小学生のころ、夏休みになると海へよく行った
高学年になると波に挑む遊びをよくしたものだった
大きな波がきたとき、そびえ立つようなその壁のふところに飛び込んで
波を潜り抜けるという単純な遊び
....
朝、のどの違和感で目覚める
よるじゅう、26度に設定した冷房のせいだろうか
そうだとしてもそれを選んだ自分の失敗だ
イソジンでうがいする
その赤褐色の液体の色はどこか禍々しくて
さらに薬品特 ....
かいわれ大根
小さいけれど
わたしの収穫
何もないことが
朝だと知った
寄り添う、だなんて
なんだか軽い言葉
そんなものにも
救われたかった
窓を開けると
蝉しぐれ ....
夏が押し寄せてきた
ブルーのイメージ
ブルーだけど薄いブルー
暑さだけで考えればレッド
全体的に考えればブルー
夏は海というイメージ
青空というイメージ
ブルーで包まれている
....
真夏の日中に上空を塞いでいた、ひとつの低い層がなくなって、青春の夏はより遠くまで反射して、よりいっそう真夏の夜の夢に届きやすくなる。より受信しやすいように部屋のなかの灯りをすべて消す。多分に雨の吹き荒 ....
空にはモクモクと山のように雲が聳え
熱風に包まれる
公園でバットがボールを打つ音
子供たちのはしゃぐ声
蝉がミーンミーンと伸びやかに鳴いている
白い貝殻たちは
海にさらされた
うつくしい骨
空につるされた
ほねとほねは
風にゆられてぶつかり合い
連れ立って
清んだ音を生んでいる
望めば
とぎれることがないように思える
....
この世にやってきて
三ヶ月ほど経った赤ちゃん
乳しか飲んでいないのに
ぷくぷくと太った哺乳類
腕に輪ゴムをはめたようなくびれが出来ている
そこに分け入ると
赤ちゃんはわたぼこりを隠していた ....
食べたもので人の身体は出来ています。
そんなことはいちいち考えずに
その日の風まかせで
献立を決めてきた
心は何で出来ているんだろう
手元が狂うのは永遠の一瞬
包丁の刃で切り落とし ....
また明日どんな日になり何をする?もう一人いる自分が聞いた
早朝のラジオ体操する広場今はなくなりアパート並ぶ
公園も広場もいつの間にかないマンション建つもガラ空き状態
畑とか田んぼが見 ....
夜の耳工場で働く小人は
めっきり上がらない時給に
ぼやきながらも
今夜も対の耳を作っています
夜は短いようで長く
或いはまた短く
それは人生もおんなじだね
耳を買いに来る人は
そん ....
ぎゅっとにぎった手のひらに伝わる金属の鎖の冷たさ
そっけない硬い木の座面
離してはだめだよ と降ってくる、声
靴底で蹴るとざらっとして土埃
膝で漕ぐたびに
行ったり来たり
ふりこはゆっくり ....
恋は太く短く
愛は細く長い
恋は甘酸っぱいかい
愛は重く苦いかい
それを知りたくて
ぼくたちは生きてきた
わかりたくて
わからなくて
ふたり暮らしたね
何時の日かぼくが息 ....
長い通院生活も今日で終わる
とある春だった
通い慣れた道、河川工事はまだまだ続くらしい
詳しくは知らないけれど新しい駅が出来るという
パン屋、スーパー、マンションや公園、行き交う人々
駅を支 ....
三月に降る小雪をつかまえようと
手のひらを天にむかって
差し出せば
どの子もふわり、
風にひるがえりながら
上手にわたしをよけて
アスファルトへと着地するから
こんにちはも
さようなら ....
もうひと眠りしたい
自転速度が速まっているのか
あっという間に朝が来る
太陽は影をつくるが道を譲らない
まあいいや
高校二年 夏だった 君の詩をつくった
思い込みの激しい一八行だった
傷 ....
かつて幼い女の子の髪を結んだリボン
うすももいろでつるりとしたサテンの手触り
持ち主をなくして
しょげかえっているかといえば
案外そうでもなくて
虹へ続く路を
しゅるっしゅるるる
先頭で ....
何かのふりをして歩いていると、詩を書くこころが僕
のなかからふらふらと彷徨い出て来た。そいつはゆら
ゆらと漂うように移動して、道行く人たちをとおくを
見るようなぼんやりとした眼差しで見たり、空を ....
ツクツク
ツクツク
ピーヨ ピーヨ
それが貴女の
独り言 だったのかもしれない
と、今になれば思うのです
病院から外泊すると
東の窓際で
黙って 鳥かご ....
絶対届かない詩がある
死者への詩だ
私はまだ生きている
そんなにじろじろ見ないでくれ
独り言は遠い
亡くなった犬が鏡の中から
わたしを見ている
わたしの手のひらに隠している
おいしいものを知っているのだろうか
名前を呼ぶと返事のように尻尾を揺らす
黒い鼻はしっとりと濡れ
いかにも健康 ....
痛点を通過する
ブランコに揺られて
春を待つ間に
チェニジアの
ハイスクールも
時間が経った
珍しく向かい風の
匂いがする朝
皮膚病だらけの
野犬に看取られて
誰もが死ぬ、 ....
あなたがいま
微笑みながら
私は幸せです
そう告げたら
私は心底から
唇を噛み締め
酒を呷りつつ
醜く口を歪め
祝福を繋げて
思い出と共に
眠りについて
忘却したのに
....
カーテンも取っ払った六畳間
テレビと わずかな生活用品に炬燵が一つ
職場近くへ引っ越すための段ボールが
キッチンと廊下に並ぶ
「部屋が狭いから、ずいぶん処分したのよ。」
友人 ....
もやぐ朝
夜が朽ちて
朝が生まれる
霧に覆われた街は
港へと変わる
赤い太陽は
無音の出港の合図
けれど想い出は
いつでも切ない
胸に
錨をおろしたまま
さ ....
お骨はゆうパックで送れるんだって
へぇ
そんなわけで叔父の骨を預かって
春と夏が過ぎた からんと
最近は近所に犬を見なくなった
骨を差し上げるあてもなし
わたしが咥えてしまおうかしら
叔 ....
ともに歩いている砂浜、
こちらをむいて、
つよい波風にすこしウェーブがかかる、
花のように、首を、傾ぐ、
ながい黒髪の、まるでオニキスのようにまるい、
とてもおおきな瞳、
しろいレース柄の ....
人類やってるね
えっ?
やってないのか。
・・・・
一番最初に火を付けた人がいるんだよね。
物理的発見であり発明の話だ
火を付けたというより、火を創ったともいえる
実用化したと ....
卵を割ると中には
砂しかなかった
食べ物を粗末にはできないので
そのまま火にかけると
砂の焼ける匂いがする
今ごろ砂場では妻と娘が
いつまでも完成できない
卵の城を作っていること ....
テイクアウトのピザを
たらふく食べ
飲みすぎた赤ワイン
炬燵で寝落ちし
ふと目覚める 耳の底の音だけしかない
深夜
空ビン洗って
ベランダの収納ボックスへ入れる音 ....
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