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「 あさって帰る、戸締り頼む。」 

親父の書いた太い字の 
メモはテーブルに置かれ 
日頃にぎやかな 
家族みんなは婆ちゃんの 
米寿の祝いで熱海に行って 
ひっそりとした家の中 
 ....
ほねつぎから帰った祖母が 
我家の壊れたインターフォンに 
「故障中」を貼ってくれと 
ガムテープをさしだした 

腰を痛めて休養中のぼくは 
マジックで「故障中」と 
力強い字で書いて ....
雨の日にモーツァルトの{ルビ弾=ひ}く 
ピアノの単音を背後に聞きながら 
今頃声をかけあい 
ひとりの老人を介護する 
同僚達を思い出す 

{ルビ忙=せわ}しい職場を離れ 
こうして ....
棚の上に置かれた 
小さい額の中は 
去年の祖父の墓参り   

過ぎた日の 
こころの{ルビ咎=とが}を忘れたように 
墓前で桜吹雪につつまれ 
にっこり並ぶ 
母と祖母 

雲 ....
一日というものが 
こわいほど 
早くに暮れる 

きっと人生は 
序章から終章まで 
風にめくれる無数の{ルビ頁=ページ}を 
一瞬のひかりでつらぬく 
一冊の本 

一日の終わ ....
 昨夜の「ぽえとりー劇場」のオープニングは、京
都の若き詩人・choriさんの詩を読んだ。最近
現代詩フォーラムで彼の素晴らしい詩を読んだので、
「ぽえとりー劇場」の幕開けにもふさわしい詩の内
 ....
うつぶせに寝る 
一週間分疲れたからだを 
ほねつぎの先生は 
大きい手の親指で 

 ぐぃっ ぐぃっ 

とのばしてくれる 

「 マッサージしてもらい 
  すじがのびると 
 ....
椅子の並んだ暗い部屋
映写機の背後に立つ人が 
かちっとスイッチを入れる 

 闇をつらぬくひかりの筒 

スクリーンに映し出す 
交差点を行き交う 
無数の人々の足 

試写室の ....
{ルビ呑気=のんき}な仮面を被っていても 
ほんとうは 
わたしもあなたとおんなじように 
ひとつの大きい影を背負って 
流浪の旅路を歩いています 

木造校舎の開いた窓に 
手を振って ....
心から重荷を取り除けない 
無気力な秋の日 
よい本を探しに本屋へ歩く 

背後の空から 
何者かが舞い降り 
わたしの髪にのったので 
{ルビ咄嗟=とっさ}に手を出し振り払う 

 ....
わたしは怠け者であるゆえに 
連休前に風邪をひき 
おまけの休みの時間のなかで 
らんぷ一つの寝台によこたわり 
両手に持った本を開いて 
在りし日の 
詩人の哀しみを読む 


  ....
らんぷ一つのテーブルに 
湯飲みはひとり 
ねじれた影をのばして立っている  

窓の外から聞こえる 
鐘の音や鈴虫の唄
歪んだ唇を開いた{ルビ縁=ふち}からすいこみ 
器の形のままに入 ....
朝食をとるファーストフード 
一年前はレジカウンターの向こうで 
こまめに働いていた 
君の姿の幻を 
ぼんやりと夢見ている 

その可愛らしさは 
指についたシロップの味 
今ここに ....
先週皮がめくれてた 
お爺さんのお尻の傷を 
トイレの時に確認したら 
するりときれいになっていた 

看護婦さんもやってきて 
「先週塗ったわぜりんが効いたのね 
 わぜりんは、いい奴 ....
家族による暴力で 
老人ホームに来るごとに 
体中の傷がどす黒くなってゆく老婆 

国も 
市も 
施設も 
ケアマネージャーも 
ヘルパーも 
一介護職員の自分自身も 
手を差し ....
居酒屋で 
ビール片手に酔っ払い 
まっ赤な顔して 
柿ピーの一つひとつを 
座敷畳の隅に並べ 
目尻の下がった
頼りない 
顔をつくる 

「 なんだか俺みたいだなぁ・・・ 」 
 ....
銀座の路地裏に入ると 
色褪せた赤い{ルビ暖簾=のれん}に 
四文字の 
「 中 華 食 堂 」 
がビル風にゆれていた 

( がらら ) 

曇りガラスの戸を開くと 
「 イラッ ....
明るく前を向いて 
「365歩のマーチ」を皆と歌い 
両手を振って明日へと歩む 
「あるべき姿のわたし」 
の下を 
「ふぬけたわたし」の亡骸が 
独りうつむいたまま 
低空飛行している ....
喪服で参列する
一人ひとりが 
棺に横たわる亡骸へ 
花を捧げるごとに  

百歳の老婆の
寝顔はほころぶ 

火葬場で焼かれる  
老婆の百年 

晩夏の
蝉の鳴声響く 
 ....
木の幹にとまり 
無心に鳴いて一週間 
地に落ちて 
引っくり返った蝉の亡骸 

無数の蟻に 
体を喰われながら 
丸い瞳に陽の光をうつし 
両手を合わせていた 
スタンドの明かり一つ 
扇風機の音が聞こえる部屋 
木目の壁に映る 
後ろ姿の影は 
黙って首を振り続ける 

明日 
どんなに騒ぐ人がいようと 
やる気の無い人がいようと 
ぼくは ....
お香の煙が立ち昇る 
傾き揺れる炎の指さき 
すうっとのびて 
天をさす 


  * 


{ルビ蝋燭=ろうそく}は 
人と似ている 

明かりを灯し 
身を溶かし 
や ....
雨上がりの街を歩いていたら 
何故かどしゃ降りの音がするので 
振り返ると 
閉店前で半開きのシャッターの内側で 
無数のパチンコ玉が流れる音 

今日一日の間に日本中の店で 
この世の ....
人込みに紛れ 
駅構内の階段を下りていると 
背後に 
「 だいじょぶですか 」 
という声が聞こえ 
思わず振り返る 

車輪の付いた 
買い物かごの取っ手を 
細腕で握り 
「 ....
なぜあなたは 
病の親の世話をして 
毎朝歯を喰いしばり 
家の門を出て来る部下が 
体調崩し仕事を休む 
辛いこころが見えぬのだ 

わたしは今日も ふんふん と 
あなたの腐った愚 ....
( 世界は 
( 透けた瓶の内にある 

森の小道を裸足で走り 
汗をかいたラムネの器の底を手に 
真夏の空に傾ける 

( 星のころがる、音がする。  

{ルビ蝉時雨=せみしぐれ ....
夏も近づく梅雨の晴れ間 
老人ホームのお風呂場に 
次から次へと送り込まれる 
体の動かぬお年寄り 
丸い背中をごしごし磨く 

自分の姿を鏡を見ると
いつのまに 
ずぶ濡れのTシャツ ....
犀川の 
芝生の土手に腰を下ろし 
静かな流れをみつめていた 

午後の日のきらめく水面には 
空気が入ってふくらんだ 
ビニール袋が浮いていた 

近くで
ぴちゃりと魚が 
跳ね ....
よく晴れた日 
玄関を開くと 
小さい{ルビ向日葵=ひまわり}の植木鉢が 
倒れていた 

恋に傷つき震える 
君のようで 
ぼくは{ルビ屈=かが}んで 
倒れた鉢を両手で立てた 
 ....
風船の顔をした 
君の彼氏が 
口先ばかりの愛を囁くので 
「 死にたくなった 」と 
君は深夜のメールをぼくに送る 

驚いて、瞳もぱっちり覚めたので 
深夜の散歩で月を仰いで 
川 ....
あおばさんの服部 剛さんおすすめリスト(541)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
「_暖炉の炎_」_- 服部 剛自由詩7*07-10-31
上司のくしゃみ_- 服部 剛自由詩207-10-26
モーツァルトの指_- 服部 剛自由詩4*07-10-26
カツのころも_- 服部 剛自由詩8*07-10-25
パスカルの顔_- 服部 剛自由詩3*07-10-25
詩人・一期一会〜chori氏「賛歌」に見る_幸せの在り処_に ...- 服部 剛散文(批評 ...4*07-10-22
「_ほねつぎ_」にて_- 服部 剛自由詩7*07-10-11
空の映写機_- 服部 剛自由詩607-10-7
山下_清_- 服部 剛自由詩7*07-10-7
虫の信号__- 服部 剛自由詩207-10-5
風の顔_- 服部 剛自由詩707-10-4
湯飲の影_- 服部 剛自由詩507-10-3
金細工の人形_- 服部 剛自由詩4*07-9-21
わぜりん君_- 服部 剛自由詩7*07-9-19
老婆の心臓_- 服部 剛自由詩3+07-9-14
福笑い- 服部 剛自由詩707-9-2
中華食堂- 服部 剛自由詩1007-8-31
幕の向こう_- 服部 剛自由詩307-8-31
献花_- 服部 剛未詩・独白407-8-24
いのり_- 服部 剛自由詩607-8-18
扇風機_- 服部 剛自由詩407-8-13
蝋燭の灯_- 服部 剛自由詩607-8-6
選挙の日_- 服部 剛自由詩107-7-30
忘れもの_- 服部 剛未詩・独白8*07-7-26
虫の味_- 服部 剛自由詩11*07-7-24
蝉時雨_- 服部 剛自由詩11*07-7-19
年寄りの湯_- 服部 剛自由詩307-6-29
犀川_- 服部 剛自由詩18*07-6-12
白蝶_- 服部 剛自由詩13*07-6-5
不思議な交際_- 服部 剛自由詩14*07-6-4

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