忘れられないものを抱きしめると
思いのほかウェットで
涙まみれに崩れて僕の服を濡らした
夕日の差し込む児童公園と
ブランコの作る影が
混じりあって溶けて
瞳からあふれ出す

ジョバンニ　.... フランスパンを食べ終えた
皿にできたパンくずの水玉模様
コーヒーを飲みながら見つめている

隣りの席に座っているカップル
若く楽しげで
物憂げな私に
新鮮な印象を与えた

反対側の席　.... よしたあとでみつめて
うつしそびれたのどかなあおを

石の空にこすりつける
指が汚れて

しかたないとふきとる
雨が来ない

ぱちと　さえぎる
空腹の火種

湿りに破れていく草　.... 　
　
病院の待合室で
ヒマワリたちがソファーに並んで
自分の名前が呼ばれるのを待っている
けれどヒマワリたちには
個別の名前が無いので
何時まで経っても呼ばれはしない
ヒマワリは次々　.... 背中に翼を背負うことは
はばたくたびに涼しくて
さみしい

甘栗をひとつつまんで
お口にぽい
秋のしるしに鐘が鳴る

君の爪の色はいつからそんな色
くちびるは
いつからこんなにやわ　.... 家族といっても母とふたり

小さな箱のような部屋を
小さく切り取ったテーブルに
向かい合うことは少ない

たとえば小さい頃は鍵っ子で
学校から帰っても一人
母は生きるために働くことに懸　.... 見わたす夕空は
｛ルビ菫青石＝アイオライト｝　｛ルビ藍晶石＝カイアナイト｝　｛ルビ天青石＝セレスタイト｝のモザイクです
君の微笑みに
さびしい火がともります
ああそのせいか
君の黒い外套　黒　.... 　
1　

窓
表面積に
くちづけ
　

2
　
空が
墜落する
ポケットへと
　

3
　
ひたひたと
歩く
電信柱を
　

4
　
痛み
翼を　.... 缶切りで鯖味噌缶を開封し背中まるめてわぶわぶ食べる

薄荷飴ひとりで舐めてさびしがる君のことなど想ってみつつ

朝刊の明朝体が目に刺さる夜明けどこかで鳥が鳴いてる

晴れた日の午睡が好　.... でもそれは、
あ、という言葉ともつぶやきとも知れない
といきするしろいすいじょうきの
連結に
わたしは路上をしゅぽしゅぽと
滑走する

屋根つもる
雪たちに挨拶する
敬礼をびしっとか　.... 十一月になり寒い
合羽を着て雨の中　林檎をもぐ
はしごの四段目くらいまであがると
葉につかまり　じっとしているトンボがいる
明日は雪の予報で今夜にも降るかもしれない
最後の日なんだ
羽を掴　.... 　
昨日より冷たい君の
手を引いて
坂道を上る
君の腕が肩から
肩から抜けてしまわないように
そっと引いて上る

途中、誰がつくったのか知らないけれど
昔からある赤茶けた工業地帯が
　.... ・
どういうわけかうちのごみぶくろだけ
いつもあけられてしまって
中身がまき散らされているの

ある日曜の朝
母が困惑顔で言ったとき
それはきっと妹を狙う肉食獣の仕業に違いない
とわた　.... 今年もまた
死にぞこないの夏の息の根を
ひと思いにとめてやる
そんな季節になりました

終電に揺られながら
窓の外を流れる夜景と
イヤフォンから流れる音を
頭の中で混ぜ合わせます

　.... 宇宙で
きみと待ち合わせして
渡しそびれたままの手紙を
きみに渡したい

そしてそこから
もう一度だけ
やりなおしてみたい

終電が終わったあとの
ちいさな水たまりみたいな
駅前　.... 婚姻するハツカネズミの
店先の行列を
にこにことながめている
クリーニング屋のむすめが

やわらかく透過する
窓辺の
病院の待合室で
おんなのこが
アン・ドゥ・トロワ、アン・　.... ずっと見てんだ
ここから

降りる気なんてないし
登ってくるやつもいない

ただ
おれはひとりで
ずっと見てんだ
ここから

ぜんぶ
おれのものだから
ずっと見てんだ

　.... また春の風が
額を過ぎた
ふっと
潮の匂いがした
ような気がする


｛引用＝なつかしい声｝

振り向くと
海がそこまで迫る
海は光る
反射して鏡のように


指を浸すと　.... 　　　自恃

あれから、四次元経つというのに。
わたくしはあいかわらず
自分に忠実である
すべきことをするのみだ

朝に昼に晩に夜に
出来ないことは出来ない。
真実がわたくしを知って　.... そうゆうんじゃない
肌に頬を押しあてて
脈打つ血の
ほんとうの色が浮き出すのを待ちながら
したい理由をききたい
耳もとで
吐く息にまぎれ込ませて
「どうして…？」とききたい
衝動にもゆ　.... 浅いゆめ　逃げた夢
水色の風のリボンをなびかせて
真昼のおもいから逃げた夢
白い影を引きどこへゆく
テーブルの紅茶の冷めないうちに
その舌の根の乾かぬうちに
お前のアリスをごまかして

　.... たとえば今日
寒い風に吹き晒されているとして
さらに明日は
寒い雨に凍えているかもしれない
それでも破れ傘を差して
ボトボト歩いていくだけだ

たとえば今日
温かい陽射しに抱きしめ　.... 一昨日の朝食で
僕の耳に
ピーナツバターを
こびりつかせたまま
サニーレタスと一緒に
皿の隅っこに追いやったのは
誰だ

昨日の朝食で
僕の耳を
ホットミルクに
浸しこんだま　.... みずから
無数の眠りと共に飲み込まれ
問われないおんなの言葉は
眼を閉じながら
日没よりも静かに
日没よりも永く
海底の無色へ沈みます


ああ、もう間に合わない、
皮　.... 姑獲鳥 （うぶめ）


抱いてください　父を知らない不憫な子ですが
抱いてくれたら　あなたに幸運が訪れます
身体が重いのは　あなたの力を試すため
息が冷たいのは　あなたの情を試すため
　.... 私の祖父はうまく焼けなかったので
２度焼かれるというレアな体験をして
ウェルダンされた

生乾く人

小林宏史という写真家の本に『死と葬』というものがあ
る。インド、カルカッタ。寺院の前　.... 　　　　　　　　　　　　０９０１１７


かきくけこと言えば
鐘が鳴るなり法隆寺
柿を食えない痩せ猿も
金が成る木に水をやり
大きく育てと空を見る
入学願書に思いを込めて
孫の笑顔を　.... 木魅 （こだま）


「好きだ」
溢れ出した想いを返せないまま
あなたは土に還り
わたしは朽ちることもできずに
「好きよ」
抱えすぎた言の葉をざわめかせながら
夜毎 すすり泣　.... コロンと鳴った　耳の下の方で聞いた
なんで気が付かなかったんだろう
ハネた髪の毛が鏡に映ったりして
食パンの焼ける匂いを嗅いだりして
振り向かなかった　振り向かなかったんだ


行ってき　.... 中空の細い運河を
小さな郵便船が遡ってゆきます
あれには僕の手紙も乗っている筈です
誰に書いたのか　何を書いたのか
とうに忘れてしまいましたけれど

ひんやりとした透明な砂漠を
彷徨って　....
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