雨粒を
ゆるすしかなかったことが熱だった
ほんの
一握り、の
うばわれるものも無く
渡ってもらうことで
どこか安らいでただ濡れていた
それしかなかった、
雨だれに
ほそく ....
{注GEKKO=白黒写真印画紙「月光」}に浮かび上がる
曖昧な輝度信号
ほしおり はすぐそこに迫っていた
切り取られた夜空を
暗室の赤い光に積もらせ
あまりにも遠すぎて
おぼえきれない思い ....
僕は男だから
産む痛みを知らない
同じくらいに
産まない痛みを知らない
痛みなんて知らない
ここは戦地ではないから
僕はあなたではないから
幸せになる方法を知らない
幸せにする ....
てのひらに乗った 雪が
溶け出して、僕の
一部になってゆく
降り始めに気がついたのが
どちらだったか
もう忘れてしまった
雪は
これで最後かもしれない、と
最初に言ったのは君の ....
ピンク通りにゴムホースの束
豚かと思った
人間の半身が転がってればいいのに
抱いてやる
「新宿は庭みたいなもんだ」と言った男が死んだので
あたしはなんとしても新宿を庭にする
....
灰色のゴム長靴が
水溜りの道を一歩ずつ
飛沫をあげながら一歩ずつ
いつのまにか雨上がりの
中途半端な空を中途半端に見上げる
待ち焦がれた土曜日の朝を
息をは ....
せまくたっていい
台所が小さくても
押入れがなくても
ただ
日当たりさえよければ
階段をのぼって
街を見晴らし
あなたとふたり
夕焼けを見られたら
それで
なんにも持ってい ....
夕焼けは決して終わらない
さっき、オレンジのストローで
おもいっきり膨らませておいたから
輝く小石たちのいるポケットの輪郭
指先の土は、もう、乾いた
工事現場の重機の群れは
拳を打 ....
グラウンドを白線が伸びあがり
休日の足跡をふまえるとき
光線はオレンジの斜面を傾ぎながら
予定の収穫を浚おうとしている
土の内部から気泡が生まれて
倒れた彼女を包み込んだけれど
それは ....
たくさんの雨が
パンドラの筺の、その奥底から降ったような夜
咳が止まらなくて
眠れなくて
今朝方ツクシが顔を出し始めました
と、一筆箋に書き始める
生物表記には片仮名じゃないと落ち ....
いつか君の病気が治ったら
どこにでも行こう
そのときまでに俺は
いろんなところを見ておくから
いつか君の病気が治ったら
カンパイしよう
缶ビールでいいよ
もう薬はいらない ....
珈琲店と書かれた看板の奥で少女が泣いているわ
あれ何て季節
グラデーションが眩しくて夕闇が澱んでいて
あれ何て季節
店に入ろうか
そうしたいのは山々だけど
僕らには
金がない
....
咳をしたらたまたま側にいた
隣の課のえむさんが
フルーツのど飴をくれた
えむさんがフルーツのど飴を好きだなんて
初めて知った
えむさんは僕より十歳くらい下の女の子だけど
背は僕より十セ ....
不愉快な覚醒が
北寄りの強い風で更に増して
両手の無意識がコートのポケットを探す
ひんやりとした裏地や
捨て忘れた入場券に
指先は触れているが
今はそれより風から逃れたい
月 ....
どうも!
かくれんぼで鬼になったのはいいが。
百数えている間にみんなに家に帰られた事のある。
そんな日の夕焼けが目に沁みて仕方なかった僕がここにいます。
どうも!
当たりつきのアイス ....
ただ
ただひろいだけの夜空を充血する程に
まなこを凝らしたら
はしっこの辺りに裂け目がうまれ
乳白色の貴方を呼んだのは紛れもなく私です
その仄かに薫る鎖骨は
芳しき母のようであり
ミ ....
黒が透き通る世界に
いろんな音が混ざりこむ
犬の寝息
もれる電子音
そして、一瞬しんと静まる
夜の音
星の瞬き音に呼び止められ
黒と混ざり合った空を見上げる
逆さに ....
さらさらと、ワルツを集めてる
頭を垂れたワルツを
集めている
真冬を凝縮して
少し熱っぽい朧な
器官の彼岸に
赤や紫を
粉々にして
昨日の電話口から溢れ出した ....
キャッチボールする
子供のときのように
幼馴染と
キャッチボールする
幼馴染の大ちゃんの球は速い
少年野球やってたから
川島イーグルス
俺は 嫌いだった
疲 ....
雪が
裏側の碧を見せぬまま
降りつづけ
積もりつづけている
光が夜を昇る声
水を斜めに振り向かせる声
器のかたちに流れ去り
ふたたび器に満ちてゆく声
世界を ....
あめのなかに
ゆきのまじる
ぶーげんびりあの
かねのねの
音のあまつぶ
しらゆきまじる
むすめはやらない
むすめはやらない
{引用=三つで病に
五つで迷子 ....
浅はかな哀しみを
どこまでも赦してしまうので
慕っています、
ひとの背を
重ねるような
重ねられるような
だれのものとも知れぬまま
だれにもどこにも
辿り着けずに
ひ ....
裏通りの月は
ゆらゆらと揺れて
消える事を恐れない
表通りの月は
隠れればライトを浴びせられるから考える事を辞めた
繁華街の円卓に出された七面鳥に名前をつけていた彼女は 食べる前 ....
しまうまがいました
冬の夕方に現れるしまうまです
縞模様は、冬の夕方の青と電燈のオレンジ
わたしはその背に乗って、冬の夕方の匂いを嗅ぐのが好きです
小さくひかりました
冬の夕方にいた三日 ....
散文的であるかも知れない
晴れ間を見つける
こころはいつも
古くはならない
あたらしくもならない
それが空なら
繰り返すものごとに
少しだけ優しくなれそうな
そんな気が ....
喫茶店の中は
小さなロッジを思わせた
ランプの橙色の明かりは
それでもやはり薄暗くて
カウンター席の後ろでは
まだしまわれていないストーブ
季節に似合わなくても
この店には似合ってい ....
あったかいですね
こんな時は
ありがたくなります
きみの体温
きみの赤いいのち
手をこぶしにしてみたら
ちょっとだけ穴ができて
覗いたら
やっぱりきみは
笑ってました
こぶ ....
東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で{ルビ犇=ひしめ}いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
{ルビ歪=ゆが}んだ顔を映す
冷たい光の反射に
じっと身 ....
冬の雨が上がって
しっとりと潤った空気に
小さな蕾が目覚め始める
春と呼ぶにはあまりに早く
陽射が弱々しく届いて
蕾の外側だけがほんのり白く染まる
冷酷な北風には
他愛もない出来 ....
にぎってみな
ほら
もうだめだろ
そのタマネギ
切ったら泣くぜ
ぜったい泣くぜ
半分ぐらい
腐ってたって
ぜったい泣くから
まあ座って
二人で剥こう
そうして
....
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