「それでも死んでほしくなかった」
桐ヶ谷忍

生まれたての赤ん坊が
声を殺して泣いていた

夕陽を追いかけている内に
海に沈んでもがいていた子供

狭いハコの中の更に狭い監獄で
ひしめき合って窒息した中学生

本来なら真っ白のキャンバスを
鉛筆で黒々と執拗に塗り潰された

うつむいて足を引き摺るように
歩くのが常のためいきの実体化

苦しげな喘鳴で
それでも必死に
生きようとしていた数多の
けれども例外に属される
こどもたち

笑い声は
遠のくばかりのこの時代で
どう、生きろ、と。


自由詩 「それでも死んでほしくなかった」 Copyright 桐ヶ谷忍 2012-07-21 13:06:50
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