駅前で少し遅めの「朝定食」を食べる。
ご飯、焼鮭、大根おろし、味噌汁、生卵、漬物という定番だ。
客も少なく静かなテーブルに座り、ゆっくりした朝を過ごした。
バス停がある時代を生きている。僕は ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
一段 一段
階段を登る
二階につく
そんなことさえ
新鮮に感じる日
ふわり
記憶が消えたかのよう
あと何回
夏を迎えられるだろう
汚れた窓ガラスが
光を和らげてい ....
あなたとわたし
分かり合えないまま
会話を続け
紅茶とチーズケーキとコーヒーと
あなた うんうんと
うなずき
わたし ひたすら
ことば紡ぎ
あなた そっかそっか
相槌打つ
....
右目がごろごろするので
鏡で確認すると
目の中に台風が発生していた
降った雨が可哀想な人のように
涙となって溢れ出した
眼科に行ったけれど
不用意に右目を覗いたお医者さんは
風で目の ....
暗いボックスに
抱き合って動かない男女が居た
感傷的なメロディーを弾いているピアノ弾きは
禿げかけた頭を時折 片手で撫でていた
頭の中も躯の中も
お酒で一杯の筈なのに
....
眠いのに
なんとなく夜更かししたい
なにがしたい訳でもなく
ただ夜更かししたい
ワルイコとじゃなくて
読書じゃなくて
テレビじゃなくて
ただなんとなく
ヨフカシしたい
カタカナにする ....
もしもし
命の電話ですか?
命の電話、私も一台予約したいんですが
命の電話って言うからには
特別仕様のiPhoneか何かですよね?
えっ、そうじゃない?
そうじゃないって
iPhoneじ ....
人間は個として
およそ同じ体積の中で
古い身体を処分し 新しい身体を作り 生きている
樹木というものは
死んだ古い身体の上に 新しい身体を重ねながら
体積を増やし続け 太く大きくなってい ....
大の字になって
仰向けになって
なにもかもから
解放されるって
そんな気分を
味わいたいと
そうは思って
でもなかなか
できやしない
そんなことを
そう簡単には
できやしない
....
私は何者でもない大人から
どこにでもいる大人に
成長したよ
初めて触れた彼女の素足は
子供のように小さくて
すべすべとしてなめらかで
指が六本あったけれど
幸せを運んでくるための
六本目なんだと
そう言ってくれた彼女の笑顔が
愛らしいことこの上な ....
町の外れに歩道橋ができた
町道の行き止まりのあたりで
民家はほとんどなく
小さい子供がいる地域でもない
町長の公約だから
それだけでできた歩道橋だった
町長は毎朝早くから
歩道橋の掃除を ....
時を隔てて人は変わる
人が変わると街が変わる
街が変わると想いは募る
変わるのは人の心なのかそれとも街なのか
思い出は深く胸に刻まれ
けれども風景は変わっていく
思い出してごらん
....
自由詩の「枠」に苦しんでいるから
定型詩ほどわかり易くないからこそ
常にとらわれている型に苦しむから
詩人は毎日を自由に生きることができる
と、思っただけのことを書いてみた
島々が海の表情和らげるただ青いだけではない多島美
あの歌を聴けばあの頃蘇る匂いも風も空気に混ざる
コーヒーの苦味はいつも大人びて経済誌よみ頭が痛い
ベトナムの中部に出来たリゾート地新 ....
{ルビ十重奏=デクテット}な鈴虫の競い鳴きに
飲んだアイスコーヒーのグラスもそのまま微睡む
日暮れ前
曇りならば昼間でも鳴く
それは{ルビ八重奏=オクテット}から{ルビ七重奏= ....
好みの女優の舞台の相方を見て
美男過ぎて僕の入る余地はないと思う
終了
学校での校則から叩き込まれるのは
重要なのは地頭ではなく
理不尽でも従わねばならぬルールなのだ
ということを知る ....
突然降り出して
ものすごい勢いで
地面を打ち付けて
雷まで鳴り響かせ
そのくせすぐに止んでしまう
そんなヒステリックな雨に
辟易としてしまう
だのになす術なく
雨粒に打たれたりして
....
朝 目がさめて
僕がお布団ともっと一緒にくっついてたい
という日
と
僕はもう起きてなにか始めてもいいと思うのに
お布団がやたら僕にくっついてくる
という日
がある
....
洗濯したシャツを畳んでいると
シャツに畳まれている私があった
痛くないように
関節が動く方向に畳んでくれた
畳み終えると皺に注意しながら
シャツはそっと私をタンスに仕舞った
衣替え ....
家の窓の中にいると
そこが家の眼だということを
うっかり忘れそうになる
薄いカーテンを開け放ち
風を出迎えると
人の眼も
家の眼も
まばたきする
季節のかわりめに
少し驚くようにして ....
真夜中、夜の川
川面に突き出た瀬岩を
{ルビ躱=かわ}しかわしながら
ぼくの死体が流れていく
足裏をくすぐる魚たち
手に、肩に、脇に、背に、尻に
触れては離れ、触れては離 ....
人なんて 一緒に食事してみないと分からない
お酒を飲める人ならば
呑ませてみないと分からない
いつもそう 思っているが
同僚の彼女は呑ませてみても分からない
生ビール中ジ ....
夜闇に
明るく点す灯のように
緑の街路樹 揺れに揺れ
街灯に照らされ鮮やか
波打ち唸って叫んで
なんて孤独なんだろう
宿命だよ、孤独は
欺瞞に満ちたこの社会で
孤立だけ 回避し ....
まぶたの裡に 月をおさめ
人は目ざめる
自己の嵩に 食べられながら
胸の端に 散らす花
祈りは いつも途中で待つ
雨を迎えに 降りつかえる
命のジグソーパズル
無 ....
忙しいとは、
心を亡くすと
書く。いけない
自分をとりもどさなければ
心が泣く
私は、私が
信じる
存在を
信じる。
人は人、己は己だ
{引用=※五行歌とは、「五行 ....
あれは満月に近い
月の創り出す道が湖面に伸びている
瞳に 孤高の道だと分かっていながら
光って見えてくる
湖上の月はいつも
私の側にいて
前進することに迷い怯懦する夜
....
太陽が創り出す
光の道が伸びていく
自分が進む道が
わかりやすく光って見える
迷うこともなく前進出来る
太陽はいつも側にいる
雨の日は見えないけれど
見えないだけで側にいる
光 ....
過去があり未来があり
望遠鏡があり顕微鏡がある
意味はないのに
生きる意味を考えてしまう
暇だからだろうか
心に弦を張り
白紙に戻す
人生とは と問われれば
後悔
無意味
成り ....
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