手で感じられない
それでも
こうしてあなたの後ろに立った時
あなたの影の中にいる私は
 ....
君の影を拾った
西日を真っ向から受ける君の背後で
手を差し伸べたら
君の影を拾えたんだ
君の影は薄暗く、少しつめたかった

私の影は
君には決して拾ってもらえない位置にある
かしましいねェ。
ひとが気持ち良くうつらうつらしてたッてのに。
あたしは、よっこらせッと起き上がり上の階を覗いてみた。
幼い姉弟が鬼ごっこをしていた。
椅子を借りて子供たちの甲高い笑い声を聞い ....
たとえばこのストロベリーキャンディーが
私の心臓だと言ったら
あなたは口に含んで舐めて溶かして
身体の一部にしてくれるだろうか
それとも捨ててしまうだろうか

甘く感じてくれて
最後は噛 ....
蝶の道のように
川を遡る魚のように
潮が満ち引くように
陽が昇り落ちるように

鳥が巣に帰るように
私はこの家に帰ってくる

もしもあなたがこの家から居なくなっても
ここが私の戻る場 ....
もうこのにこやかな仮面は
皮膚と同化しているのに
剥ごうとするひとがいる
剥いだらどうなるか
わかっているだろうに

それでもそれが私の素顔だと言って
変わらずキスをしてくれるだろうか
 ....
雨の日だけ訪れるひとがいる
水を滴らせながら、入れてもらっていいかな、と
私は玄関を大きく開け
タオルとホットミルクを渡す

他愛無い話をぽつりぽつり
このひとは愚痴や怒りを表さない
た ....
断片を思い出しては吐息が悲鳴を上げる
痛みの記憶ばかりが鮮やかに焼き付いて
彼岸花に託せば常世に流してくれるだろうか
けれどかなしみで形作られた私もまた消えるだろう

つまりあなたが愛してい ....
今日も誰とも口をきかなかった
一日が終わるころ
帰宅したあなたが
ささくれの出来た指に唇を寄せ
舐めてくれる

チクチクした少しの痛みと
往復する濡れた舌のやわらかさ

やがてふやけ ....
いくつかの断片を繋ぎ合わせると
私達は深く愛し合っていた
(それは思い違い)

記憶は時間を経るごとに
正しい記憶も思い違いもすり潰されて
いくつかの断片しか残らない

あなたに私の断 ....
人は、一生の内に、何度謝るのだろう。
謝罪と、謝礼、どちらの言葉を多く発するのだろう。

皮膚が盛り上がったまま元に戻らない左手首の傷跡を指して
主人が言った。
「君は確かに被害者だ ....
髪の毛を洗おうとして、座った風呂場のイスの
正面の鏡が曇っていた。
洗髪するのに鏡が曇っていようと構いやしないが
いつもの習慣で鏡に向かってシャワーをかけた。

一瞬歪んだ私の顔が映り、それ ....
生まれたての赤ん坊が
声を殺して泣いていた

夕陽を追いかけている内に
海に沈んでもがいていた子供

狭いハコの中の更に狭い監獄で
ひしめき合って窒息した中学生

本来なら真っ白のキ ....
宛先のない、差出人名だけ書いた
何一つ言葉の綴られていない手紙を
したためる毎日だった

訴えたいこと
懇願したいこと
助けてほしい、と
どれだけ書いても書ききれないくらいある
そんな ....
夏の終わり
弱々しげな、うつくしいアゲハを捕まえた
微弱ながら生きているアゲハを
私は冷凍庫に入れた
なぜそんな残酷的なことをしたのか自分でも分からない
分からないまま翌日
恐る恐る冷凍庫 ....
黒い悪魔が苺畑で赤く熟れた苺を踏み潰して笑っている。
奇怪な甲高い笑い声を発しながら、楽しげに踏み潰している。
それはいっそ無邪気にさえ見えるほどに。
いかにも甘そうな艶やかな赤色の苺を踏み潰す ....
泣きたい時ほど哂いたくなるのはなぜだろう

つまづいて転んで
そのまま起き上がれなくなった事はありますか

愛する人の寝顔に無性に不安になって
揺さぶり起こした事はありますか

人間不 ....
火宅、忍土、穢土 

憂き世、苦界、六道界・・・

現し世を表す言葉の群れ
生きることはすなわち
耐え忍ぶこと



包丁を左手首に当てた時は
そんな言葉達も忘れていた
何も
 ....
beebeeさんの桐ヶ谷忍さんおすすめリスト(26)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
「春を待つ」- 桐ヶ谷忍自由詩518-10-16
「薔薇の下」- 桐ヶ谷忍自由詩618-10-4
「最後の花」- 桐ヶ谷忍自由詩718-8-24
「祈りの残骸」- 桐ヶ谷忍自由詩718-8-19
排出の快感- 桐ヶ谷忍散文(批評 ...9*14-11-8
「メビウス」- 桐ヶ谷忍自由詩814-10-29
「ハンプティダンプティ」- 桐ヶ谷忍自由詩9*14-10-7
「蓋をする」- 桐ヶ谷忍自由詩11*14-9-6
「片恋/裏」- 桐ヶ谷忍自由詩8*14-8-28
「片恋/表」- 桐ヶ谷忍自由詩11*14-8-25
「地縛霊BBA」- 桐ヶ谷忍散文(批評 ...7*14-8-21
「ストロベリーキャンディーの心臓」- 桐ヶ谷忍自由詩18*14-8-12
「サイクル」- 桐ヶ谷忍自由詩13*14-8-9
「こころのかたち」- 桐ヶ谷忍自由詩10*14-6-12
「雨ごい」- 桐ヶ谷忍自由詩20*14-6-8
「痛みのコラージュ」- 桐ヶ谷忍自由詩12+*14-5-29
「ささくれ」- 桐ヶ谷忍自由詩8*14-5-20
「コラージュ」- 桐ヶ谷忍自由詩3*14-5-11
加害者と被害者- 桐ヶ谷忍散文(批評 ...412-9-24
風呂場の鏡- 桐ヶ谷忍散文(批評 ...2+*12-8-11
「それでも死んでほしくなかった」- 桐ヶ谷忍自由詩412-7-21
「そして虚妄へと至る」- 桐ヶ谷忍自由詩312-7-20
「凍える蝶」- 桐ヶ谷忍自由詩612-7-12
「苺畑の悪魔」- 桐ヶ谷忍散文(批評 ...212-5-22
「哂う理由」- 桐ヶ谷忍自由詩811-7-21
「自殺未遂」- 桐ヶ谷忍自由詩10*11-7-14

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