夜露がスカートを重たくする頃
ぽつり、と、雨
今夜はもう少しだけ
君を思ってもいいでしょうか
雨音の中のまぶたが重たく開く頃
ちゅん、と、鳥
今朝はもう少しだけ
君を夢見てもいいでし ....
小さな苺畑には
小さな白い花が咲きしめ
夜には小さな彼女が眠る
苺の香は心を癒し
さやさやと風が髪を洗う
彼女は月の夢をみる
そうしていつしか旅にでる。
つめたい湯につかる
それが
湯であった痕跡は
柔肉や
匂いで感じられる
追いだきは
追憶に似ている
それが
かつて湯であったこと
エネルギーの再現 ....
ある乙女の回想は花の色だった
淡いピンクや黄色の中の思い出や
緑の花畑に浮かぶ
白い花と初夏の香だった
乙女はその回想の中
長く艶やかな髪を切り落とした
部屋に散らばった長い髪は
まるで ....
何かを食べねばと思い
毎日何かを口にするのだが
それがなんなのか
今ひとつわからない
ある日の晩に
思い切ってそれを
まじまじと観察してみたらば
うにうにと何かが動いていた
翌日か ....
駅ビルのミラーに夕陽が泳いでメールが飛び込んだ
都会の炎が抱き合う声を 早足で抜き去った
分解されてく真夏の星じゃ
不安や嫉妬の波から明日を予測してやいないか
楽しいこと
面白いこと ....
雨上がり
日曜日の朝
まだ薄曇りの光
そんな時間帯が好き
ピアノが雫を落としたり
ギターが疼いて泣いたり
ぼくはまだきみが好きだ
なんどか呟き嘘とわかる
....
隣で何度もあくびをしては
「ねむたいの?」という
わたしの言葉をまっている
君の期待は
気づいても
気づかないふりしたから
さびしくなっていじけた
夜は長いから
携帯を鳴らすんでしょう ....
思いこみ
本気で好きになったのは
本当の そのひと
じゃなかった
夕陽が綺麗
明日も きっと 良い天気だから
明日も きっと 夕陽が綺麗
いっしょに 夕陽を見ませんか
それとも 朝陽を見ましょうか
やっぱり 夕陽にしませんか
朝陽も 夕陽も見ません ....
女子トイレに入ってきた
あなた
あっと小声上げたと思ったら
ばつの悪そうな顔して出ていった
なんだかおまぬけで可愛いよね
あれれ、わざとかな
石橋は疑って渡れ
ほとんどの誤り ....
自分で考えてみても些細過ぎる悩み事を
頷きながら聞いてくれる
復縁できたらとか下心あるのかな
彼だった頃は喧嘩ばかりしていたのに
なんだか不思議だよね
今では心を開いて相談できる
同志 ....
三十年の間
一つ屋根の下ですごした
八十八の祖母が
悪性腫瘍と知ってから
街を歩いて目に映る
すべての人が
やがては空に吸い上げられる
幻の雫に見える
曇り空の果 ....
老人ホームで
19年間すごした
Eさんが天に召された
すべての管を抜いて
白いベールを被る
安らかな寝顔の傍らで
両手を合わせた日
帰り道に寄ったマクドナルドで
....
ソメイヨシノが いっせいに咲かなくなる
春が やってきてしまった
陽炎の丘を歩く少女 青空色のブラウス
液晶の中を舞うハイビジョンの花びらが
ひらひらと ひらひらと
....
先週末に桜が散ったばかりなのに
あなたは
物置から引っ張り出したビーチパラソル
具合を見たいからと
これ見よがしに拡げてみせる
どうやら使えそうだな
アルミパイプの椅子まで組み立て ....
きみと別れて
ぼくは季節を見失う
桜を、
夜を、
匂いを、
化粧を、
花火を、
肌を、
濡れた、
性器を、
きみと別れて
ぼくは季節を ....
東口を出た歩道橋に
一人立つ
目の見えない
フルート吹きの奏でる
あめーじんぐぐれいすの
音色を前に
手押し車の老婆は通りすぎ
土産袋を持ったサラリーマンは通りすぎ
....
春雨の降る午後
私は一人傘を差し
無数の蕾が開き始める
桜並木の道を往く
三っつ目の信号を曲がり
学校に沿う坂を下ると
傘を差す
君の母が立っており
喪服の私は頭を ....
無意味なことなんてない
そばに居てくれるだけで良いんだ
それ以上は望まないから
独りじゃ寂しいから
あなたの指につながって
赤い細いその糸を切りましょう
悲しまなくていいのよ
そう
あなたにはもう誰もいないから
糸が切れたら消えて行くわ
あなたには追いつけない所に
そう
だから悲しま ....
かつて
私は詩人と呼ばれたが
いまはまったく書いていない
詩をつくらなくても
平気だ
いつまでつくらなくても
この先も平気だろう
なぜなら
いま私を詩人 ....
嘘つくことを知ってた
笑うことを知ってた
そうやって
まわりを誤魔化してた
独りで泣いて
たくさん泣いて
もう涙も出ない
君を失って
世界に色がなくなった
あんなにキレイ ....
「おつかれさま」
思わず「えっ」と聞き返してしまった
久しく労わりのことばなんて無かったのに
何かにつけて話しかけてくるし
誰かさんからの着信メールを気にしなくなった
あなたの言葉を ....
きみからの
返事 「どしたー」
それだけで
幸せ満腹
恋じゃないってば
私はあなたが不安です
あなたが不安だと言っても
あなたを信じていないとか
そういうわけでは決してないのです
私は私が不安なのかもしれないですね
私は私を疑っているのでしょうか
....
メールのだるい
やりとりが嫌になってくるから
メールとか手紙とかあんまり
気が進まなくて逃げていた
もしくは
仕掛けたりして
逃げられたり
嵌められたり
だれともつながってないと
な ....
君が もうチョットだけ 大きくなった頃には
ハロウィンのイベントも今よりもっと一般的になっているだろう
ハロウィンの日には うちに来るといい
魔法使いだかゾンビだかなんだかの仮装をして訪 ....
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送信
すべてにけりをつけて
ゆっくり回りだす世界に
打寄せる思い出
消えるわけじゃない
最後にゆっくり
涙をこらえて踊る
涙色の照明に照らされ
「またね」
言葉に隠された
「さようなら」
....
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