ふと右を見ると三塁手が君だったので
僕はすっかり安心した
うららかな春の日、デーゲームは淡々と続いている
スタンド、ベンチ、フィールド
いろいろなところからいろいろな声が飛び交っている
....
だえきをたくさん
ふくませた
かだんのなかの
ちゃいろいつちの
ずっとずっと
おくふかく
ねむったままのひめひとり
ずっとずっと
めをとじる
ねむったままのひめがいる
ひめ ....
あの頃
画用紙にクレヨンで描いた僕の未来は
今どれだけ かたちになって
今どれだけ ここにあるだろう
一つ足を進めるごとに
景色が姿を変えていくような
約束されたこともない
いつ ....
まだ
遠いところにあるようです
いつもぼくらからは 何かが垂れてきてしまって
どうしようもなくなってしまうのですが
雲が浮かんで ため息が白い冬のせいにして
久しぶりに知る その気持 ....
いつかわたしは
わたしから名を与えられた
わたしではないわたしが
鳥のように道に立っていた
地にも 空にも
翼は落ちていた
遠い光の日に
熊は殪された
血は流れ
人の内に ....
たまねぎを剥く事くらいに
泣くのは簡単だと言うクローゼ
とても静かに
自分の作った暗喩を慰めている
すり減ったローファーを履いて
路地裏でメントスを噛むクローゼ
クローゼのメン ....
朝、
日をもらおうと
下ら
光合成
きっとしません
二本足の私
の下
白猫が
まわったら
南天の裏
五時間
黒点を盗めるだろう ....
ハロー、ハロー
周波数はあっているか、こちらはDJ
十三年ぶりに新種のサンショウウオが発見されたそうだよ、皆さん
サンショウウオが好きなDJとしては久しぶりに嬉しいニュースだ
寒い日が続く ....
紅茶カップの宇宙の澱が
嵐に変わるたびに
折れそうな枝にその実は生る
私の小さな小さな分身
My Little Selves
汗もかかない
気を揉んだりしない
だまそうとしない
オ ....
歩道では色を楽しむ。まあ、映画や本、音楽に比べると、何も言わない子供みたいだからだ。
アーケードの花屋さんが、「おべんきょーしますよー」と伝える。
子供の頃、「お花畑に案内する」と言って、近所 ....
年寄ると
雌牛の乳房はずるりとながい
地面につきそうなくらい
搾乳器にもかけにくい
隣の牛に踏まれると
乳房が裂ける
裂けると
いつものおじさんがきた
麻酔したのかしないのか
....
牛が生まれる
大騒ぎしているのは人間ばかりで
牛は慣れたもの
これで五度目のお産だ
まだちいさいわたしは
目をみひらいている
子牛は逆子で
おじさんは苦労している
どうやったも ....
わたしがまだとてもちいさかったころ
牛舎でチャボを放し飼いにしていた
あのころもたぶん
鳥インフルエンザはあった
卵を隠すチャボがいた
牧草の陰にふたつみっつとあった
探し当てると ....
あなたの背中に吹いた風が
ここまで届くようにと窓を開ける
どこからか
たどたどしいリコーダーの音が聞こえる
この星はとても小さい
道のひとつも間違えず
毎日を器用に歩きながら
私はここずっと
半分行方不明です
タバコを吸おうと
ベランダの窓を開けると
残りの半分が
風にはためくので
飛ばされ ....
シャツとセーターを
いっぺんに エイッ と脱ぎ捨てるように
思い切って
まだ冷たい風の中に
私をさらしたら
その勢いに 驚いて
くよくよする私も
ピョンッと飛び跳ねるかもしれない ....
凍った兔は缶詰に入れられていた
床は兔だらけで
もちろん、その兔は縫いぐるみで
継ぎ接ぎだらけの兔の目には釘が打ち込まれていた
その真ん中で男は兔を掴み切り刻む
布切れを雪のよう ....
いじめられっこの兄妹が居ました
二人は青い目をしていました
とても奇麗な、青い目
とても目立って仕方の無い、青い目
いじめられ続けた六年生のある日
兄は同級生に刃向かいました
....
言葉を許してしまったら
どうにも落ち着きが悪いから
とりあえず
旅に行きましょう
ささくれだった
太い指が
地図をなぞるのを見るのも
悪くない
車窓から
見える景色が
山ばかり ....
今日も朝から
洗濯機が大声で歌っている
オペラのつもりのようだけど
音痴で
しかも、時々声が裏がえる
近所迷惑だからやめてくれと言っても
聞く耳をもたない
ありったけの洗濯物を押 ....
腹減ったから
なんか 食おうぜ
って
入ったところは
今どき珍しい
換気扇が壁にひとつ付いてるだけの
けむけむの
もくもくで
ねぇ
さんにんで会うときは ....
林檎をむいて
皮をむいて
木陰をむいて
こっちをむいて
河をむいて
小波をむいて
さぁ むいて
君は流れてゆくね
むきながら
こぎながら
なきながら
ここで いいのだよ
おもい ....
サクラのキャンドルを買ってきた
小さな丸いジェルのキャンドル
ピンクのサクラが
真ん中に入ってる
サクラのマグカップを買ってきた
有田焼の和風なマグカップで
サクラ ....
パスタ屋で
蟹スパに憧れていると
ななめ後ろ カップルの男が
こちらを見ている
さっきからわかっていましたよ
こちらを見ているのは
やだ
恋人がいるのに
目の前の彼女を見なきゃ ....
街でついつい男の人を
宝石に
変換する
裾に 白衣ののぞくメガネは
傷のついたオパール石
チャイナ帽 歩きタバコの初老は
家のないラピスラズリ
梯子に登りたそうな ボーダー2 ....
北海道の地方都市では
量販店はひたすら郊外型になってしまって
駐車場は平地で2000台収容
回転式のエントランスに
何カ所にも設置されたエスカレーター
天井は高くて空気もよくて
新宿のビッ ....
伝達
という義務から離れた言葉はいつも
夕闇に泡立ち
朝方に溶けてゆく
闇が私と私を囲う壁と壁を囲う外界を親和している間は
言葉が脳のなかで循環するのではなく
発せられなくても流れ出してい ....
くつひもほどけた
かれはかたむすびしかできなくて
ここのつのかたむすびがつながっていた
あたしのは
よわいよわい
ちょうちょむすびで
ふんわりさしてたので
く ....
小学生の時の話で
学校に行くと先生が休んでいて
自習の名目で
突然試験をやらされた
わからない問題は後回し
けど 記憶にないから
答えず終い(俺はね)
そ ....
その少女の玉手箱は
最上階の右から三番目
上りきるとすでに
玄関のドアは少し開けられて
少女は風に挨拶をしながら
俺を見ている
「きょうはなにしてあそぶ?」
部屋に入るとすぐ ....
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