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たとえば僕が
宇宙人にさらわれたとして
僕の不在に
気がつかない人は多いだろうが
僕の不在を
嘆く人は片手で充分数えられる
別に怨みごとを言うつもりはない
そんなものだといつも思 ....
さして間もなく惚れました
そして間もなく晴れました
涙がほんのり滲みました
案外あっさり乾きました
願いはいくらか満ちました
想いはいささか欠けました
新たな痛みを知りました
....
愛しているよとささやいて
私の心
を盗むあなた
断りも無しにと腹立たしさを覚えたとしても
ある意味期待していたのは確かことで
四十六時中、あなたのことだけを考えていた自分に気付く
....
時の器に
夜がすこしづつ満たされていく
眠りついた月の横顔
埋もれた砂時計の砂丘は、はだしのぬくもり
天よりふる砂を見つめては
閉塞されたガラスにふれる
砂の音はや ....
金の入日に 繻子の黒
金波 頭上に おわします
思えばオーロラ 光のループ
金の入日に 銀の水輪 ゆれる人蔭 金輪奈落の水際の
あのかた あちらに いらっしゃる
昼間 ....
茜の空と群青の海
私は その{ルビ間=はざま}に行きたくなりました
赤紫の{ルビ間=はざま}は 空でも海でも陸でもなく
名の無い存在で
寂しげのような 楽しげのような
{ ....
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心を写す鏡のようだ
朝のsoraを見てそう思った
自分の心持ちが分かるような気した
元気がある時
後ろ向きな時
強い時
弱い時
so ....
山すそに嫁いで間もない頃は
会社から帰って玄関を開ける前に
そっと結婚指輪をみつめた
関所を越える前の通行手形
新姓と共に 自分で選んだ道
でも まったくなじみのない夫の家族達
ただいま ....
今日に限って 折傘忘れてスコール
タバコ屋の小さな軒先で身を寄せながら
雨粒を指で拾い 掌で{ルビ弄=もてあそ}んだ
店奥のシャイな婆さんは
アガリっぱなしの{ルビ緞帳=どんちょう}が下り ....
{画像=110721225828.jpg}
鯨にある指先(地上)の記憶のように
人間にも忘れてしまった記憶がある
それはsora(翼)の記憶
身体の奥にある翼(骨)の記憶を頼りに
背 ....
いたずらな風にでも煽られたのか
薄桃色の世界が一瞬目の前にひろがった
※
男のひとは女性の下着に恋するものらしい
くしゃっとした
小さな布切れなのにね
でもそれは男の ....
{画像=110417071821.jpg}
はっとして
涙が頬を伝い落ちる時、
私は独りで夜中に起きている。
何も言葉を語ることはできないし、
何をしていいのか、
何が正しくて、
....
白く降り止まぬ豪雪に立ちつくし
枝は のしかかる重みにバリリと折れ
春の澄み切った青空の下
まるたんぼうになって
根はネズミにかじられ
もう売り物を実らせない
切り倒され処分される ....
不器用な視線で
私の背中をなぞる人
その深海の底までひとすじに
繋がる台詞が浮かぶなら今
けれど
ただのひとつの言葉を
手繰るよりもずっと早く
分厚い波が途切れず ....
手さえ握られたことないのに
あれは高校二年生の今頃だったか
「あの子ってやりまんらしいよ」
そんなあらぬ噂を言いふらされたことがある
誰かしら噂になっているなと感づいていたけど
まさ ....
いっぴきの蝉が
務めを終えたように
仰向けに落ちて
空をひっかいている
親しんだ木々の幹に
戻る力はもう無い
おまえの瞳が
磨きたての宝玉のように
くろぐろと光をたたえるのが
....
ひとりの物になる為につくり込まれているわたしは
その為に負う孤独には強くあるよう鍛えられている
それはとても危険なことで
....
花はどこへ行った
なんて問い続けるよりも大切なものが私たちにはあった
それが今の生活であることは否定できないし
ひとの望むものなんて目に見えるものに他ならないのだから
ありふれた結婚生 ....
じーじーじー
喚く歌が煩くてしょうがない
もしも手に届くところにあれば
躊躇無く握りつぶせるのに
きょむきょむと潜む足音
横になれば耳元に囁く証
生きているということが
死んでいくと ....
ただ少し口に入ればいい
最初の動機はそんなもの
何となく物足りなくて
少しだけ勿体無くて
細かく噛み砕いてみると
随分と違う味がするもので
気がつけば虜になっている
僕にとって君 ....
田舎者なんです
心も
身体も
だからいつでも
思い出します
寂しいときでも
どんなときでも
まるで
お風呂の
薪の
泡の
山の向こうに沈む夕日の
雑木林の
とげとげの
それ ....
青すぎる空が 濃淡もなく
(雲切れひとつあるでもなく)
ただのっぺりと広がっている夏の朝
プラタナスの巨大な葉が繁る
街路樹の陰はしかし小さく(陽が高い)
今はもう打ち水のない広い舗道を ....
「僕が愛おしいと思う女は他人が見たら欲情もしないような女だったんだ」
と雨の中で呟き煙草を放り投げる
傘なんて大嫌いだ
全身を複雑骨折してしまえばいい傘なんて
不貞腐れて雨に濡れて歩き ....
詩を書いてゆこう
俺は詩を書いてゆこうと思うよ
なぜ
何のために
何を目指して
詩を書いてゆくのか
なんて、そんなこと
知らない
毎晩、缶ビールを飲むのと
同じ ....
夢の続きを見るために
ぬぐいきれない
やさしさに染む
夜に泣き
夜を咲かせて
また夢になり
夢の続きを見るために
つかい慣れない
火に冷める
いつからか
....
母は
美しい
緋色の指輪を持っていた
『緋恋の指輪』
14の時のことだ
母の化粧箱の中には
翡翠のブローチに
銀のイヤリング
真珠の髪飾りや
琥珀のネックレス
....
大騒ぎしていた隣の部屋の大学生も
煙を撒き散らしていたスポーツカーも
凛と顔を上げていた向日葵も
みんなみんな、眠ってしまった
ベランダから両足を突き出して
ぶらぶらと泳がせて笑ってみる ....
別れた人達を思い出す度
そっと痛み出す胸の奥
もう二度とは帰れぬ日々よ
化石のように静かに眠れ
忘れたくないことと
忘れてはならないこととを
決して見誤るな
青春は美談として語り継ぐため ....
イトしくて
カナしくて
仕方ないから
わたしは「夢」を視る
捉えどころのない
その想いを
苦い香の紅茶で飲み干して
白と黒の兎を
透明な「夢」
染まらない世界で追う
....
緑色の風が薫る農道から
また少し小さくなった背中に
懐かしさと見馴れなさがやって来て
目頭を抑えることも忘れ
あてがわれた離れ屋に駆け込んだ
何で報いる事ができるのか
口に出そうとする ....
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