すべてのおすすめ
ツクツク
ツクツク
ピーヨ ピーヨ
それが貴女の
独り言 だったのかもしれない
と、今になれば思うのです
病院から外泊すると
東の窓際で
黙って 鳥かご ....
カーテンも取っ払った六畳間
テレビと わずかな生活用品に炬燵が一つ
職場近くへ引っ越すための段ボールが
キッチンと廊下に並ぶ
「部屋が狭いから、ずいぶん処分したのよ。」
友人 ....
テイクアウトのピザを
たらふく食べ
飲みすぎた赤ワイン
炬燵で寝落ちし
ふと目覚める 耳の底の音だけしかない
深夜
空ビン洗って
ベランダの収納ボックスへ入れる音 ....
雑然とした卓に
ちょっと戯れに挿した
寒椿の 紅い沈まり
眠れないのです
時は重たいものですね
全て寝静まっているのに
音があるのです
秒針が刻む
藍 ....
「紛いもの」
凪の夜
寒空が黒いインク
こぼした水面、すべりゆく
遊覧船は
まるで冥界の古城
「中古マンション」
三階で 物干し ....
「独白」
霜の立つ
音のきこえそうな
夜に一人で居る時は
吐息など捨てようと
幾度 思った事か
「街の鴨」
商業施設の脇を流れる
堂の川 ....
ふしあわせ というものが
とくに こころ美しく
あたまのするどい ひとに
みいる のでしょうか
はんぶん いろづいた林檎の
つめたい甘酸っぱさを
あなたは こころ ....
熱砂 と
真空
ごう音と
死の静寂
閃光 と
奈落
重々しい
数十万の足音が
はてもなく続いて行く
銃をかつぎ
一すじの乱 ....
小学二年生ぐらいかな?
道幅いっぱい 横並ぶ
かしましい女の子らの
背後にピッタリくっ付き
駅へ向かう
なんだろう?
ラップかな?
彼女達の口から繰り返し
飛び ....
又 戻って来た
物憂い瞳で 上手く口説き
心をさらいに来る悪魔
親しげに抱きしめてくる腕
あたしがいつも
浮き草の様に揺れ動いているのを
充分に知っている男
取り ....
最期を迎えるならば
例えば
深い深い夜
病室のベッドに居て
国道一号線走る運送屋の
大型トラックの音に
ただ耳を傾ける事の出来る
そんな自分でありたいのかもしれない
....
ある女が 酒房に惹かれ
やかましいその片隅に
毎夜坐っていた
沈んだ目が時折光る時
女はカリカリと氷をかみ砕き
強い酒に挑んでいる様に見えた
何日かすぎた頃
....
祇園の石段の上から
灯の街を眺めさせたいと
私の腕をむりやりつかんで
つれて来た あなた
遠い異国の昔
王宮の血汐がはねあがった日
革命の巴里祭
そして日本では祇園祭 ....
暗闇の中には沢山の物語がある
パリの老いた靴作りが
ハンチングを傾けてかぶっているのは
むかし街の女に
とても粋だわ と口笛を吹かれたからという話
それでそ ....
路の端
行きすぎるヒトの脚許
恐れもせず
ヨチヨチ
細い舗道で歩調ゆるめるヒトたちの視線
浴びる君はなんとか
横断すると
また 喫茶店のガラス扉の前
軒下う ....
変な 顔の子だった
くしゃみをした犬の子の様だと人が笑った
その子が 二十歳をすぎて
段々と美しくなって来た
笑う時、口許に愛嬌がある
と人が言った
いや 目もとが ....
その視線はどこを見るでもなく
誰を みるでもなく
そして何に
留まるでもない
体になじむポロシャツと
洗いざらしな作業ズボン姿のおじさん
きっとシルバー人材センターか ....
ある人を喜ばせる役目を終えて
そのメルヒェンを忘れ果て
路上に居る様には見えなかった
マスコットキャラクターの小熊
目的のある足は目も触れず通り過ぎて行く歩道で
しゃがみ込ん ....
ある晴れた日に一軒家の庭で
赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
母と見たのは昔の話
花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ
茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
「この花は ....
日の傾いたまち角で
ふと立ち止まってながめ見る
昼顔
香り無く素っ気ない素振りに見えた薄ピンクの
一日花
そのアナタが一瞬だけ、わたしへ
ふるふるっ と 照れくさそ ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
暗いボックスに
抱き合って動かない男女が居た
感傷的なメロディーを弾いているピアノ弾きは
禿げかけた頭を時折 片手で撫でていた
頭の中も躯の中も
お酒で一杯の筈なのに
....
{ルビ十重奏=デクテット}な鈴虫の競い鳴きに
飲んだアイスコーヒーのグラスもそのまま微睡む
日暮れ前
曇りならば昼間でも鳴く
それは{ルビ八重奏=オクテット}から{ルビ七重奏= ....
人なんて 一緒に食事してみないと分からない
お酒を飲める人ならば
呑ませてみないと分からない
いつもそう 思っているが
同僚の彼女は呑ませてみても分からない
生ビール中ジ ....
あれは満月に近い
月の創り出す道が湖面に伸びている
瞳に 孤高の道だと分かっていながら
光って見えてくる
湖上の月はいつも
私の側にいて
前進することに迷い怯懦する夜
....
気持ちの不安で落ち込んだり
あるいは高揚感に落ち着きの無くなってしまう時
深呼吸する
そして私はシングルポイントの六角柱水晶を握る
掌の柔らかい部分に三辺の角が当たり心地良く
....
ペールベージュのストッキングの脚は歩く度
踵に隙間のできるパンプスが
擬音で表現しずらい音を立てる
そのアレグレットな足音に
澄んだ媒介を感じとって
追い抜かず 私は着いて ....
にこやかに前を歩く私の後ろから着いてきてくれる
あなたの足取りはまるで
デパートの屋上へ遊具目当てにやって来る幼児の父親
やっぱり、ここからが一番綺麗なのよ!
自慢げに私がそう言 ....