天空がようやく白みはじめた夜の終わりに、緩やかな砂丘を白いターバンを巻いた少年がただひとり美しい装飾の柩を背中にのせたアジア象をつれて歩いている。沢山の花たちで飾られた柩の正体はけして定かではないが ....
(おおい)
鳥たちよ
銀鼠の朝に踊る鳥たちよ
何故そんなに楽しそうなのだ
おれはこんなにも憂鬱であるというのに
この旋回には意味があるんです
あなたには理解できないでしょうけど
....
創書日和「月」 往還
月に巨大な鏡を置いて望遠鏡で覗いてみた
レンズの視界のなかで望遠鏡を覗きながら手をふるのは
自分がするよりも少し遅れて手をふる
2.56秒前の私
無数の少しずつ ....
あしたのことを
考えていました
今が今でしかないことや
過去が過去でしかないことは
そっと忍び来るあしたにくらべれば
ずっと簡単なこと
あしたはいつも単調 そんな貌で
あなたのこ ....
土と肉の熱を計る
なかば眠りながら
蝉の幼虫がさくらを吸っている
土をほじくり返し
あやしたすずめをその手ずからうずめ
いらなくなった枝を突けば
まるでそこだけが日溜まりのようです
....
それに
包丁を当てる夢を見る
それは
四角いスイカ
グロテスク又は滑稽
転がらないそのかたちは
妙な不安定を感じさせる
むしろ丸いスイカより
どこへも行けない窮屈さが
そ ....
うんこ
メモ用紙のすみに鉛筆で走り書き
それはただのうんこ
つまらないうんこ
活字のうんこ
活字でうんこ
それはちょっとした事件
活字「うんこ」は読むものの ....
わたしを定義するもの
今朝齧ったトーストの歯形
わたしを定義するもの
会社のデスク
わたしを定義するもの
そこに転がったボールペン
わたしを定義するもの
配達員に捺したハンコ ....
ハリウッドの
アクションヒーローに
憧れる
誰かをカッコよく助けたい
まるでアメリカン・フットボールのスターのように
子羊たちを脇に抱え
「WAR」
かけ声勇ましく突進する
....
ジョギングの
夜明けに自販機の前で放心する
「青春投入口」
ポケットから青春を取り出し
入れる
カショカショと飲み込む
ボタンのランプが寂しく灯り
押すと
びっくりするくらいの ....
静まれー 静まれ−!
俺はこの世の中に魔法をかけたい
水戸黄門のように悪を成敗したい
いや、水戸黄門ではダメだ
権力を傘に着て戦いたくはない 権力の方が悪っぽいし
大体俺が悪代官だったら 葵 ....
いつでも急いで履くし
履きかけで何歩も歩いてしまうので
かかとから靴はいつでも痛んでしまう
妻も老いた母からも
もっと大事に履けとか
みっともないから止めろと言われるが
そういうことに構う ....
一
細かな枝をつたう幽かな震え
桧皮色の樹皮を湿らせ
梢を這う、自動律たる水の脈動 )))
沁みゆく荒地の渇きへ
一滴、
地球システムを孕んだ涙のかたち
....
寝たきりの祖母が一週間の大半を
天井を見て過ごすことがかなしい
私の顔も忘れた瞳が
時にきれぎれの記憶を思い出す
その輝きが
新しく覚えることがらを無くしても
ふと寂しさを宿して見える ....
その坂の上は外人墓地になっていて
少しだけ風がそよぐ。
港町を見下ろすその場所で、
土の上に居場所をなくした人々が 眠っている。
その風を、汗に濡れた指先でなでるのが好きだ。
....
おおはばきん
新しい言葉を一つ作ると
世界から一つ言葉が失われていく音を聞いた
それはながいながい車の衝突音に近かった
下半身が老人ホームにいつも向いている青年
後ろを見たければ目を ....
むかし僕は天使だった。
せなかにつくりものの羽をつけ、そでのすこしよごれた白い服を着ていつも母ちゃんのそばにいた。
かがみにうつった母ちゃんの顔はまるでペンキを塗ったように白く、やけにまじめ ....
どうしても飛べない
おくびょうな紅葉はふるえて飛べない
もうすこしだけ力が欲しい
繋がりのない空が
きっと冷たくて
誘う紅の涙の貌を
冬はじっと見ていた
どうしても飛べない
山 ....
聴こえるかい? プーチン、
/////(ノイズ)。
私は詩人たちの口をとおして
今も尚、歴史を変えることが出来る・・・・
ウラジーミルは一九二四年一月二十一日に死んだ、
旧い日 ....
1
嗚呼、私が死んだときは
どうかその骨を散骨してください
海でも山でもいいから
散骨してください
海に溶けた私は
きっと儚いクラゲになることでしょう
山に埋もれた私は
きっと密か ....
朝目が覚めると、隣に生理痛が寝ていた。
「…あんた、何してるのよ」
「何って、仕事です。好きでこんなことしてるわけじゃないですよ」
生理痛はへいこらしながら頭を下げる。
その日は ....
イルカとシャチのどちらが優れているか、イルカ派対シャチ派の大論戦は熾烈を極めた。
「イルカは優美だ。あの計算しつくされた流線型はまさに自然が生み出した芸術だ! それに比べてシャチのあのだぼっとし ....
僕を作った女の子は
満足そうに、駆けていった
僕はなんのためにここにいるの?
なにをすればいいの?
動くことも話すこともできないし
寒そうにしてる人を ....
ぎ
6キロ先に 機影がみえます
所属不明機 おーとーせよ
とどきますか 信号 にほんご
くりかえす
所属不明機 おーとーせよ
にほんご
現代
/
古代の 断絶
影 ....
詩を書こうとすると
どうしても足がついてしまうから
事実という名の警察がやってきて
私のえんぴつに手錠をかけてしまうから
だから私はいつも
原稿用紙を前にえんぴつのオシリを口 ....
昨日、往きすぎた駅――
マイホームは地図に載ってない。 )))
疲れ果てた大勢の人たちが、
十二月の憂鬱なプラットホームで
蜜柑の載った赤外線炬燵と
逃げ場のない積みあげた日々の
....
即興で書いた
デタラメな絵みたいに
世界を、粉々に壊して欲しい
――悪魔と死神。
そして彼らよりも、
さらに残虐非道かつ悪辣な僕・・・・
ふいに質量を奪われて
儚く、空に飛んでゆくビ ....
調子が悪い奴らに言いたい
出口のないトンネルなんてないぜ
出口がなかったら国土交通省に文句を言え
俺たちは生きのびるために税金払ってるんだぞ
全ての道はローマに通じてはいないけど希望に通じるべ ....
――夢だ、
霧氷に覆われたトパーズを砕き
経血に染まる白鳥の羽を散らして
辛気くさい柄の絨毯に零した
グラスの割れる夜の激しい物音。
イミテーションパールの首輪を、
女は掻き毟るように ....
大事なことはすべて5秒以内に起こる
5秒で決めろ
5秒で話せ
5秒で捨てろ
5秒で殺せ
5秒で走り抜けろ
5秒で骨の髄まで
5秒で愛せよ
5秒で自分の存在
5秒で定義せよ
5秒 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15